第7話「王都グランフェスト開幕!料理人たちの戦場」
ついにたどり着いた王都フェルガルド。
美しい街並みの中心にそびえるのは、調理のためだけに建てられた巨大コロッセオ──その名も《キッチン・コロッセオ》。
年に一度、料理人たちが技と魂を競い合う【王都料理闘技祭】の幕が上がる。
「ここが……料理人の、戦場」
王家直属の料理審査官、聖騎士、王族、さらには神官までが審査員に名を連ね、世界各地から集った猛者たちが自慢の一皿でぶつかり合う。
そして今年は、例年とは違う“特別ルール”が追加されていた。
「料理は戦闘中に行うこと」
つまり、料理人は襲い来るモンスターや対戦相手の妨害を受けながら、限られた時間で料理を完成させなければならない。
初戦、ユウトの対戦相手は──《毒薔薇の料理人》ヴェール・アマリリス。
漆黒のドレスを纏い、毒草と猛獣肉を自在に操る料理魔導士。
「料理は美と死の狭間に咲く薔薇……あなたには、まだ香りが足りないわ」
対決テーマは【毒性モンスター×調理回復効果】。
使われる魔物は、猛毒を持つ《ヴェノムイール(毒蛇イノシシ)》。
ヴェールは華麗な魔導包丁さばきで、猛毒の肉を使い、**“猛毒カルパッチョ with 漆黒ソース”**を完成させる。食べると逆に体内の毒素が吸い出され、快感すら覚える危険な料理。
一方ユウトは、素材の毒を打ち消すどころか、**“毒を味方につける”**調理法に挑む。
「毒は確かに危険だ。でも、それも“命の一部”なら──一度、受け入れてやる」
ユウトが作り上げたのは、“毒蛇と薬草のスモークハーブロースト”。
焦げ目から立ちのぼる香りは、毒と薬の境界を曖昧にし、食べる者の体内のバランスを調律するという“毒の中和料理”だった。
「これは……毒が、調律されていく……!? この味は、まるで──赦し……?」
審査員たちは衝撃を受け、結果はユウトの勝利。
だがヴェールは微笑みながらつぶやく。
「覚えておいて。料理人の戦場には、“殺す料理”すら存在することを」
背後では、大会の黒幕アルカスがつぶやく。
「始まったか……“料理による進化”の兆しが。だが、このままでは神の厨房に辿り着くことはない」
王都の闘いは、まだほんの“前菜”にすぎなかった――!
◆ヴェール・アマリリス(Veil Amaryllis)
・通称:毒薔薇の料理人(The Poison Rose Chef)
・性別:女性
・年齢:24歳
・出身:南方毒霧の島“フューネリア”
・黒薔薇を思わせる漆黒のドレスと優雅な身のこなし
・毒草・猛毒魔獣を使った“リスキーな高級料理”を得意とする
・魔導調理具《黒薔薇の刃》を使い、毒の分子構造を“調理”によって再構築する技を持つ
・基本は冷静沈着だが、料理中は異様なほど情熱的
・必殺調理スキル:
《ミゼラブル・ヴェノム》:食べた者の身体の毒を逆流させて快楽に変える、超高濃度毒料理。
《ダンシング・スティンガー》:料理中に毒液を刃先から飛ばして相手の集中力を削ぐ。