第10話 逆恨み
はじめはいつものように自宅前でトレーニングをしていると、突然後ろから暴走したバイクがはじめに襲いかかる。
しかしはじめは瞬時にそれをかわした。
するとバイクそのまま電柱に追突して、バイクは大破。運転手もそのままその場に倒れた。
はじめ「あっぶねぇな!」
はじめは運転手の元へ駆け寄り声をかける
はじめ「おい、大丈夫かよ」
はじめは運転手の安否を気遣い、ヘルメットを外す。
すると、それは見覚えのある顔だった。
はじめ「コイツ!誰だっけ?見覚えあるんだけどな…は!救急車呼ばないと!」
はじめが運転手に背を向けてスマホを手に取り電話をしようとしたその時、運転手が立ち上がり、はじめに襲いかかろうとした。
しかし、はじめは運良くスマホを落としそうになって、そのおかげで襲撃をかわすことができた。
はじめ「何だよ!大人しくしてろよ!今救急車呼んでやるから!」
?「いらねぇよ!お前だけは許さない。お前のせいで、俺がどんな目に遭ったか…」
はじめ「…うん、意味がわからない。お前誰だよ」
増井「俺はな、小学生の時にお前にこの街から追い出された増井だよ!」
はじめ「…あ!お前か!」
増井「お前があんな張り紙をバラまいて音声まで流しやがったせいでな!俺ら家族はこの街から追い出された…」
はじめ「……」
増井「その後親父は職場でもそれがバレて居辛くなって仕事辞めて、家の中がぐちゃぐちゃになったんだ!俺も転校先にあの張り紙の件がバレて、学校行きづらくなって引きこもったんだよ!どこ行ってもヒソヒソされてな、挙句の果てに親は離婚したよ」
はじめ「………」
増井「全部、全部お前のせいだ。お前のせいで俺の家族はバラバラになったんだ!!」
はじめ「知らねぇよ。テメェが卑怯な事するから仕返ししてやっただけじゃねぇか。恨むんなら、俺を敵に回した過去の自分を恨め」
はじめは増井の話を聞いた上で突っぱねた。
はじめ「何でもかんでも人のせいにしやがって、テメェがいじめなんてくだらないことしなかったら、今頃家族全員仲良く出来てたんじゃねぇのかよ。弱いものいじめしか出来ねぇ卑怯もんが、勘違いしてんじゃねぇぞクソ野郎!」
増井「だまれ!」
増井は隠し持っていたナイフを取り出した。
増井「殺してやる、沖田、お前だけは絶対に殺してやるよ」
はじめ「卑怯なのは変わってないな、来いよ!言って分からないなら半殺しにしてやるよ」
増井がナイフではじめに襲いかかろうとした時だった。
祐衣「やめなさい!!」
祐衣が、スマホを向けながら増井に向かって叫ぶ。
祐衣「今までのやりとり全部動画撮ってるよ」
増井「あぁ!?なんだお前?」
祐衣「今すぐここから消えなさい。そうしないと今度はこの動画をSNSで拡散するよ。そして警察に電話する」
はじめ「祐衣!やめろ!」
祐衣「そうしたらあなたは一生社会では生きていけなくなる。そして警察に捕まる、殺人未遂の犯人として、一生犯罪者として扱われる。そうなったら大好きなお父さんやお母さんは今以上に苦しむ事になるんだよ。今あなたが、今後はじめの前に2度と現れないって約束して素直にこの場を立ち去らないと、私はこの動画を拡散する」
増井「くそっ!!」
増井はそう言い残して、その場から走り去った。
はじめ「祐衣!何であんな危ないことしたんだよ!お前まで刺されかねなかったんだぞ!!」
祐衣に対して怒るはじめ。
祐衣「ああでもしないと、はじめがあの人に暴力を振るうと思ったから」
はじめ「当たり前だろ!?相手はナイフ持ってたんだ!それに、今度こそ半殺しにしてやれた!今の俺の力なら、絶対に全身麻痺にでもしてやれたんだ!」
すると祐衣ははじめを叱責した。
祐衣「ダメ!!はじめの手をそんな事で汚させない!!私の命に変えても!!その手は、沢山の人に希望を与える手。希望に満ちた手なの!!その手を汚すことは、私が絶対に許さない!!」
はじめ「!!祐衣……」
はじめは驚いた。祐衣がここまで怒るのは小学生の時以来のことだったからだ。
祐衣「はじめ、YU-TOとYU-TOの弟さんとの約束、忘れたの?世界一カッコいい男になってYU-TOの夢を継ぐって約束。一時の感情と強がりでその約束破る事になるところだったんだよ?そんなのは絶対にダメ」
そして祐衣ははじめの背中を優しくさする。
祐衣「もう無理しなくていいんだよ」
するとはじめは急にブルブルと震えだし、その場に座り込んだ。
はじめ「こ、こ、怖かった…怖かったよぉー!」
そして子供のように泣き叫んだ。
実ははじめは、めちゃくちゃビビりだった。
ナイフを持って襲われた時、失禁しそうなほどの恐怖だったが、平然を装い格好付けてただけだったのだ。
祐衣の優しさに安堵し、緊張が解けたことで一気に素直な感情が爆発した。
祐衣「偉かったよ、はじめ。よく我慢したね」
祐衣は、優しくはじめの頭を抱きしめた。
慎太郎「やっべー、アイツにオイルとストッキング止め返すの忘れてたよ!」
慎太郎は慌てた様子ではじめの家へ向かう途中で顔をゆがめながら足を引きずる増井とすれ違う。
慎太郎「…ん?あれってたしか…まぁいいや」
はじめの家に近付くと、大破したバイクから放たれる異臭に気が付く。
慎太郎「うわ、くっせぇ!何だよこれ!」
そしてはじめの家の方を見ると泣き崩れるはじめと、はじめを抱きしめる祐衣の姿があった。
慎太郎「どういう状況だよ…」
いおこ「本当、何があったのかしら」
慎太郎「わぁ!おばさん、何してんの?」
いおこ「パートの帰りよ。今帰ってきたら壊れたバイクがそこにあって、家の前ではじめを抱きしめる祐衣ちゃん…情報が多すぎて整理できないわ」
慎太郎「俺も今来たんだけど、同じ気持ちだよ…」
いおこ「まぁ、このままにしておくわけにもいかないし、2人に話聞きましょうか」
慎太郎「…そうだね。あ!おばさん、これはじめに借りてたの返しに来たんだった!忘れちゃいそうだから、おばさんに渡しとくね」
いおこ「あぁそうなのね。わかったわ」
2人がはじめと祐衣に近付くと、祐衣がはじめを抱きしめながら気付く。
祐衣「あ、おばさんと慎ちゃん?どういう状況?」
いおこ、慎太郎「それはこっちのセリフ!」
いおこ「まぁ、一回家に入りなさい。こんなところでそんな事してたら、周りに変な目で見られちゃうから…ほら!はじめもいつまでも泣いてないで、早く家入って説明してちょうだい!」
家に入り、祐衣が状況を説明しながら撮影した動画を2人に見せる。
いおこ「そんな事があったの…」
慎太郎「そういうことか、実はさっきすれ違ったんだよ、足引きずってるアイツと。今すぐ捕まえてくる!」
祐衣「暴力はダメだよ!慎ちゃん!」
慎太郎「わかってる。でもバイクの処理もさせないといけないし、このまま逃がして全部水に流してたら、今度は祐衣ちゃんが狙われかねないよ」
いおこ「それもそうね。でも慎太郎君1人だと危険だから、うちの主人にもおねがいしましょう」
するとタイミングよく宗一郎が帰ってきた。
宗一郎「おい、家の近所でバイクが大破してたぞ!何なんだ!あれは!」
いおこ「ナイスタイミング!」
慎太郎「おじさん!今は何も言わずに黙って俺と一緒に来て!」
宗一郎「え?今帰ってきたところなのに?」
慎太郎「いいから早く!」
宗一郎と慎太郎は急いで増井を探しに行った。
すると近くの公園のベンチにへたり込む増井がいた。
慎太郎「増井!テメェ!ちょっとこっち来い!!」
慎太郎は怒りながら増井の服の襟を掴み、増井をバイクの前まで連れてきた。
慎太郎「これ、どうすんだよ」
宗一郎「君は、たしか……思い出したぞ!お前かぁ!何しに来たんだ小僧!まさか逆恨みで襲いに来たっていうんじゃねぇだろうな!?あぁ!?だとしたら、ただで帰れると思うなよ!」
宗一郎は今までに見たことがないぐらいの怒りを見せる。
宗一郎「大人なめてんじゃねぇぞ!小僧!!」
すると宗一郎は増井の右手にある、ナイフに気付く。
宗一郎「何だそのナイフは?そんなもん、こうしてやるよ!」
宗一郎はそのナイフを増井から奪い、そのナイフを拳で一撃で砕いてみせた。
宗一郎「さぁ、次は何だ?ピストルか?あぁ!?」
宗一郎の恫喝に完全にビビり倒した増井。
宗一郎「もしはじめと祐衣ちゃんといおこに近づいてみろ、次にあのナイフみたいになるのはお前だぞ?捕まって罪が消えると思うな、どこまでも追いかけてお前をあの姿に変えてやる。わかったか!小僧!」
増井は恐怖のあまり、その場で失禁した。
宗一郎「よし、じゃあ、君はあのバイクを持ってさっさと帰りなさい、今すぐ」
増井「あ。あ、でも、足が、その」
宗一郎「あぁ?見逃してやるって言ってるんだよ、素直に聞けないのかお前?」
増井「は、はい、何とかして帰ります…」
足を引きずりながら大破したバイクを何とか押して帰ろうとする。
宗一郎「あぁ、気をつけて帰るんだよ」
慎太郎「おじさん…キャラ変わり過ぎだよ…」
宗一郎「そうか?まぁあれだ、息子がいじめられたら、父親は強くなれるって事だ!」
そして帰宅すると心配した祐衣といおこが、2人を迎える。
いおこ「あなた!慎太郎君に怪我させてないでしょうね!?」
慎太郎「あぁ、何もされてないよ」
祐衣「アイツは?」
宗一郎「ん?軽く説教したら、バイク持って帰ったぞ。それから2度と祐衣ちゃんとはじめに近付かないとも言ってたな。そう言えば、祐衣ちゃんと慎太郎くんは、飯食ったのか?まだなら家で食べて行きなさい。母さん料理上手いんだぞ」
祐衣「知ってるよ。じゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」
慎太郎「あ、俺も!」
こうして、はじめは無事にトラブルを回避することができたのだった。




