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第12話 伝説の幕開け

難舞高校に特待生として入学したはじめと慎太郎。



難舞高校では特待生は入学前からの練習参加を義務付けられており、その初日の練習に参加する為、2人はグラウンドへ向かっていた。



慎太郎「なぁ、やっぱり難舞は近すぎねぇか?」



はじめ「近すぎていいんだよ。別に楽する為だけに難舞選んだわけじゃないんだ」



慎太郎「そりゃそうだけどさ」



はじめ「それに俺達にとったら好都合な事だらけじゃねぇか。食事は自宅で取れるし、寮内での無駄な雑用がない分、自主トレや勉強に時間が使えるんだ。それだけじゃない。難舞は自前球場もあるし、室内練習場も充実してる。最高じゃねぇか」



慎太郎「それもそうか」



2人は談笑していると、いつの間にか難舞高校の専用野球場に到着していた。



はじめ「やっぱいつ見てもデケェな、ここは」



慎太郎「本当にこれが難舞だけの専用球場なのか…確かにグラウンドの中は見たことすらないけど」



はじめは周りを見渡す。



はじめ「グラウンドは空いてねぇか…まだ俺達以外来てねぇな」



慎太郎「あぁ。張り切りすぎて早くきちまったみたいだな」



はじめ「…先に軽くアップでもしておくか」



慎太郎「だな」



2人は着替えを済ませ、グラウンドの外周を軽く走り、ストレッチと軽いウェイトトレーニングをする。



そしてその場に座り込み、新しく新調していた道具について話し合っていた。



はじめ「お?とうとうそのミットも使えるようになったんだな」



慎太郎「もうバッチリ使えるぞ。何せ2年かけて型付けしてたからな。お前のは?」



はじめ「ん?はめてみるか?」



はじめは自分の投手用のグラブを慎太郎に手渡す。



慎太郎「どれどれ……硬っ!こんなんで取れるのか?」



はじめ「あぁ。それ買ったの昨日だしな。それに俺は特に型付けするタイプじゃないから大丈夫だ」



慎太郎「お前が硬めのグラブが好きなのは知ってるけど……ん?お前内野用のも持ってきてるのか?」



はじめ「あぁ。キャッチボールはこっちのグラブでやるんだ。じゃないとピッチャー用のグラブがヘタるの早くなっちまうからな」



慎太郎「ふぅん。いろいろ考えてんだな」



すると1人の1年生が2人の元へやってきた。



彼の名前は田中重久。



身長181センチ。体重71キロ。



大阪出身の右投げ右打ちの投手で、はじめや慎太郎と同じ特待生として入学した。



田中「よぅ!お前ら沖田と武市やろ?お前らテレビでスーパー中学生言うて出てたから知ってるわ!俺田中って言うねん!お前らと同級生や!今日からよろしくな!!」



はじめ「あぁ。俺が沖田だ、宜しく」



慎太郎「俺は武市。宜しく」



3人はそれぞれ握手した。



田中「お前らもう動いてたんか?ちょっと早すぎちゃう?」



はじめ「ちょっと気負いすぎて早く来ちまったけど、なんか落ち着かなくてな」



田中「ふぅん。こりゃ勝てるわけないわ…そう言えば沖田と俺一回会ってるんやけど覚えてない?」



はじめ「え?いつ?」



田中「中2の時にお前日本代表で4番打ってたやろ?そん時に練習試合でお前にホームラン打たれたんや」



はじめは田中の顔をじっと見つめる。



はじめ「……悪い。全然思い出せねぇ…」



田中「くぅ~!このホンマに覚えてへん感じが泣けてくるわ!」



すると慎太郎が素朴な疑問をぶつける。



慎太郎「そう言えば田中は関西出身だろ?もう寮に住んでるのか?」



田中「いや、俺のおとんがこっちに転勤になったから近くに引っ越して来てん。せやから大阪の高校の誘いもあったけど、難舞選んだんや」



慎太郎「そっか」



田中「それに難舞って共学やし、可愛いマネージャーもおりそうやからな。むふふふ」



田中はニヤニヤしながら話す。



慎太郎「ははは」



田中の話を聞いて慎太郎が苦笑いを浮かべていると、残りの1年生たちが全員揃って球場へやってきた。



すると、全員が揃ったタイミングで難舞高校の監督の赤木監督が1年生全員を集合させた。



1年生一同「おはようございます!」



赤木監督「おはよう。1年生の諸君。早速で悪いが、球場に入って準備を済ませたら各々でウォーミングアップを済ませてくれ。それが終わったらウチのレギュラー陣と試合をしてもらう」



1年生一同「!…はい!」



はじめ「ふっ……」



赤木監督「試合のメンバーはこっちで決めておいた。ウォーミングアップが終わったら、三塁側のベンチ前に集合するように。わかったな?」



1年生一同「はい!」



1年生がウォーミングアップをしていると、レギュラー陣が続々と一塁側ベンチへ現れた。



田中「おい!あれ、小前さんやで!!ドラ1候補の!」



はじめ「ん?…関係ねぇよ」



小前悠介。



左投げ左打ちの投手。



難舞高校の3年生で、その年のセンバツでもエースとして準優勝に大きく貢献した。



日本のプロ球団だけではなく、メジャー球団も彼に注目しており、マスコミやメディアからも今ドラフトでNo.1の選手として報道していた。



すると小前がブルペンで投球練習を始めた。



田中「うそやろ…いきなり小前さん投げさすんか?」



“プゥ…”



はじめ「……クセっ!おい田中!お前屁こいたろ?」



田中「こいてへんわアホ!…こいたけど!」



三塁側ベンチ前へ1年生が集まると、赤木監督が現れた。



赤木監督「ウォーミングアップは終わったみたいだな。それじゃあ、スタメンを発表する!」



赤木監督がスタメンを発表する。



赤木監督「1番センター山谷」



山谷「はい!」



赤木監督「2番ライト国立」



国立「はい!」



赤木監督「3番セカンド黛」



黛「はい」



はじめ「ふっ」



はじめは、次は自分が呼ばれることを確信していた。



赤木監督「4番ファースト小田」



はじめ「は?」



小田「はい!」



はじめは驚き、俯いた。



赤木監督「5番サード山北」



山北「はい!」



赤木監督「6番レフト河合」



河合「はい!」



赤木監督「7番ピッチャー沖田」



はじめ「はい……」



赤木監督「8番キャッチャー武市」



慎太郎「はい!」



赤木監督「9番ショート和田」



和田「はい!」



赤木監督「今年の特待生の1年はお前達12人だけだ。今スタメンで呼ばれなかった者も今日は必ず出るから、準備を怠らないように。それから沖田。お前は今日は3イニング投げてもらう。マウンドから降りても別の守備についてもらうから、そのつもりでいるように」



はじめ「はい(じゃあなんで7番なんだよ)」



赤木監督「それじゃあ、お前達は先攻だ。ノーサインでいくから、好きなように攻めろ。いいな!」



1年生一同「はい!」



レギュラーチームのマウンドには、エースの小前が上がった。



はじめ「俺とお前が7番と8番だぜ?気楽でいいや」



慎太郎「本当だ。小学生の時以来だな」



田中「お前らスタメンで出れてえぇやないか。俺なんか補欠やで」



はじめ「つっても、俺は3イニングだ。俺の次にマウンドに上がるんだから準備しとけよな」



田中「はぁ…レギュラーになれたら、女の子たちがキャーキャー言うてくれる思ったのにな……」



小前はマウンド上からその様子を見ていた。



小前「アイツらが沖田と武市だな。俺がマウンドにいるのに雑談とは、随分余裕じゃないか」



小前はあっという間に先頭の3人を三者三球三振に抑えた。



はじめ「……ん?もうこっちの攻撃は終わりか?しゃーねぇ、俺もマウンドで暴れてくるか!」



慎太郎「……」



はじめ「おい!お前まさかビビってんじゃねぇだろうな」



慎太郎「ビビってるよ…さすがドラフト1位候補。勉強すらさせてもらえそうにない」



慎太郎は珍しく冷や汗をかいていた。



はじめ「慎太郎…俺の球を捕り続けてるお前から見ても、そんなに凄いのか?」



慎太郎「……」



はじめ「気に入らねぇ…その冷や汗は俺の球捕ってからかけよ!」



はじめがマウンドで投球練習している時も慎太郎の脳裏には小前のピッチングが焼きついていた。



慎太郎「あれは全部ストレートだった。ノビもキレも段違いだったが…しかもそのノビやキレすらもコントロールしてやがった…まるで何種類ものストレートを操ってるかのようだ…」



はじめ「ったく!いつまでもビビり倒しやがって!!いい加減目覚ませよ!」



はじめは投球練習最後の球で全力のストレートを投げた!



“シュルルルルルルッ!!”



“スパァーーーンっ!!!”



慎太郎「!!こ、これは…」



はじめ「目ぇ覚めたか、馬面!テメェの相棒はあの二枚目の左ピッチャーじゃねぇだろ!」



慎太郎「はじめ……悪かった。さぁ来い!はじめ!」



はじめの投球練習最後のストレート、赤木監督が見逃すはずなかった。



赤木監督「凄い球だ…これがこの間まで中学生、それも軟式上がりのピッチャーの球だというのか……もしかしたら、うちのレギュラーチームは沖田にヤラれるかもしれん…」



はじめ「よし、俺の気持ちは届いたみたいだな。さて、このセンバツ準優勝の打線とやらがどの程度なのか、見極めさせてもらうぞ!」

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