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第23話 邪魔者を追い払え!驚異のバットコントロールと新ストレート!!

そして数日が経ち、夏の予選に向けて、背番号が発表される。


はじめはエースとして春に引き続き「1」を、慎太郎は不動の正捕手として「2」、谷原はファーストで「3」、田中はセンターで「8」。


この4人は既に不動のレギュラーで、プロ入りも確実と言われている。


赤木監督「次、背番号7、杉原!!」


杉原「……え!?は、はい!」


杉原はピッチャーとして注目されがちだがバッティングも非常に良く、はじめが欠場した、あの紅白戦では4番を打っていた。


それだけではない。


数は少ないが、レフトの守備に就いた際は無難に守備機会をこなしていたが、その守備位置や打球判断の良さが赤木監督と谷原の目に止まり、2番手投手だけではなく、レフトのレギュラーとして最後の夏を迎える事となった。


そして……


赤木監督「次、背番号4、木場!!」


木場「……!!…はい!」


木場はこの短期間のうちに急成長し、セカンドのレギュラーを奪取。


バッティングは荒さはあるが、長打力は谷原や田中に負けてはいなかった。


守備に関しては元々中学でもショートを守ったことがあり、守備範囲も思いのほか広く、肩も強い為、意外にも木場はセカンドが適任だった。


ベンチ入りのメンバー発表が終わった後、背番号を渡された木場に谷原が話しかける。


谷原「木場。分かってると思うけど、僕は温情でメンバーは決めない。君は実力で、この90人いる野球部のレギュラーになったんだ」


木場「谷原…」


谷原「感動するのはレギュラーを掴んだ今じゃない、全国優勝してからだよ。全国優勝する為に、君をレギュラーに推薦したんだ。初戦から君には活躍してもらうよ。いいね?」


木場「あぁ!」


迎えた県予選の初戦。


初戦の先発は杉原だった。


はじめはショートを守り、背番号6の永倉がレフトを守っていた。


木場は6番セカンドで出場していた。


すると初戦から難舞高校打線はド派手な幕開けを演出する。


1番田中、2番谷原、3番慎太郎、4番はじめ、5番杉原が5者連続ホームランを放ったのだ。


続く木場の打席…


木場「や、ヤバい。足が…体が震える…でもここは流れに乗らないと…」


“シュー!”


“ブンッ!!”


木場は緊張から、本来のプレーが出来ずにいた。


するとベンチから谷原が叫ぶ。


谷原「胸を張るんだ!木場!君がここに立つまでにやってきた事は、緊張なんかに負けるほどヌルい練習じゃなかっただろ!君ならやれる!!やれるんだ!!自信持つんだ!!木場ぁ!!!!」


木場「!!谷原……」


“シュー”


“カーーーンっ!”


木場は自らが放った打球を見ながら1塁へ走っていた。


木場「いけぇー!」


“ボーンっ!!”


木場「は、入った…」


木場の打球はバックスクリーンに直撃した。


ホームベースを踏みベンチに戻ると、谷原が木場を出迎えた。


谷原「いいバッティングだったよ。木場」


木場「サンキュー」


2人はハイタッチをした。


試合はこの6者連続ホームランを皮切りに、計16点を奪い、守備でも杉原が5回までながら、ノーヒットノーランを達成していたのだった。


初戦で圧倒的な強さを見せつけた難舞高校。


その後も快進撃は留まることを知らず、県大会の全ての試合で2桁得点を叩き出し、守ってもはじめと杉原の2枚看板で得点を許さず、無失点のまま甲子園の切符を手にしていた。


さらに今まで無名だったはずの木場がこの夏は絶好調で、県大会は打率.586 4本塁打で恐怖の6番打者として甲子園でも注目されることになる。


はじめは、これまで145キロに抑えていたストレートが、この夏は県大会で平均球速156キロ、最速159キロを叩き出し日本中がこの怪物が甲子園でどう進化するのかに注目する結果となった。


ある日の全体練習後、木場ははじめを呼び出した。


木場「沖田、妹から聞いたよ。お前が谷原に俺にセカンドを守らせるように提案してくれたんだってな」


はじめ「いや、俺はあくまでも木場さんは外野よりセカンドの方が合ってそうな気がすると言っただけなので、その後にレギュラーをとって結果を出し続けたのは木場さん自身ですよ。もし礼を言うなら、谷原さんや杉原さんに言って下さい」


木場「……沖田…」


はじめ「それにまだ甲子園優勝してませんよ。一緒にこの夏も全国優勝しましょう!」


木場「あぁ。そうだな」


その後、はじめは赤木監督の元を訪ねた。


はじめ「監督、甲子園では全試合投げさせて下さいよ」


赤木監督「……なぜだ?杉原の投球に何か不満でもあるのか?」


はじめ「杉原さんの投球は最高です。でも難舞のエースって一体誰ですか?俺じゃないんですか?」


赤木監督「沖田、お前の気持ちはわかっているつもりだ。だが小前の件もあるし、何より杉原もいいピッチングをしているんだから、お前一人に無理をさせるわけにはいかない」


はじめ「100球……1試合100球以内に収めますから、投げさせてください」


赤木監督「……沖田……」


はじめ「ダメなんですか?じゃあなんで俺が1番背負ってるんですか?俺の事信用してないんですか?ならいっその事杉原さんに1番あげてくださいよ」


赤木監督「えぇい!黙れ!!わかった100球以内だったな?もし1球でも超えたらお前をベンチからも外してやる!喧嘩吹っかけてきたのはお前だぞ!いいんだな?」


はじめ「望むところですよ。吐いた唾は飲みません」


翌日、はじめは慎太郎相手にブルペンで投球練習をしていた。


“ビュルルルルルルッ!!!”


“スパァーーーンッ!!!”


慎太郎「!!!な、なんだよ、今の!?」


はじめ「あ?真っすぐだよ」


慎太郎「それはわかってる!!お前、何しやがったんだ!?」


はじめ「何って言われても、俺はただいつも通りに真っすぐ投げただけだぞ!!」


慎太郎「嘘つけ!!じゃあもう1球投げてみろ!!」


“シュッ!!”


“パンっ!!”


はじめ「痛ぇな!返球強いっつーの!!……真っすぐ投げればいいんだな!?」


“シュルルルルルルッ!!”


“スパァーーーンッ!!”


慎太郎「……ちがう……これじゃねぇ、さっきの球投げてこいっつってんだよ!!」


“シューーっ!!”


“パシッ!!”


はじめ「だから痛ぇって!!わかったよ、投げればいいんだろ!!“やっぱり慎太郎は誤魔化せねぇか…”」


“ビュルルルルルルッ!!!”


“スパァーーーンッ!!!”


慎太郎「ほら!やっぱ違うじゃねぇか!!テメェ正捕手の俺に隠れて、何こそこそやってやがるんだ馬鹿野郎!!」


“シューーーッ!!!”


“パァーン!!!”


はじめ「痛ぇな!もう!!わかったよ!悪かった!!後で話すからゆっくり返球しろ!痛ぇんだよ!!」


その日の帰り道、慎太郎ははじめを問い詰める


慎太郎「で、何なんだよ、さっきのすげぇ回転数の球は!?」


はじめ「あれは握りを少し変えたっていうか、今までみたいに縫い目に掛ける感じじゃなくて、人差し指と中指を最初からくっつけて、ボールを押し出す感覚で投げてるんだ」


慎太郎「いつ投げれるようになったんだ?」


はじめ「いつかは忘れたけど、試合中ショート守ってる時にボテボテの打球処理したら縫い目に指がかからなくて、ワンバン投げるつもりで投げたんだけど、やけにボールがノビてな。それでさっき試しに投げてみたんだ」


慎太郎「…ふざけやがって!思いついた時に一言言えよ!俺じゃなかったら捕り損ねてたぞ」


はじめ「そもそもお前以外に俺の球捕れるキャッチャーなんて難舞にはいねぇよ。で、どうだったんだ?あの球は使えそうか?」


慎太郎「あんな反則みたいな真っすぐ、打ち返せるやつなんて俺以外にいねぇよ!」


慎太郎の言葉を聞いて、はじめはニヤついた。


新しいストレートに手応えを感じたのだった。


それから甲子園まで毎日のようにマスコミがグラウンドまで押し寄せてきた。


練習中でもお構い無しで練習の妨げになっている事も気にせずにグラウンドの中に入ってくるマスコミもいた。


はじめはそんなマスコミやメディアが大嫌いだった。


田中「お!三塁側のベンチ前のカメラ!あれはテレビやな!気合入るで!」


はじめ「…田中どいてくれ」


田中「沖田?どないしたんや?」


はじめ「もう我慢できねぇ……貴重な休憩中にもウロチョロしやがって……」


はじめは下級生に指示を出す。


はじめ「よし!佐藤!今からロングティーやるからトス上げてくれ!それから三好!坂田!お前たちも少し手伝ってほしいことがあるんだ!3人ともこっちに来てくれ!」


佐藤、三好、坂田「は、はい!」


はじめ「もっと、近寄れ……三好と坂田はスタンドの上から三塁側のカメラと一塁側のカメラをお前達のスマホで動画撮っといてくれ。三好は三塁側のスタンドから一塁側のカメラを、坂田は一塁側のスタンドから三塁側のカメラを映すんだ。準備が終わったら右手を上げて合図してくれ。いいか?絶対にマスコミのヤツらに気付かれるな。頼んだぞ」


慎太郎「おいおい、休憩中にロングティーって何考えてんだよ…」


3人ははじめに指示された通りに、持ち場で準備が完了すると、右手を上げて合図した。


はじめ「よし。あのー今からロングティーやるんで、カメラは壊れたらいけないので外へ出してください。」


マスコミははじめの声が聞こえなかったのか、取材の準備を進めていた。


はじめは右打席に立った。


はじめ「佐藤、トスあげてくれ」


佐藤「はい!」


佐藤がトスを上げると、打球は一塁側のベンチ方向へ…


慎太郎「!マズい!危ない!!」


記者「ん?」


“シューーー”


記者、カメラマン「うわぁ!!」


“パリィーンっ!バン!!”


慎太郎「はじめ!やめろ!!佐藤!!やめろぉ!!」


佐藤「!!」


はじめ「気にすんな。早く次、上げてくれ」


佐藤「は、はい…」


“パリィーンッ!ボンッ!!”


続いて、次は三塁側のカメラを破壊した。


記者「…なんてことしてくれたんだ!一体このカメラいくらすると思ってるんだ!」


はじめ「だから外へ出ていけって言ったでしょうが!!こっちは硬球で練習してるんですよ?硬球が飛び交うグラウンドの中に、そんなもん持ち込んだら壊れるかもしれないって、子供でもわかりますよ!」


記者「こっちも仕事で来てるんだ!」


はじめ「知りませんよそんな事!こっちだって大事な甲子園が迫ってるんですよ!あなたたちを気にしてる余裕なんて無いんです!!それから今、カメラが壊れた責任を俺たち選手のせいにしようとしましたよね?それって大人としてどうなんですか?あなたは何処の誰ですか?会社は?あなたにこんな仕事をやらせたのは誰ですか?」


すると室内練習場にいた谷原が騒ぎに気付き、グラウンドに出てきた。


谷原「いったい何の騒ぎ??」


記者「あぁ、君はキャプテンの谷原君だね?なんなんだ、あそこにいる選手は?あの子がね、カメラ壊しちゃったんだよ。キャプテンとして、どう責任取るつもりなんだ?」


谷原「責任と言われましても…カメラは何処で撮ってたんですか?」


記者「ベンチ前だよ。三塁側と一塁側の」


谷原「あぁ…そういうことですか。練習中に硬式ボールが飛び交うグラウンドに取材に来てるんですから、練習中にカメラが壊れるのは僕たちのせいじゃないと思うんですが…それが嫌なら、あなたたちがネットの裏に非難するとか、取材は練習後に行う等して頂かないと、僕たちは責任なんてとれませんよ。もしご不満なら赤木監督へ伝えておくので、あなた方の名前を教えて頂けますか?」


安岡「この取材クルーの責任者は俺。ひまわりテレビの安岡だよ。君たちのその無礼な態度…絶対に許さないよ」


谷原「………」


はじめによってカメラが破壊されたマスコミは帰っていった。


はじめ「谷原さん…すみません、練習中邪魔ばっかりしてくるアイツらの行動がどうしても我慢できなくて…」


谷原「気持ちはわかるけど、やりすぎだよ。ボールは凶器じゃないんだ」


はじめ「はい…」


谷原「ふぅ……もういいよ。次同じ事やったら、君の彼女の小林祐衣さんにお灸を据えてもらうからね」


はじめ「祐衣!?谷原さん!!すいませんでしたぁ!!謝りますから!祐衣だけは!祐衣にだけは言わないでくださぁーーい!!お願いします!!!お願いします!!谷原さぁーん!!ごめんなさい!!」


はじめはその場で土下座し、何度も頭を床に擦り付けて謝罪した。


谷原「何やってんだよ!!こんな所で土下座なんてやめてってば!!冗談だよ!!冗談!!」


はじめ「ほっ……」


谷原「まったく…どうなってるんだよ、君は……とにかく二度とこんな真似しちゃダメだよ」


谷原はため息をつきながら、念を押した。


それからはじめは三好と坂田のスマホで撮影した動画を自分に送信させ、その動画をひまわりテレビと、記者の安岡の名前を添えてSNSへアップした。


すると、甲子園球児の練習を邪魔するテレビ局として瞬く間に大炎上。


さらに“事故”によるカメラの故障なのにもかかわらず、責任を選手に擦り付ける最低のテレビ局としてひまわりテレビは多くの人から批判され、謝罪会見を行う事態となったのだった。

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