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先生と空虚。

作者: 桜谷本井

今日、先生の夢を見ました。僕の学校の職員室に先生がいました。もうろくに学校には行っていないのに、学校の夢を見ました。先生に会いたくなりました。先生が僕の学校にいれば今度こそ毎日職員室に通います。本当は2人で会いたいけれど、先生は断るでしょうから僕は誘いません。誘わなければ断れないから。



ところで今日見た夢は先生と車に乗っていました。僕は助手席でした。黒い車でした。いつも先生が乗っていたやつ。ちょっと古くてかっこいいやつ。



先生授業でもよくお子さんの話をしていましたね。僕と1個違いの息子さんの話。大切そうに話すのが羨ましくて、どんな子なのか知りたくて、人1倍耳を済ませてました。奥さんの話は聞いたこと無かったけど最後まで聞けませんでした。聞いたところではあったけど。




本当はもう少し話したかったです。少しじゃ足りないかもしれないけど。13歳がずっと続いていれば良かったのに。


先生の授業を受けて。いっその事あの人なんて知らないままで。僕には片想いが精一杯でした。




先生を嫌いな人達を、僕はいっぱい知っていました。それでも僕は教えませんでした。きっと先生は知っていたのでしょうけれど、それでもやっぱり言いませんでした。


僕はきっと好きでした。でも先生は僕に興味がなさそうでした。「僕」だから。それでも特に思うことはなかった。先生の考え方を知れれば充分でした。僕に興味を持ってくだされば喜んだかもしれないけど、今も結構喜んでいるのでどっちでもいいです。




先生はきっと話しかけられるのを待ってくれてました。僕には話かける勇気なんてなかった。もし聞いたら先生は答えてくれていましたか?好きって何か。好きなのに一緒にいたくないと思っちゃうよく分からないモヤモヤの名前。先生なら教えてくれましたか?


先生になら聞けそうな気がしたんです。






気づいたら僕はハタチでした。大人になってしまいました。先生に子ども扱いを受けていた日々ばかり思い出すのに、気づいたらもう成人式です。お酒も飲めるようになりました。先生は今もまだ「先生」をしていますか?どれ程沢山の生徒を持ったのでしょう。その中で僕は何分の1でしたか?きっと先生はあやふやか、すっかり忘れてしまった頃でしょう。それでも僕の記憶は鮮明です。



困るほどに鮮明です。この記憶は、いつになればあやふやに変わるでしょう。お酒を飲みました。記憶を無くせるという噂を聞いたからです。視界は揺れてきました。先生のこと、あと何分経てば忘れますか?



僕は忘れられません。先生じゃない人をです。泣きじゃくる僕の服を脱がす、あの最悪な人をです。忘れられません。違う、離れられません。あの最悪な人をどうしても僕は愛しています。どうすれば離れられるのでしょうか。どうすればあの人のことを考えないようになるのでしょうか。あの人なんか知らないままで、大人にならないままで、先生を眺めている日を過ごしたかった。



助けてください。助けてください。僕を助けるのは先生なんでしょう。どうか僕を助けてください。先生にならできるんでしょう。どうして、あの人よりもそばに居たい人のままで居てくれなかったんですか?どうして、僕はもうハタチです。

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