第16話「料理宗教と、味覚支配国家の陰謀」
東方の大陸に足を踏み入れたユウトたちは、空気の異変に気づく。
街全体から“香辛料”のような強烈な匂いが漂い、すれ違う人々の目は、妙にどこか「無感情」だった。
リオナ「ここ……なんか、変。匂いが強すぎるし、食堂の客が、全員同じメニューを食べてる……」
ユウト「味覚が“統一”されてる……?」
それは「自由な食」が許されない国家《グレイザス聖味帝国》──
料理によって民を支配する、異端の宗教国家だった。
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帝都に入ったユウトたちは、“異邦の調理者”として拘束されかける。
だが、現地に潜入していた《調味師団》のスパイ、エンジ・バルクに救われる。
エンジ「ここでは、《神の味覚》しか認められてねぇ。
胡椒、塩、酢……すべて“比率”が定められてて、それ以外は“異教徒”扱いだ」
ユウト「それじゃ……料理人は、ただのロボットじゃないか……!」
この国の人々は皆、《聖味舌》という呪具を舌に埋め込まれており、
味の「好み」を支配されていた。
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料理神殿の最上階。
《教皇ザルミオン》は玉座に座りながら、異邦の料理人を睨みつける。
ザルミオン「味覚とは罪である。自由は毒である。
民の平和は、“神の味”によってのみ保たれる」
ユウト「味覚は感情だ。支配していいもんじゃない!」
ユウトは堂々と異を唱えるが、ザルミオンは言い放つ。
ザルミオン「ならば証明してみせよ。《聖味大審問》にて、貴様の“自由の味”が、我らを超えるか──」
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審問とは名ばかりの、料理バトル大会である。
ただしルールは異常──
•制限食材:使用可能な調味料は3種まで
•審査員:全員《聖味舌》を埋め込まれており、既定の味覚しか受け入れない
•一度でも“異なる味”を出せば即失格
エンジ「不利だ。奴らの舌は“調教済み”だぞ」
ユウト「……だからこそ、俺は“封じられた味”を蘇らせてみせる」
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ユウトは発酵技術を駆使し、調味料ではなく“素材自体”から旨味を引き出す。
ユウト「調味料が使えないなら……素材と“時間”が調味料になる!」
リオナ「うわ……この香り、なんか、懐かしくて涙が出てくる……」
完成したのは──
《大豆麹と根菜の旨味熟成シチュー ~時間のスパイスで~》
神官たちの舌が震え、誰かが呟いた。
「……私、こんな味……思い出せない。けど、懐かしい……」
「味覚が、自由に……解き放たれていく……!」
《聖味舌》が砕け、審査員たちが涙を流す。
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ユウトの料理が、支配の構造を破った。
だがザルミオンは静かに笑う。
ザルミオン「おもしろい。貴様の料理は“魂を揺さぶる”。だがそれは……次の神獣を目覚めさせる鍵でもある」
ザルミオンが去った背後には、神獣の石像が現れる。
その名は──
《焰腸のカトブレパス》──
怒りと暴食を司る、灼熱の肉食獣神




