第13話 怪物対決!小前悠介VS沖田一
マウンドに立つはじめ。
レギュラーチームの1番打者、藤田への初球はストレートだった。
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「す、ストライーク!」
藤田「な、何なんだこの球は!!」
続く2球目。
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストライーク!!」
藤田「コースはど真ん中!なのにこの俺が反応できない…!?」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストラックアウト!!」
藤田「な、何なんだよこの1年!」
ベンチに戻りヘルメットを脱ぐ藤田に小前が話しかける。
小前「お前相手が1年だと思ってナメてかかってたろ?だからやられるんだよ。だらしねぇ」
藤田「小前…」
小前「なんだ?こんな事言われて悔しいならな、1回ぐらいバット振ってこい馬鹿野郎(今のうちの打線じゃ、あんな球に反応できるヤツはいねぇ…俺も気抜いて、うかうかしてるとエース取られちまうかもな)」
はじめは小前同様、レギュラーチームの1、2、3番を三球三振に抑え、一度もバットを振らせなかった。
田中「す、凄すぎるで…沖田……俺ホンマにコイツの後に投げなあかんのか……何一つ勝てる気がせぇへん」
田中も開いた口がふさがらなかった。
赤木監督はスピードガンではじめの球をバックネット裏で測っていた。
赤木監督「どれどれ……!!ひゃ、156キロ…だと!?信じられん…アイツはまだ入学すらしてないんだぞ!!…なんてヤツだ」
そんな驚愕する赤木監督やレギュラーチームのメンバーをよそに、小前だけは何処か嬉しそうな表情を浮かべた。
小前「ふっ!面白ぇ!付き合ってやるよ!3イニングだけな!!」
小前は1年生チームの4番、5番、6番を前の回と同じく三球三振に抑える。
そしてはじめが迎えるのは、レギュラーチームの4番、川瀬だった。
川瀬「……」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストライーク!!」
川瀬「……見極められないか…」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストライーク!!」
川瀬「……」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストラックアウっ!!」
川瀬がベンチに、戻ると小前が話しかける。
小前「お前4番だろ。何で1回も振ってこないんだよ。振らなきゃ何も起きねぇだろうが」
川瀬「振らなかったんじゃない。振れなかったんだ。完敗だ」
小前「ったく!4番のくせに負け認めてんじゃねぇよ。みっともねぇ」
川瀬「……」
続く5番打者も三球三振に抑えて迎えるのは、6番に入った小前だった。
小前「“見せてもらうぞ、お前の球”」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストライーク!!」
小前「……」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストライーク!!」
小前「……ふっ!」
“シュルルルルルルッ!!”
“スパァーーーンッ!!”
主審「ストラックアウト!!」
小前“なるほどな……”
小前が、ベンチに戻りマウンドに向かう準備をしていると、バックネット裏にいたはずの赤木監督が一塁側のレギュラーチームのベンチにいた。
赤木監督「小前、アイツの球どうだった?」
小前「……うちの主軸が一度もバットを振らせてもらえない理由が打席に入って、よくわかりました。……球が、途中から加速しやがった……あんなの甲子園でもお目にかかれませんよ。それにあのキャッチャー…初めて組んだチームをもうまとめ上げてる。評判以上ですよ、あの2人は」
赤木監督「そうか…やけに楽しそうだな。小前」
小前「楽しいですよ。最高にね。さ、今度はアイツからですね……勝負を楽しませてもらいますよ」
赤木監督「“小前があんなに楽しそうに野球してるのを見るのは初めてだ…”」
そして1年生チームの攻撃は、7番のはじめからだった。
小前が、投じた初球は内角高めに僅かに外れるストレートだった。
“シューーーーーーっ!!”
“パスっ”
主審「ボール」
はじめ「!!“なるほど…慎太郎がビビるのも無理はねぇ。あんなのバットに当てられても、ポップフライになるのがオチだ…どうする?”」
小前「ほう。あれを見極めたか。ならこれはどうだ!!」
小前が投じたのは外角からボール球になるカットボールだったが、はじめは何とかバットに当てたが、打球は弱々しく三塁側へキレてファール。
はじめ「変化球のキレも凄い…これがプロの球なのか……なら、いっその事、バットを振り回してやる!!」
小前「ふっ!!ビビっちゃいないみたいだな。次は、これだ!!」
小前はノーウァインドアップから、クイックモーションでストレートを投げると、はじめはタイミングをずらされながらも、何とかバットの芯に当て、ライト前へ打球を運んだ。
小前「あれを打ち返すとは……やっぱりアイツは只者じゃねぇ」
小前はヒットを打たれたのに、何処か嬉しそうな表情を浮かべた。
一方のはじめは、悔しさを滲ませていた。
はじめ「くそっ!!完敗だ…俺じゃバットに当てるのが精一杯だった。今のはたまたまバットの芯に当たってくれたからヒットになっただけだ……それに…アイツ全然本気じゃねぇ、遊んでいやがる……ここまで差があるのか……」
次は慎太郎が打席に入った。
慎太郎はここまでの小前の投球と、はじめの打席での反応をずっと見ていた。
慎太郎「“ストレートも変化球も、ただ振り回すだけじゃ意味がない…なら、小細工させてもらうだけだ!”」
慎太郎は小前の投げる球を全てファールにした。
小前「“こ、こいつ……想像以上に厄介だぞ!ただファールを打ってるわけじゃない。確実にタイミングが合ってきてる。マズいな”」
すると慎太郎ははじめにアイコンタクトを送った。
それに小前も気付いた。
小前「“なんだ?何企んでやがる!?”」
小前がはじめの方を見ると、はじめはリードを取りながら不敵な笑みを浮かべた。
小前「“揺さぶりをかけてくるつもりか?”」
小前は牽制球を送るが、はじめは余裕を持って1塁に戻った。
すると再び小前の顔を見てニヤついた。
小前「“調子に乗るなよ小僧どもが!俺相手に小細工なんか通用しねぇぞ!”」
小前が投げたストレートは真ん中やや外角寄りの甘い球だった。
それを慎太郎は見逃さなかった。
慎太郎「“よしっ!”」
“カーーーーーン!”
“バンッ!!”
慎太郎が放った打球はバックスクリーンに飛び込んだ……
田中「う、うそやろ……小前さんからホームラン打ちおった…」
打たれた小前は打球を見つめながら微笑んだ。
小前「“やられた…あの1年コンビ、可愛くないぜ”」
小前は後続を三者三振に抑えてマウンドを降りた。
小前「監督。俺今日はここまでですよね?アイシングしてきまーす」
赤木監督「あぁ。体のメンテナンスはキチンとしておけよ」
小前「うーっす」
赤木監督「“アイツら、小前から先取点を奪いやがったな…これは楽しみだ”」
紅白戦はその後、はじめと慎太郎がそれぞれホームランを2本ずつ放ち6点を奪い、8対2で、なんと、1年生チームが勝利したのだった。
はじめの投球内容も3回を投げて9奪三振、投球数27球で投げた球種はストレートのみという、まさに怪物級の活躍を見せたのだった。




