第22話「失われた記憶の料理本」
王都図書院・封印区画《カロリスの書架》
ギルとの激戦から一日後。
ユウトは王都中央にある巨大図書館の奥深く、封印された区画へと足を踏み入れる。
サーシャ「そこには“料理で記憶を写す”という、古代の魔法料理本があるって……」
ユウト「セリオに似たあの子……あれは幻なのか?
それとも、まだ俺は何かを忘れているのか──」
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封印管理者・ヘルミナ(料理記録魔術師)
ヘルミナ・グレム
・王都に仕える料理記録術師
・“料理と記憶”を繋ぐ魔術を扱う老魔女
・かつて、セリオと面識があったと語る
ヘルミナ「お前が……セリオの弟か。懐かしい顔だ。
あの子は、“記憶を料理に刻む”研究をしていたんだよ」
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封印された魔道書の中に、セリオの手による一節が残っていた。
「料理とは、過去と未来をつなぐもの。
誰かを想って作った一皿は、きっと時空を超えて心に届く──」
「もし、私がいなくなったら──
この料理本を、ユウトに託します。
彼が、笑って料理を続けられるように──」
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ヘルミナが語る。
セリオは現世で死の間際、「料理に自分の記憶の断片を封じる魔法」を発動していた。
そして──
その記憶は、転生の流れに乗って、ある少女の中に宿った。
少女の名:セリーナ=アリア
・王都で孤児として育てられた
・幼いころから、“ユウト”という名前を自然に口にしていた
・現在、王都孤児院の調理係
ヘルミナ「記憶は完全ではない。でも……彼女は、間違いなく“セリオの味”を持っている」
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ユウト「だったら……もう一度、あの味を届けたい。
セリーナに……“本当の私たちの味”を──」
ユウトは《メモリ・レシピ》を手に、封印区画を後にする。
その背に、静かに響くセリオの声──
「……ユウト、料理を……続けてくれてありがとう」
外伝短編「最後の味、未来へ」
登場人物:
・セリオ・アリア(ユウトの姉、天才的な料理魔導師)
・ユウト(少年期)
・セリオの師・クラヴィア
・神の代弁者(転生調律者)
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──その夜、世界が崩れかけていた。
世界各地で魔素の乱流が発生し、《大災の口》と呼ばれる空間歪曲が暴走を始めていた。
原因は人間の“記憶と魔素”の結びつきの歪み。
そして、セリオは知っていた──それが「自分」に起因していることを。
クラヴィア「お前の持つ“記憶転写の魔術”は、まだ世界に早すぎた……だが責めはせん。お前は、未来の味を創ろうとしただけだ」
セリオ「……ユウトを、巻き込んではいけない。あの子だけは、料理を、笑って作れる子にしたい」
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雨の夜、セリオはユウトと最後の食卓を囲んでいた。
ユウトは気づかない。姉が、永遠に去る準備をしていることに。
ユウト「今日のスープ……やけに優しい味だね」
セリオ「ふふ。お姉ちゃんの“いちばん大切な味”だからね」
静かに、テーブルに一冊の魔導書が置かれる──《メモリ・レシピ》。
セリオは、自分の想い出・知識・笑顔、そしてユウトへの手紙をすべて“料理の形”で記録した。
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その夜、セリオは一人、異界の空間に呼ばれる。
そこにいたのは《ゼルヴァ》──“転生と記憶”を司る神の代弁者。
ゼルヴァ「お前の記憶は、世界を壊すほど強い。
よって、このままでは“転生”は許可できない」
セリオ「ならば、記憶を切り離して。
私は、“味”に変えて残す。それで十分──
あの子が、私のことを思い出さなくても……笑って生きてくれるなら」
ゼルヴァは問う。
「お前は、弟の記憶からも消えることになる。
存在すら──“無かったもの”になるかもしれぬぞ」
セリオ「それでもいい。
あの子の“料理人としての未来”さえ守れるのなら──それで、いいの」
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セリオは、自身の魔力の核を《メモリ・レシピ》に転写し、魂の一部を料理の記録へと封じ込めた。
その瞬間、彼女の姿は光と共に霧散し、記憶はすべて削がれていく。
ただ──“味”だけが、時を超えて残った。
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その後、セリオの魂の欠片は、転生の流れに乗って
王都の孤児・セリーナに辿り着く。
彼女が作るスープに、誰もが「懐かしさ」と「優しさ」を感じるのは──
その味の奥に、セリオの“最後の願い”が息づいているから。
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セリオ「料理は、心を残せる魔法。
だから私は、“ユウトの未来”を信じて、この味を託すよ──」




