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第19話 未来への約束

その後甲子園出場を決めたチームは、背番号の入れ替えを発表した。


はじめに渡されたのは“1”だ。


甲子園が始まると、県大会での派手なプレースタイルは既に雑誌やメディアにも取り上げられていたため、野球をやっていない人たちにも”超人的で奇抜な1年生”として覚えられるほどはじめは有名になっていた。


ところがはじめはそんなことお構いなし。


緊張などどこ吹く風という感じで甲子園でも大活躍する。


甲子園でもはじめは自慢のストレートは封印し、カーブとチェンジアップのみで勝負する。


ところがたった2種類の球種しか投げない1年生投手に、甲子園の猛者たちも歯が立たない。


結果、はじめ決勝戦まで1人で投げ抜き、被安打は全試合合わせて6本で許した失点は味方のエラーによる2点のみ。


打撃成績も全試合1番として出場し打率.525、本塁打1本を記録し甲子園優勝に大きく貢献した。



最終打者から三振を奪うと、マウンドにはチームメイトが集まり喜びを爆発させる。


そして甲子園での決勝戦を終え控え室で着替えをする一同。


慎太郎「はじめ!ほら!」


慎太郎はウィニングボールをはじめに渡す。


するとはじめは迷わずに飯島にボールを渡す。


はじめ「飯島さん、これ」


飯島「沖田、、、、」


飯島は言葉を失う。


はじめ「約束、守りましたよ。だから野球続けてくださいね。いつまでも俺の尊敬できる飯島さんでいてください」


飯島「沖田…ありがとう…」


宿舎に戻ると飯島は改めてはじめと慎太郎にお礼をする。


飯島「2人が来てくれてチームは変わった。ありがとう」


はじめ「つっても、甲子園来てからコイツ全然打てませんでしたけどね」


慎太郎「言うなよ!一応ヒットは2本打ったぞ」


飯島「いや、武市の存在は本当に頼もしかったよ。俺よりもずっと主将らしく、守りの指揮をしてくれてた。本当に最高だよ、お前ら。本当にありがとう」


飯島ははじめと慎太郎に労いと感謝の言葉をかけるのであった。


甲子園優勝を成し遂げたはじめは小前のいる病室に行った。


そこには術後でまだ左腕を吊っている、痛々しい姿の小前がいた。


小前「よぉ、沖田。ちゃんと見てたぞ、指はくわえてないけどな」


そうおどけて見せる小前にはじめは話しかける。


はじめ「肘は?」


小前「一応治るみたいだ、時間はかかるけどな……全くすげー野郎だよ、お前は。ストレート投げないで甲子園優勝するピッチャーなんて聞いたことねぇよ」


はじめの活躍を称賛する小前。


はじめ「それはアンタのせいだよ。アンタが俺に変化球の本当の扱い方を教えたから」


小前「アンタの“おかげ”だろ?でもあのマウンド捌きは本当に見事だった。俺が教えたことを実践して、最高の結果を出してくれて本当にうれしかったよ。ありがとう」


小前は深々と頭を下げた。


はじめ「なぁ、この先プロでやれるんだよな?」


小前「このドラフトでは無理だろう。社会人チームからの誘いはあるから、まずはそっちに行く。プロになるのはその後だな」


はじめは甲子園で背負った“1”を小前に渡した。


はじめ「……肘が治ったら、俺とまた勝負してほしい。今度は“本気”で。それまでに、俺もアンタが勝負したくなくなるぐらい、すげーバッティング身につけてやるから」


小前「ふん!望むところだ、クソガキが」


二人は固い握手を交わすのであった。


小前への報告を済ませたはじめは、その足で祐衣の家へ行った。


“ピーンポーン”


“…………”


はじめ「留守か……おばさんも祐衣も仕事か」


はじめは俯き、暗いオーラを放ちながら帰宅した。


はじめ「ただいま……」


いおこ「おかえりなさい!甲子園優勝おめでと………ってあんた、甲子園優勝したっていうのに何でそんなに暗いの!?嬉しくないの?」


“ぎゅぅ〜”


はじめ「は……腹減った……」


いおこ「あー、お腹空いてたのね。待ってなさい」


“ガッガッガッ……”


いおこが作った料理を、これでもかというぐらい食べまくるはじめ。


いおこ「まったく……前もって連絡もせずに行くから、タイミングが合わないのよ。あんた勉強や野球はできるのに、そういう所は本当に抜けてるんだから」


はじめ「スマホ苦手なんだよ。それに早く祐衣に会いたかったの!」


いおこ「祐衣ちゃんも忙しい子だからね。祐衣ちゃんがバイトしてるフラワーショップ、今大忙しで半年先まで予約で埋まってるって言ってたわよ」


はじめ「え!?花屋さんなのに!?」


いおこ「えぇ。フラワーショップGirls、確かあんたの高校の球場の近くだった気がするけど」


はじめ「フラワーショップGirls……!あの行列作ってた花屋さんか!!」


はじめはあの行列が出来ていたフラワーショップに祐衣がいる事を知らなかった。


いおこ「知らなかったの?」


はじめ「知らないよ。っていうかあの花屋すごいよ!すんげー行列だったもん。行列のできる花屋」


いおこ「何でも祐衣ちゃんのファンが沢山押しかけてるみたいよ。ダイヤモンドが霞む程、美しい店員さんがいるって噂になってね。フラワーショップとは無縁そうな男の人達がこぞって買いに来るとか…」


はじめ「すげぇ……ふっ!甲子園優勝なんて祐衣に比べれば大した事ないね」


宗一郎「ただいまぁー!」


いおこ「おかえりなさい…って何よそれ!?」


宗一郎「おう!……はじめ!甲子園優勝おめでとう!今日はお前の為に奮発して高級メロンと高級マンゴーを大量に買ってきたぞ!」


はじめ「うわっ!すげぇ量!」


いおこは驚くと同時に怒りも湧いてくる。


いおこ「ちょっと、あなた。これ、いくらしたの?」


宗一郎「ん?50万ぐらいだったか?」


いおこ「ふぅ~ん。そのお金は、いったい何処から出たのかしらねぇ?」


宗一郎「“し、しまった!”い、いやぁ〜こないだ買った宝くじがたまたま当たったんだよ」


いおこ「へぇ…ギャンブルしないあなたが宝くじねぇ…」


宗一郎「きょ、今日ぐらいいいじゃないか!我が子が甲子園優勝なんて偉業成し遂げたんだ!ケチ臭い事は言うな!ほら、俺が全部切ってやるから」


いおこは、くすっと笑った。


いおこ「そうね。今日ははじめに免じて許してあげる」


その日沖田家は家中フルーティな香りに包まれた。


宗一郎「そういえば、お前何処か痛めてるのか?カーブとチェンジアップの2種類しか投げなかったとかテレビで言ってたが?」


はじめ「は!2種類って…(笑)アイツら、やっぱり何もわかってねぇな(笑)!メディアって本当に馬鹿だよ。騒ぐか政治家の言いなりになるしか出来ねぇんだから(笑)あれは無能の集まりだね」


宗一郎「え?違うのか?」


はじめ「父さん、俺どこも痛めてないから大丈夫だよ!俺痛いと騒ぐタイプだから、痛かったら嫌でも分かると思う」


宗一郎「そうか、なら良いんだ」


はじめ「それに、俺が投げたのは2種類だけじゃないよ。全部で8種類の変化球を投げたんだ。素人のマスコミには到底見抜けないと思うけどね!(笑)」


“ピーンポーン”


いおこ「はぁーい」


“ガチャっ”


いおこ「はーい…あ!祐衣ちゃん!」


祐衣「こんばんわ、おばさん。はじめ帰ってきてる?」


いおこ「えぇ、丁度今リビングにいるわ。さ、入って入って」


祐衣「お邪魔しまぁーす」


はじめ「祐衣!」


祐衣「はじめ!甲子園優勝おめでとう!!」


祐衣はそう言うと、”約束通り”はじめの頭を抱き締めながら頭を撫で回した。


はじめ「“祐衣の柔らかくて温かいメロンが、顔に…”し、幸せ…♡」


はじめは鼻の下を伸ばしながら喜んだ。


祐衣「最っ高にかっこよかったよ、はじめ♡」


いおこ「まぁ……これこの子たちのファンが見たら絶叫するわね」


宗一郎「若えな〜。幸せそうだ」


フルーツを切り終わった宗一郎が、切ったフルーツをテーブルまで運んできた。


いおこ「ちょうど良かった!祐衣ちゃんもメロンとマンゴー食べる?」


祐衣「いいの?食べるぅ!」


はじめ「祐衣の、祐衣の……うふふふふ」


幸せなピンク色のオーラを醸し出すはじめ。


いおこ「ほら、はじめ!お父さんがメロンとマンゴー切ってくれたわよ!食べましょう!」


はじめ「お、、、俺お腹いっぱいだよ…祐衣の…祐衣の甘くて柔らかいメロンで……」


祐衣「私のメロン?」


いおこ「バカ!はじめ!目を覚ましなさい!」


はじめにビンタをするいおこ。


はじめ「いってぇな!何だよ!…は!祐衣!祐衣、俺甲子園で優勝したよ!ホームランも打ったんだよ!」


正気に戻ったはじめ。


祐衣「ふふっ見てたよ。仕事中だったけどね……ん!美味しい!すごい甘いよ!これ!!」


宗一郎「だろ?何せ高級メロンと高級マンゴーだからな!」

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