第4話「騎士はステーキに涙する」
ユウトとルミナは、旅の最中、焼け野原に座り込むひとりの男と出会う。
黒い鎧に傷だらけの剣──その男の名は、グレイス・ヴァルド。王国騎士団に所属していたが、魔物の襲撃から民を守れず、すべてを失い、剣を折った男だった。
「もう俺には守る価値などない。戦う意味もない」
彼は自暴自棄になっていたが、ユウトは言う。「だったら、食ってから絶望しろ」
魔物“牙猪”を狩ったユウトは、焚き火で分厚いステーキに仕上げる。香ばしい香りが森を包み込む。
ひとくち。
グレイスの目から、ぽろりと涙がこぼれた。
「……まだ、こんなに温かいものが、この世界にあったのか……」
ステーキには、体力だけでなく“心の回復”効果も宿っていた。料理は、命だけでなく心にも触れる――
彼は剣を握り直す。「この力、お前の料理を守るために振るおう」
こうしてユウトたちは、料理人・魔導少女・剣士という異色の冒険パーティを結成する。
その背後、王都では“禁じられた料理大会”の準備が進んでいた。
開催者は、謎の料理貴族──かつて神の厨房を奪おうとした“堕ちた料理人”の末裔。
王都・竜の肉・料理で競う闘技場。
そして迫る、“神獣との再会”。
ユウトの料理は、ついに神と対話する段階へ――