表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/50

第11話「風の声を聴く者たち」

「卵の中に……入るってどういうことだよ!?」

戸惑うグレイスに対し、ルミナは淡々と告げる。


「これは“記憶調理”――神獣が抱く記憶の迷宮に入り、その“味”を理解する試練」


《空喰いの竜卵》の周囲に結界が張られ、ユウトだけがその中へと入る。

包丁を媒介に精神を卵へ重ね、彼は“空の記憶”へと意識をダイブさせる。


目を開けると、そこは「空しかない世界」だった。


雲も地平もない真っ白な世界に、ただ一人、小さな竜の子供が浮かんでいた。


「あなた……食べに来たの?」


竜は幼い声で言う。だがその眼には、無限の空を喰らい続けた“孤独”が宿っていた。


「誰も……ぼくに味を教えてくれなかったんだ……」


神獣・空喰いの竜は、本来“空を味わう”ことで世界の呼吸を調律する存在だった。

しかし、空を“味わう方法”を忘れ、やがてただ“喰らう”存在に変わってしまったという。


ユウトは彼に言う。


「なら、俺が“味”を教えてやる。料理人のやり方でな」


しかしその直後、竜は暴走を始める。

空の記憶が暴風と化し、ユウトを飲み込もうとする。


ユウトは《風聞ふうぶんのナイフ》を精神世界で召喚。

空気中の“音”と“香り”を刃に変える調理技で、記憶の暴風を切り裂いていく。


戦いの中でユウトは、小さな風の泡を見つける。

そこには、竜が最初に空を食べた日の記憶があった。


「風って……おいしいなぁ……」


その純粋な声に、ユウトの手が止まる。


「そうだ。お前は“喰う”んじゃなくて、“味わいたかった”んだな……」


ユウトは精神の中で一皿を作り上げる。

それは――


《空のスフレ・メレンゲ仕立て》


空の香り、風の流れ、記憶の優しさをふんわりと閉じ込めた、究極の軽量料理。


一口食べた竜は、涙を流して言う。


「これが……空の、味……」


竜の姿は光となり、卵の形に戻って眠りにつく。


目覚めたユウトを待っていたのは、仲間たちの歓声と、調律された空。


「空が……澄んでる。呼吸が、気持ちいい……」


こうして、第一の神獣封印《空の竜》の調理試練は、成功を迎えた。


だがその陰で、アルカスはつぶやく。


「1体目……君はやはり“神の選定者”か。ならば次は――**死を司る神獣“屍王グラドロス”**を目覚めさせよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ