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第15話 規格外!!1番打者沖田一誕生!!

その日の全体練習が終わり、はじめと慎太郎と田中は室内練習場に行く。



するとそこには“先客”がいた。



はじめ「ちっ!誰だよ!」



慎太郎「案外レギュラーの誰かかもな」



田中「お前ら疲れ知らずか…俺もうクタクタやわ…」



そして扉を開けると、そこには川瀬がいた。



飯島「ほら!もっと丁寧にやれよ!」



川瀬「……」



そこにはボールを転がす飯島と、内野用グラブでゴロを捕る川瀬の姿があった。



飯島「お前4番死守したいんだろ?!だったらもっと気合入れてやらないと、4番取られるぞ!既に正捕手は武市に取られたも同然なんだ」



川瀬「うっさぁーいっ!捕り方以外しゃべるな!」



飯島「ほらまた雑になった」



3人はそのやり取りを見つめていた。



慎太郎「今日は無理そうだな」



田中「そうやな。帰ろや沖田……あれ?」



はじめはゆっくり川瀬の元へ行く。



はじめ「川瀬さん。俺も混ぜて下さい」



飯島、川瀬「沖田!」



はじめ「飯島さん。俺にも転がしてもらえますか?」



飯島「あぁ、俺は構わないが、川瀬、いいのか?」



川瀬「好きにしろ」



はじめ「ありがとうございます」



はじめが飯島の転がすゴロを捕球する際に、”大きめの独り言”を呟く。



はじめ「正面より、やや右からボールを見て、卵を捕る感じで、そして捕ったら右足を左足の前へステップさせる!」



慎太郎「……ふっ!なるほどな!」



田中「沖田………」



川瀬ははじめのゴロ捕球の美しさと独り言に自然とリズムを合わせ始める。



はじめと川瀬にゴロを転がす飯島と、ティーバッティングをする慎太郎と田中。



川瀬「はぁ、はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ、」



はじめ「まだまだ!お願いします!」



飯島「お、おぅ(コイツ疲れ知らずか!俺よりも厳しいな。いや、それ以上に捕り方も送球も全くブレない。欠点指摘しようにも何一つ欠点が見当たらない!なんて野郎だ!)」



川瀬が疲れて倒れ込んだと同時に特守は終了した。



はじめ「ふぅ。最高ですよ、川瀬さん」



倒れ込む川瀬に左手を差し伸べるはじめ。



その手を掴み起き上がる川瀬。



川瀬「サンキュー。お前、本当に化物だな」



はじめ「いえ、川瀬さんと一緒にやれたから、俺も楽しくやらせてもらえただけですよ。ありがとうございます。飯島さん、ありがとうございました!」



はじめは2人に礼をして、その場を後にした。



残された飯島は川瀬に話しかける。



飯島「とんでもない奴が入ってきたな」



川瀬「……アイツ、俺にずっとゴロ捕球の基本を教えてくれてたな。手本になった。飯島、もう1回…うぷ、う、」



飯島「おい!こんなところで吐くなよ!外連れてってやるから、我慢しろよ!」



飯島が川瀬を担いで外に連れ出した。



外に出た瞬間川瀬は大量に嘔吐した。



飯島は川瀬の背中を擦りながら介抱した。



飯島「今日はもう帰るぞ。明日また付き合ってやるから。なっ!」



川瀬「……悪い、、うぇっ!!!」



翌日の早朝、飯島は日課のように行っていた球場外周の草むしりと石拾いをやっていると、バックスクリーン裏からはじめと慎太郎も同じように草むしりとゴミと石を拾いながら現れた。



飯島「お前ら、こんな朝早くから何してんだ?」



はじめ「あ、飯島さん!おはようございます!いや、俺たち新入りなのに好き勝手使わせてもらってるから、トレーニングがてら掃除もしようと思って」



慎太郎「おい待ってくれよはじめっ…飯島さん!おはようございます!」



飯島「おはよう。そっか。でもお前ら練習しすぎだろ。休める時に休んどかないと、この先持たないぞ」



はじめ「いえ、俺もコイツもまだまだ半人前にもなってません。この先レベル上げていかないと、チームを支えるなんて、とても出来ません。休んでる暇なんてありませんよ」



飯島「沖田…そうか、でも無理しすぎて怪我するなよ(コイツらが半人前?あれだけの技術を持ちながら上手くなる事に関しては誰よりも飢えてる。それにあのプライドの高い川瀬がアイツには脱帽していた……俺もアイツとプレーしてみたいな)」



はじめ「うっす!じゃあ、続きやります。おい慎太郎、へばったふりしてないで、さっさとやるぞ!」



飯島は自身の怪我と本気で向き合う覚悟をした。



それから程なくして、はじめと慎太郎は入学した。



特待生以外の推薦組も合流、晴れて全30名の1年生が揃ったが、はじめと慎太郎とはレベルそのものが違っていた。



それはベンチ外の上級生にも言えることだった。



はじめ「田中そう言えば、Bチームの練習ってどうなんだ?」



田中「どうって…正直言って中学の時の方がキツいぐらいや。先輩たちもサボることばっか考えとる。どうせベンチ入りなんてできないなら、真剣にやる意味なんてないって言うとったわ」



はじめ「そんなもんなのかな…つまんねぇ」



田中「俺も多分お前らに会う前は、あっち側の人間やった思うわ。150キロ投げる同級生と、ドラ1候補からホームランを打った同級生。あの試合の時はどう考えても才能が違いすぎる思うた。けどお前らと一緒に居残り練習やっててわかってん。それは都合の良い言い訳やってことが」



慎太郎「そっか、じゃあ田中は将来エース目指すんだな!」



田中「いや、それが武市のバッティング参考にしたら、なんかちょっとしたコツを掴んだみたいや!今は外野でレギュラー目指してんねん!」




はじめ「ほう。それは見てみたいな」




そして新チームになってから最初の練習試合の日。



赤木監督はメンバーを発表する。



赤木監督「1番ショート沖田!」



はじめ「!!は、はい!」



はじめは自分は3番か5番あたりだと思っていた為驚いた。



赤木監督「2番レフト田中!」



田中「はい!」



田中はレギュラーチームに合流して直ぐにスタメンを勝ち取った。



赤木監督「3番ピッチャー小前!」



小前「は、はい。“俺が3番?まじかよ…”」



小前はバッティングの調子も良かったが、まさかの3番起用に驚き、さらにバッティングは嫌いだったことから落胆した。



赤木監督「4番サード川瀬!」



川瀬「はい!」



赤木監督「5番キャッチャー武市!」



慎太郎「はい!」



慎太郎の台頭もあり、川瀬は自らキャッチャーからサードへコンバートを申し出ていた。



メンバー発表後、小前ははじめの元へ行き話しかける。



小前「おい、俺が3番って、監督何考えてんだろうな?」



はじめ「さぁ……小前さん、もしよかったら、監督に直訴して、俺と打順変わりますか?」



小前「死んでも嫌だよ!お前1番だろ?1番ピッチャーって、俺を殺す気か!?」



はじめ「えぇ~、1番ピッチャーってかっこいいじゃないですか!」



小前「俺はバッティングが大嫌いなんだよ!」



すると次の瞬間、スタンドから茶色い声援を送る者たちがいた。



ファンA、B、C「沖田せんぱ〜い♡」



ファンD、E、F「こっち向いて〜♡」



小前「!!な、なんだ!?」



慎太郎「げっ!アイツら、何処で情報仕入れて来やがったんだ!」




彼女たちは中学の時の沖田一ファンクラブの女の子たちだ。



はじめ「おっ!」



はじめはファンの子たちにウィンクで応える。



ファン一同「キャーー♡……隣の人もカッコよくない?あの人って確か甲子園でピッチャーしてたイケメンの人じゃないの?いやぁ~ん♡カッコいい人のそばには、やっぱりカッコいい人が集まるのね〜♡」



すると川瀬が慎太郎へ話しかける。



川瀬「……おい武市、あの子たち、沖田の女か?」



慎太郎「いや、どう考えても違いますよ。あれはただの追っかけです。はじめの彼女は………今日は来てないみたいですね」



川瀬「アイツ、モテるんだな」



慎太郎「そりゃ、全国大会優勝した中学のエースで4番でしたから」



川瀬「そうか……」



田中「えぇなぁ、沖田…モテモテやないか…しかもみんなそこそこ可愛いし。俺もモテたいわぁ…」



そこへ飯島がやって来て、全員を引き締める声をかける。



飯島「集合!今日は練習試合だが、新チームになってからの初戦っていう大事な一戦だ!何やらギャラリーが来てるみたいだが、気を引き締めるように!」



はじめと小前以外はビシッと引き締まった表情を見せる。



飯島「それから今日は監督はベンチには入らない。攻撃はノーサインだが、各自で場面に応じた打撃を行うように、と監督から伝言を預かってる。監督もバックネット裏から見ているぞ。今日の内容次第ではBチームに行ってもらう。いいな!」



一同「はい!」



飯島「よし、行くぞ!」



“カッカッカッカッ”



練習試合が行われる球場のバックネット裏のスタンドに、慌てた様子で入ってきた1人の美女がいた。



祐衣「……まだ終わってない。良かった」



祐衣はスコアボードを確認すると、試合は4回の攻撃が始まる所だった。



“1番ショート沖田くん”



祐衣「ショート?沖田違いかな?」



祐衣はゆっくり打席に向かうはじめを確認する



祐衣「はじめ!?」



祐衣はマウンドでのはじめ以外は知らなかった為驚いた。



“カーーーンっ!!!”



“ボンッ!!”



はじめが打った打球はスタンドを越えバックスクリーンの電光掲示板の上部に当たる。



ファン一同「キャーー♡また打った♡沖田せんぱい、やっぱり素敵♡」



祐衣「あの人たちも来てたんだ……怖いから気付かれないようにしよっと」



ダイヤモンドを一周してくるはじめの様子を温かく見守る祐衣。



祐衣「ふふっ、体も一回り大きくなって逞しくなったね、はじめ。元気そうでよかった」



そして攻撃が終わり、マウンドに立つ小前はバックネット裏のスタンドにいる美女(祐衣)に気が付く。



小前「お!あの子はめっちゃ可愛いな!まぶしい……俺のギャラリーだな!」



小前は心の中でそう思っていたが、すぐに祐衣の持っているバッグに付いている”ギターのストラップ”に気が付く。



小前「ん?あれは確か……ふっ!そういう事か」



小前ははじめの方を見る。



小前「……沖田は全く気付いてないみたいだな……よし、ここは俺が“見せ場”、作ってやるか」



小前は心の中で呟いていた。



すると、この回の打球は全てショートを守るはじめの元へ集まった。



しかしはじめのポジショニングと反応が良すぎて、全て簡単に処理してしまう。



ファン一同「沖田せんぱいも、小前さんもカッコいー♡」



小前「そっちじゃないんだよなぁ…」



ベンチに戻ると小前の異変に気付いていた慎太郎が小前へ話しかけた。



慎太郎「小前さん、大丈夫ですか?何処か痛めてるんですか?」



小前「え?…あぁ、いやそんなんじゃないさ。それより武市。沖田の彼女って、すげー可愛いな」



慎太郎「へ?」



小前はバックネット裏の祐衣を指さした。



慎太郎「あ!……来てたんだ……ん?なんで小前さんが知ってるんですか?」



小前「そんなもん見ればわかる。せっかく見せ場作ってやろうと思ったのに、アイツ憎たらしいほど簡単に捌きやがって!もっとこう…タイミングずらして飛び込んで捕るとかできねぇのか、アイツは!人の善意無駄にしやがって…」



慎太郎「あ~、そういうことだったんですね。やっぱり凄いですよ、小前さんは。勉強になります」



そして、最終回の攻撃が始まる前に小前は動き出す。



小前「飯島!ちょっと足つったから、代えてくれ」



飯島「は!?いつから!?」



小前「さっき最後の球投げた時にな」



飯島「馬鹿野郎!だったら早く言え!!おい!トレーナー呼んでこい!それから沖田!次はお前が投げろ!だからブルペンで軽く作っておけ!」



小前「“まったく!沖田のヤツ、ここまでしてやっても彼女が来てることに気付かないんだろうな……だったらせめて、わかりやすくカッコいいところ見せてやれよ!!”」



はじめ「はい!」



祐衣「ん?」



はじめがブルペンへ向かうのに気付く祐衣。



攻撃が終わると、ブルペンから真っすぐにマウンドへ向かうはじめ。



そして小前に変わってショートに永倉が入った。



慎太郎「小前さん、マジで凄い人だな」



慎太郎は小声で呟き、マウンドで自分の足場を掘るはじめを見る。



慎太郎「アイツは気付いてなさそうだな。教えてやらねぇぞ、俺は。自分で気付けよ」



はじめの高校での最初のマウンドは、相手チームの度肝を抜いた。



ストレート、変化球を自在に操り、全球ストライクゾーンで勝負しながら最後の打者3人を三球三振に打ち取り、初試合は勝利した。

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