第17話「焰腸のカトブレパスと、肉料理の真理」
《グレイザス聖味帝国》の中心都市・ガルゼアに突如、黒煙が立ち上る。
神殿の地下から咆哮が響き、地鳴りとともに地面が裂けた。
教皇ザルミオン「目覚めよ、神獣──《焰腸のカトブレパス》。
お前の“怒りの胃袋”を満たせる者が、この世にいるか試してみよ」
その瞬間、炎とともに顕現したのは、地獄のような姿をした巨大な獣神。
神獣《焰腸のカトブレパス》
・肉を喰らうことで自己を強化し、周囲の「食欲」を狂わせる
・呼吸は火炎、体内は超高温の“焼却炉”
・“欲望”で調理された肉しか受けつけない
⸻
街が混乱に陥る中、ユウトは神獣の出現を知る。
同時に、ザルミオンから通告が届く。
ザルミオン「この神獣を“満足させられなければ”、この都市は焼き尽くされる。
我らが試すは、お前の料理の“暴力性”だ」
リオナ「どうするの? あんなの、肉ですら焼けるの……?」
ユウト「……焼けるかどうかじゃない。“満たせるか”どうかだよ」
⸻
神殿の祭壇。
ユウトはただ一人、神獣と対面する。
目の前には巨大なカトブレパス。
その口元には焼け焦げた肉、かじられた骨、焼き切れた料理器具の山。
カトブレパス「満たせ。満たせ。満たせ。
欲望こそが料理。怒りこそが味。
それを知らぬ者に、食を語る資格などない」
⸻
ユウトは、焰をまとった神獣の前で、恐れず鍋を取り出す。
だが彼の料理法は意外にも──“弱火”。しかも“長時間熟成”。
ユウト「お前がほしいのは“焼き尽くす料理”じゃない。
本当に満たしてくれるのは、“怒りを鎮めてくれる味”だろ?」
彼が仕込んだのは──
《和牛すね肉のゆっくり煮込み ~旨味封じ焼き~》
・極厚の肉を低温で10時間煮込み、コラーゲンと旨味を抽出
・外側を軽く焰であぶることで、香ばしさと“焼き”の快感を加える
・最後に“柑橘香味ソース”で清涼感を加えることで、“怒り”を洗う
⸻
神獣は肉をかじり──初めて、静かになった。
巨大な身体が震え、熱を放つ目がゆっくり閉じていく。
カトブレパス「……腹が……落ち着いた……
火も、怒りも、空腹も……満たされた……」
カトブレパス「貴様の料理……我の“暴食”を“調和”に変えた。封印を託そう……」
ユウトの包丁が光を放ち、神獣の胸に封印が刻まれる。
第六神獣、封印解放──《焰腸のカトブレパス》、鎮静完了。
⸻
ユウトの勝利に、ザルミオンは沈黙していた。
だがその目は、静かに燃えていた。
ザルミオン「料理とは、技術でも精神でもない。“国家”だ。
貴様の料理が革命を起こすというのなら……
次は我が王国全土を、貴様の皿に乗せてみせよ」
そして彼は、中央王都で開かれるという伝説の料理大会──
《世界料理戦》への招待状を投げ渡す。




