第12話「屍の谷と、不死の調理法」
神獣第二の封印――それは「死を司る者」。
封印が解かれたのは、王都から南に広がる《ネクロヴァレイ(屍の谷)》。
大地は腐り、空は黒く染まり、死したはずの獣や人が蠢いていた。
その中心で玉座に座るのは、神獣《屍王グラドロス》。
全身を骨と腐肉で覆い、七つの口で“死肉の歌”を歌う神獣。
彼が発する瘴気は、あらゆる食材を「腐敗」に変えてしまう。
「調理? 命の無駄だ。全ては腐る。それが救いだ」
屍王に付き従うのは、元・王都料理大会出場者だった死肉調理師アゾルド。
彼は大会で不正により追放された元天才であり、現在は“死んだ料理”を創造している。
「これが……不死のグリル《ネクロブレイズ・カルネ》! 永遠に腐らぬ死肉よ!」
死を味に変える料理バトルが始まる中、ユウトたちは決断を迫られる。
「この土地すら食材にならない……命が、存在しない……!」
その時、ユウトはふと、村で出会った老婆の言葉を思い出す。
「“命”とは、“記憶とぬくもり”の味よ」
そこでユウトはひとつの素材に着目する――《遺灰蘇芳》。
死者の記憶が染み込んだ花びら。それをベースに彼は、ある調理を始める。
包丁が宙に踊る。
火は使わない。代わりに記憶と祈りを練り込む。
完成したのは――
《想いのリゾット・終焉の花仕立て》
香りは懐かしさ。
味は胸に沁みるあたたかさ。
亡き人の声が届くような料理。
それを口にした死者たちは、魂を思い出し、静かに消えていく。
そして屍王もまた、七つの口でつぶやく。
「かつて……私も、食卓で笑ったことがあった……か……」
神獣《屍王グラドロス》は、静かにその巨体を崩し、料理とともに“安らぎ”の味へと変わった。
第二の封印、解除。
しかし、その瞬間。
空が裂け、アルカスの影が現れる。
「死を越えた料理人……次に君が出会うのは、“時間を遡る魚”ヴォルフィッシュだ」
そして、アルカスはこう告げる。
「君が料理するたびに、“世界のかたち”が変わっている。気づいているか?」
死肉調理師アゾルド(Azold the Necroculinaire)
名前:アゾルド・ベリュクス(Azold Beryux)
年齢:38歳(見た目は30代前半だが、寿命を“止めている”)
身長:186cm
出身地:王都・裏区画
所属:王都料理ギルド“金の匙” → 追放
現在の立場:屍の谷にて、神獣《屍王グラドロス》の側近・信奉者




