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第22話 レギュラーを掴み取れ!木場、セカンドへのコンバート!!

それから少し日は経ち、難舞高校のナインたちは夏に向けて練習を重ねていた。


はじめ「慎太郎。次はストレート、力入れていくぞ」


慎太郎「おう。“力を入れるって事は、ついに完成したんだな”」


はじめ「ふんっ!」


はじめはセットポジションから、力を込めてストレートを投げ込む。


“ビューーーーーっ!!!!!”


”スパァーーーンっ!!!!!”


慎太郎「へっ!想像通りかよ!どうせなら俺の想像超える球投げてこい!ゴリラ野郎!!“この2カ月半でここまで進化させやがったか!”」


はじめ「悪い。これが今の俺の限界みたいだ」


それを隣で見ていた杉原。


杉原「…す、すげぇ球だ…それでいて、武市のミットが全く動かない程のコントロール…なんて野郎だ……」


“ビューーーーーっ!!!!”


“スパァーーーンっ!!!!”


控え投手陣、捕手陣が、その圧巻のピッチング練習に見惚れていた。


するとそこへ谷原がやってきた。


谷原「みんな!次、バッティングだよ!早く準備して!」


はじめ「はい!…慎太郎、ラストいくぞ。インローのストレート」


慎太郎「おう」


“ビューーーーーっ!!!!”


“スパァーーーンっ!!!!”


谷原「ふっ…順調みたいだね」


そしてバッティング練習に移ると、チームメイトのほぼ全員がはじめと慎太郎のバッティングに注目する事が、当たり前のようになっていた。


“バコッ!!”


はじめは木製のバットを使用し、そのバットから放たれる打球は、バックスクリーンのスコアボードを軽々越える為、球場外に防球ネットを増設するほど規格外のものとなっていた。


だが慎太郎も負けてはいなかった。


“バキッ!!”


慎太郎も木製のバットを使用し、そのバットから放たれる打球はレフトボールからライトボールまで広角に打ち分けられ、その全ての打球をスタンドの中段付近まで運んでいた。


赤木監督「俺達が何も指導していないのにここまで成長スピードが速いとはな…」


そんな中、田中と谷原は室内練習場でマシン相手にバットを振り続けていた。


谷原「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


田中「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


2人の手の無数に巻かれたテーピングと血の滲んだ絆創膏が、その凄まじい練習量を物語っていた。


谷原「ふぅ…スランプから脱出したみたいだね、田中」


田中「はい。谷原さんと監督が打てなくてもずっと1番で使ってくれてたおかげです」


谷原「それは違うよ。君は調子が悪くても出塁する意欲は誰よりも強い。調子が悪くなった時が一番その選手の本質が出るんだよ。だから君は外したくなかったんだ」


田中「谷原さん……」


谷原「それに、今外でバッティングしてる沖田や武市にばっかり目立たれても嫌だしね。だからこの夏は僕たちも一緒に目立とうよ。最強の1、2番コンビって言われるぐらいに」


田中「はい!」


1番田中、2番谷原、3番慎太郎、4番はじめ


この並びは難舞高校打線の核として既にセンバツでも知られていた。


しかし、ここにきて田中、谷原の長打力が一気に増して、練習試合では2人だけで初回に1点、あるいは、2者連続弾で2点をもぎ取る場面も多く見られていた。


夏の予選を間近に控えた難舞高校。


ナインも自然と練習の士気が上がり、全員が自身のレベルアップを上げるために練習に励んでいた。


木場「はぁ、はぁ、ぜぇ、はぁ」


谷原「木場、へばるのはまだ早いよ」


木場「わ…わかって………」


“ドサッ…”


田中「木場さん!」


その場に倒れた木場を助けに行く田中。


杉原「田中!手を出すな!後輩に助けてもらうなんて、アイツのプライドに触る」


田中「でも!」


杉原は田中を制止する。


杉原「大丈夫だ」


木場「く、くそっ!!こんなに、こんなにも差があるのか……」


杉原「…木場、無理はしなくていい。お前が変わってきてるのは誰が見てもわかる。今日はもうやめとけ」


木場「うるせぇ!俺はまだまだやれる!!やれるんだ!」


谷原「ほら、まだ動けるだろ!!さぁ、早く立ちなよ!木場!!」


木場「わかってる!谷原、早く…早くトスあげてくれ!!」



木場は全体練習が終わると、谷原、田中、ピッチャーの杉原と共に居残りでバッティング練習に励んでいた。


木場「はぁ、はぁ、はぁ、ま、まだだ!!まだやれるんだ!!!」


谷原「……フォームが崩れかけてる。無駄な怪我をする前に少し休もう。田中!僕にトス上げてくれないか?」


田中「は、はい!」


“カンっ!…カンっ!”


バットを持ったまま崩れ落ちる木場。


木場「くそ!!」


杉原「木場、水分とれ。ほら」


木場「…!手、手からバットが離れない!」


杉原「は?どれ」


杉原がバットから木場の指を一本一本丁寧に剥がしていく。


木場「うぁっ!!い、痛てぇ!」


杉原「我慢しろ!…ほら離れたぞ。今日はもうやめとけ」


木場「うっ!!クソぉ…情けねぇ…」


木場は、自分の不甲斐なさに涙を流した。


杉原「しょうがないな…谷原!もうこの辺にしとこうぜ」


“カンっ!!”


谷原「…そうだね。ごめん、熱くなりすぎた」


谷原は木場に近づいて言葉をかけた。


谷原「木場、その悔し涙忘れちゃダメだよ。温情でメンバー決める気はないけど、間違いなく君は変わったんだ。何が自分を上達させるのか考えて、明日は今日より、明後日は明日より練習を積み重ねていかないと上達はしない……期待してるよ木場」


谷原は木場の肩を軽く叩きその場を後にした。


杉原「おい、立てるか木場」


木場「あ、あぁ。サンキュー杉原」


木場は杉原に担がれながら、ゆっくり帰っていった。



慎太郎「はぁ、はぁ、はぁ………巻いたか?」


慎太郎は服を買いに1人でデパートに来ていたのだが……


慎太郎「…ったく!なんでこんな野球とは関係ない日まで走らなきゃいけねぇんだよ!」


慎太郎ファン女子A「武市せーんぱーい!!武市せーんぱーい!!どこですかぁー♡デートしましょうよ♡」


慎太郎ファン女子B「早く出てきて武市センパーイ♡いい加減素直になってくださいよー♡」


慎太郎「……あんなのがいたら、ゆっくり服も買えやしない…今日はこのままこっそり帰るか」


すると慎太郎ファンたちが急に走りだした。


慎太郎「!ば、バレたか……ん?」


慎太郎ファンたちが走り出したのは、はじめを見つけた為だった。


慎太郎ファン女子A.B「沖田せんぱーい!!」


はじめ「ん?君たちは確か中学の時から慎太郎を応援してる子たちだったよね?買い物中かな?」


慎太郎ファン女子A「そうなんですよ!買い物してたらね、武市先輩を見つけたんで声掛けたんですけど、いきなり逃げちゃったんです!」


慎太郎ファン女子B「女の子2人とデートできるなんて幸せだと思うんですけど…武市先輩はなんでいつも逃げるんですか?沖田先輩、何か聞いてないですか?」


はじめ「ん~なんだろうね?」


はじめと慎太郎ファン女子たちが会話してるのを遠くで見ていた慎太郎。


慎太郎「よく普通に会話できるな、あんな山姥どもと……」


はじめ「…きっと照れてるだけだよ。君たちみたいな可愛い女の子を間近で見たら惚れてしまって、野球も勉強も集中できなくなっちゃいそうだからね。今はそっと見守ってあげてよ」


慎太郎ファンB「えぇ〜…それじゃあ他の子に取られちゃいますよ」


はじめ「大丈夫だよ。慎太郎は君たちを見捨てるような薄情な男じゃない。1番そばにいる俺が言うんだから間違いないよ。ほら、時間勿体ないから買い物済ませちゃいなよ」


慎太郎ファンA「はぁ~い。沖田先輩は優しいですね。好きになっちゃいそうですよ♡」


はじめ「はっはっはっ!そんなこと言ってるの慎太郎に聞かれてたら、慎太郎悲しんじゃうよ!じゃ、俺も買い物あるから、そろそろ行くね」


慎太郎ファンたちを見送り、はじめはゆっくり歩き出して、電話をかけた。


慎太郎「!!はじめ?…なんだよ」


はじめ「お前近くで見てるんだろ?もうあの子達いねぇんだから早く出てこいよ」


慎太郎ははじめの元へ行く。


慎太郎「気付いてたのか?」


はじめ「当たり前だろ。何年一緒に野球やってると思ってんだよ」


慎太郎「…でも助かったよ。ありがとう」


はじめ「まったく、少しは相手してやれよ。だから必要以上に追いかけてくるんだよ」


慎太郎「そうは言うけどさ…苦手なんだよ」


はじめ「最初は声かけられたときに手を振り返す程度でいいんだよ。お前も甲子園のスターなんだから、ファンの対応ぐらい身につけておかないと、これからプロに行ったときに大変になるぞ」


慎太郎「そうだよな…そう言えばお前のファンの子達はプライベートでは追いかけて来ないのか?」


はじめ「いや、さっき4人ぐらいいたけど、ちょっと喋ったら、満足していったぞ」


慎太郎「……すげぇな、お前」


はじめ「何も凄くねぇよ。ちなみにあの子達は祐衣の事も知ってて、祐衣の事も応援してくれてるんだ」


慎太郎「嘘だろ!?それ大丈夫なのかよ!?」


はじめ「当たり前だろ。それでこっそりメディアやマスコミから守ってくれてるんだ。中学の時は邪魔だと思ってたけど、今では頼もしい味方だよ」


慎太郎「し、信じられねぇ…」


はじめ「……慎太郎、木場さんっているだろ?最近なんか気合入ってる人」


慎太郎「あぁ。木場さんがどうしたんだよ」


はじめ「実は木場さんの妹さんが俺を応援してくれてるみたいでさ、さっき喋ったんだよ」


慎太郎「ふぅ~ん……は?木場さんの妹って…マジかよ!」


はじめ「あぁ。で、約束しちまったんだよ。木場さんを救うってさ…」


慎太郎「木場さんを救うって…どうやって?」


はじめ「わかんねぇ。わかんねぇけど、今度じっくりBチームでの木場さんを見て救う方法考えるわ。もしかしたら、大化けするかも知れねぇしな」



翌日、練習前に谷原は木場を呼び出した。


谷原「手は大丈夫?」


木場「当たり前だ。今日は1万スイングしてやる」


谷原「そう。その気合があれば、今から僕が言う事も受け入れられるね」


木場「………あぁ“どうせ今の俺じゃベンチには入れないんだろうな…”」


谷原「木場。今日からセカンドやってもらうよ」


木場「………え?セカンド…だと?」


谷原「そう。ウチの弱点はセカンドなんだ。センバツでレギュラーだった霧谷を含めてね。だから君にセカンドのレギュラーを掴んでほしい」


木場「…なんで、俺に?」


谷原「君は肩も強いし、長打も打てる。それに中学時代ショートも守った事あるだろ?」


谷原は木場の肩に手を置いた。


谷原「大会は近いんだ。君には死ぬ気で特守受けてもらう。覚悟しておいてね」


木場「お前の考えはさっぱりわからないが、死ぬ気でやってやる!」


その日の全体練習のノックから、木場はレギュラーチームのセカンドに入っていた。


永倉「木場!お前は肩があるんだ!もう少し深めの守備でも大丈夫だぞ」


木場「あぁ、サンキュー!」


谷原「木場!握り替えの時に焦り過ぎだよ!手の届く所は僕が捌くから、暴投怖がらずに勝負するんだ!」


木場「谷原……わかった!」



そのノックを室内ブルペンから見ているはじめと慎太郎。


慎太郎「…木場さんのセカンドありだな。お前の言う通り、こりゃレギュラーになるだろうな」


はじめ「あぁ。正直言って聞き入れて貰えないかと思ったけどな。谷原さん、口調は穏やかで一見優しそうなのに、飯島さんの100倍は冷徹で厳しい人だからな……ダメ元で谷原さんに言ってみたけど、言ってよかった」


なんと!谷原に木場のセカンドへのコンバートを助言したのは、はじめだった!


その日の朝練後の谷原とはじめの会話……


“はじめ“谷原さん、こないだ走り込み中にBチーム練習こっそり見て思ったんですけど、木場さんは外野より内野やらせたほうがいいんじゃないですか?”


谷原“なぜ、そう思うんだい?”


はじめ“いや、木場さんライトでノック受けてましたけど、握り替えた時の動きが明らかに内野手です。セカンドの霧谷も頼りないし、ここは思いきって木場さんにセカンド挑戦してもらったらどうでしょうか?”


谷原“木場のセカンドか……考えておくよ””


はじめはセカンドでノックを受ける木場を見て、静かに呟いた。


はじめ「あとは自分次第っすよ、木場さん」


その日の全体練習終了後、室内練習場で谷原は木場と共に特守を行なっていた。


谷原「バッティングより守備の方が安定してるね」


木場「あぁ。お前たちのおかげで体力がついたんだ」


谷原「そう。でもまだまだいくよ!」 


木場「おう!」


するとそこへはじめが現れた。


はじめ「……」


谷原「よし、次はゲッツーだ!」


木場「おう!」


木場が打球を捌いてセカンドベースに見立てたネットに送球する。


はじめ「ん?」


その様子を見ていたはじめが声を掛ける。


はじめ「谷原さん!ちょっといいですか?」


谷原「ん?どうしたの?」


はじめ「木場さん、今の打球だと、打球の流れに乗りながら、こうやってターンしたほうが送球しやすいですしランナーとも被らないですよ。一二塁間の打球でゲッツーを狙うのは正直賭けでもあるので、出来るだけ無駄を省きましょう」


はじめは動きを交えながら木場にアドバイスを送った。


木場「な、なるほどな…ありがとう“あの沖田が俺にアドバイスを?…一体どういう風の吹き回しだ?”」


谷原「ふふっ!君は本当によく見てるね。でも君は調整しなくてもいいのかい?」


はじめ「これからバッティングしに行くところなんですが、慎太郎と田中と杉原さんに先越されちゃって、順番がまだなんです」


谷原「そう。だったら時間まで守備見てってよ。僕にも遠慮なく言ってくれていいからね」


はじめ「わかりました。なら遠慮なく」


はじめは自分の順番が来るまで、谷原と木場にアドバイスを続けた。

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