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第11話 祐衣の宿題と一の決意!!世界を魅了する為の道標!!

食事を終えると慎太郎は帰り、祐衣ははじめの部屋にいた。


はじめ「さっきはありがとう」


祐衣「どういたしまして」


はじめ「そう言えば祐衣は何しに来たの?」


祐衣「はじめ、もうすぐ中学も終わるけど、そろそろちゃんと進路決めたほうがいいんじゃない?」


はじめ「進路?」


祐衣「そう。ここまでのはじめは、本当に凄かったよ。勉強に野球に、頑張ったなんて言葉で片付けられないぐらい、見事に結果残してきたじゃない。だから、あえて”意地悪”な質問するね?このまま野球を続けていくのか、それともHDやYU-TOを追いかけて音楽の道に進むのか、どうするの?」


はじめ「!!」


はじめは野球に勉強に打ち込むあまり、今が中学3年生である事がどういう事か、過去に自分が課した期限が迫っていることを完全に忘れていた。


祐衣「どっちに進んでも、私ははじめの近くにいるよ。まだ少し時間はあるから、しっかり考えて、悔いのない答えを出して。それを言いに来たの」


はじめは悩んでいた。悩みながら野球の練習に参加していた。


ブルペンでの光景。


“シュー!パンっ!”


慎太郎「なんだ?球離れが早い…」


“シュー!パンっ!”


慎太郎「おい!はじめ!リリース早いぞ!」


はじめ「あぁ。悪い」


“シュー、パン”


痺れを切らした慎太郎がはじめ元へ行く。


慎太郎「シャキッとしろよ!全国大会までもう少ししか無いんだぞ!リリースもめちゃくちゃで足も使えてない!!そんなめちゃくちゃフォームでこれ以上はピッチングさせないぞ!」


はじめ「………」


慎太郎「ふぅ…今日はもう帰れ。帰って頭冷やしてこい。有村先生には体調悪いってことにしといてやるから」


はじめ「…悪い」


早めに帰宅を促されたはじめ。


その帰宅途中もはじめは悩んでいた。


はじめ「どうすればいいんだよ…ロックか、野球……」


その悩む様子を遠くから見つめる祐衣。と、


玲美「へぇ、祐衣ちゃん可愛い顔して彼氏のストーカーなんてしてんの?」


祐衣「わぁ!麻生さん?あ…こないだは家出して心配かけてしまってごめんなさい」


玲美「ふふっ!別にそんなの気にしないでいいよ。それより、アイツまた何か悩んでるみたいだね」


祐衣「うん。昨日ね“宿題”出したの。私が」


玲美「宿題?アイツ勉強得意なのにね…そんなに難しい問題出したんだ。祐衣ちゃんって可愛い顔して結構彼氏に厳しいね」


祐衣「えぇ笑?顔の可愛さは麻生さんには勝てないよ!男の子が麻生さんには逆らわないし」


玲美「それ可愛さと関係ないじゃん(笑)でもこんなところから見てるだけでいいの?いつもなら練習中に見に来るファンにブチギレてる沖田くんが今日は大人しくて、しかも練習も1人だけ早上がりしたってファンクラブの子が心配してたよ?」


祐衣「うん。こればっかりは自分で決めてほしい。悔いは残してほしくないの」


玲美「ふぅん。で、処女は捧げたの?笑」


祐衣「それはまだ…って何聞いてんの!?やめてよ…」


祐衣は突然の質問に赤面する。


玲美「ははっ!やっぱ可愛い!大丈夫だよ、私もまだ処女だから!じゃ、帰るね」


祐衣「うん、気をつけてね」


祐衣は手を振り玲美を見送った。


はじめは家に帰って、自室の机に座り勉強していたが、身が入らない。


はじめ「ダメだ、集中できねぇ…」


はじめ「母さん、ちょっと電車賃くれない?」


いおこ「え?どこ行くの?」


はじめ「YU-TOの墓参り」


いおこ「墓参りって、YU-TOさん命日まだよね?誕生日か何か?」


はじめ「…まぁそんなところだよ」


いおこ「ふぅん…気をつけて行くのよ?」


はじめ「あぁ、わかってる」


はじめが何処かに行く様子を見つめる祐衣。


そんな祐衣に気付いたいおこ。


いおこ「祐衣ちゃん。そんなところで見てないで、こっちいらっしゃい」


祐衣「へへっ、見つかっちゃった」


いおこ「はじめの事心配してくれてるんでしょ?また何か悩んでるみたいだし」


祐衣「うん。実はねはじめに意地悪な“宿題”出したの、私が」


いおこ「宿題?」


祐衣「そう。野球と勉強に、ここ最近はいろいろあって、忘れてそうだったから。”原点”を」


いおこは祐衣の考えを完全に理解した。


いおこ「なるほど。そう言えば、中学までは…って言ってたね」


祐衣「私ははじめがどの道選んでも、ずっとそばで支えていきたいの」


いおこ「幸せ者ね、はじめは。ところで祐衣ちゃん、志望校は決まったの?」


祐衣「……私高校には行けないんだ。今は」


いおこ「え?なんで」


祐衣「お母さんの貯金、鈴木が全部持っていったから…それだけじゃない。今の傷付いたお母さんを、もっと近くで支えたいの。学歴は後からでも何とかなる。だから中学卒業したら何処かでアルバイトするつもり」


いおこ「逞しいね。こんな良い子に好きになってもらえるなんて、はじめは本当幸せ者だよ」


はじめはYU-TOの墓前に立っていた。


はじめ「どうすればいい……俺は、一体何者なんだ……何をする為に産まれてきたんだ……」


するとそこへ2人の大人が現れた。


それはHDのメンバーのTOSHIKIとHATAだった。


TOSHIKIはドラム兼ボーカル、HATAはベーシスト。YU-TOと共に伝説のヘビー・メタルバンドHDを作り上げた張本人だ。


2人ははじめに近付き声をかける。


TOSHIKI「誰だい?君は」


その声にはじめは反応すると、声の主を見た瞬間、腰を抜かしそうになる。


はじめ「TOSHIKIさん…HATAさん…」


するとHATAははじめに気付く。


HATA「君は、もしかしてあの沖田一君じゃないのか!?テレビでも何度か取り上げられてた、剛腕の!」


TOSHIKI「そうなの?俺野球詳しくないから全然わかんないや。でもこんな命日でも誕生日でも無いのにコイツの墓参りってどういうことなんだろう?」


HATA「って事は、公一が言ってたあの時の小学生って君の事だったのか!」


TOSHIKI「あ~、あのYU-TOの夢を継いだ子か!」


はじめ「え?俺の事を知ってるんですか?」


HATA「あぁ、公一から聞いてるよ。それに俺はTOSHIKIと違って野球好きだからな。新聞やテレビで沖田一の名前は知ってたよ」


はじめは鳥肌が立った。


憧れの人の仲間が目の前に2人もいる。


それに何より、自分の事を知っているという事実。


しかし、はじめにはどうしても乗り越えなければいけない壁がある。


するとはじめが何か悩んでいる事を見抜いたTOSHIKIがはじめに話しかける


TOSHIKI「でもこんな何でもない日にここに来たくなるなんて、何か大きな悩み事でもあるんじゃないのか?」


はじめ「!!」


TOSHIKI「図星みたいだね。話してみなよ。役に立てるかわからないけど」


するとはじめは静かに口を開く。


はじめ「……俺、自分がわからなくなったんです。小さい時からYU-TOさんに憧れて、一緒に音楽をやるのが夢でした。でも小3の時にYU-TOさんが死んで、絶望して死のうとしてました」


TOSHIKI「………」


はじめ「でも公一さんにここに連れてきてもらってから今までは、あえて大好きなロックを封印して、勉強と野球に全力で打ち込んできました。中学卒業まではそうするって決めてたんです。でも気が付いたら、中学生活も残り少ない。もし野球やめてロックの道を歩むなら今しかないと思いました…だけど…」


HATA「……怖いんだね。野球を辞めるのが」


はじめ「!!」


まさしくその通りだった。


はじめは、自分でも気付かないうちに今まで必死に取り組んできた野球を辞める事が怖くなっていた。


自分の感情にピッタリの言葉を言われ、自然と俯いた。


TOSHIKI「野球やりなよ。YU-TOもそう言うと思う」


はじめ「TOSHIKIさん…」


TOSHIKI「俺野球の事は全然分からないんだけどさ、大好きなロックを我慢してまで続けてたモン捨てるなんて勿体ないじゃん。結果も出してるんだしさ」


はじめ「でもそれじゃ、ロックが!」


TOSHIKI「ここまで必死に積み上げてきたんだろ?もうどうせなら野球で頂点目指しなよ。それで、野球で頂点に立った時に、まだロックをやる気があるんだったら、一緒にやろうぜ。ロック始めるのに年齢なんて関係ない。ジジイになったってやれるんだ」


はじめ「!!」


TOSHIKI「俺たちは死ぬまでロックやり続ける。君が野球で頂点に立った時に俺たちが生きてたら、そん時は歓迎するよ。HDのメンバーとして」


HATA「ああ。それに俺は君が野球でどんな活躍を見せてくれるのか見てみたいしね。ファンとして」


衝撃の連続だった。


どちらを捨てるのか悩んでいたはじめにとって、TOSHIKIのロックを始めるのに年齢は関係ない、死ぬまでロックをやり続けると言う言葉は、はじめの迷いを一気に晴らしたのだ。


はじめ「TOSHIKIさん、HATAさん!ありがとうございます!!俺野球で頂点目指します!文字通り世界一カッコいい野球選手を本気で目指します!」


TOSHIKI「うん。期待してるよ。今度会う時は俺にもわかるぐらい有名になってくれよ!」


はじめ「はい!」


HATA「よし、それでこそHDのメンバーだよ。HDの…野球担当ってところだね!」


3人はYU-TOの墓前で微笑みあった。


そして固い握手を交わしたのだった。


翌日からのはじめは、練習でも凄まじかった。


“シューーーーっ!!パァーン!!っ”


慎太郎「何だ、この球!いつにも増して凄い球だ!!」


“シューーーっ!!スンッ!”


慎太郎「変化球のキレも曲がり幅もちょっと前のはじめの球とはまるで別もんだ!……ふ。迷いが晴れたみたいだな」


はじめ「おい、何黙り込んでんだよ!葬式やってんじゃねぇんだぞ!真剣にやれ変態野郎!!」


慎太郎「何が変態だ!このゴリラ野郎!!」


女子生徒ファンたち「キャーー!喧嘩ピッチング練習キター!!」


しかし、以前のはじめとは違う事が1つあった。


それはこの女子生徒のファンたちの歓声に一切文句を言わない。それどころかその歓声に右手を上げて応えるなど”ファンサービス”をやり始めた。


慎太郎「お前まじでどうしちまったんだよ…何かよく分かんないけど、怖ぇよ」


はじめ「応援してくれる人がいる事は有り難いことだって知ったからな」


そしてそのまま全国大会に出場。


はじめは全試合で4番ピッチャーで出場。


全試合完封し、被安打は全試合通して内野安打4つのみ、2塁すら踏ませない完璧な投球を披露した。


打つ方でも場外ホームラン4本含める10本のホームランを放ち、実に100校以上の高校からスカウトされるのだった。


一方の慎太郎も負けじとホームランを10本放ち、なおかつアウトに一度もならない完璧なバットコントロールを披露。


この怪物バッテリーは中学生でありながら、大いにメディアやテレビを騒がせたのだった。


慎太郎「ったく、お前のピッチングのせいで、守備での俺の見せ場が全く無いまま優勝しちまったじゃねぇか」


はじめ「お前ちょいちょい言葉間違えてんだよ。”お前のおかげで優勝できた”って素直に言えよ。ま、打率10割でMVP逃したのが悔しかったのはわかるけどな」


慎太郎「うるせぇ!お前が決勝で完全試合なんてするからだろうが!」


そして2人は進路を迷わずに古豪として知られる地元の強豪、難舞高校への進学を決めた。


決めた理由は2人共家が近くて通いやすいという理由だった。

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