六
と、いうかそもそも、あいつは最初に会った時から“変”だった。
見た目の話じゃねぇ。
いや、見た目も、なんだが。
何よりも、その雰囲気が、だ。
そう、あいつの変な見てくれのことなんざ、気になんなくなるくれぇの、違和感。
おそらく天子様にも勝るだろうその“天皇”たる威厳。
目が合っただけなのに体が痺れて動かなくなりそうなほどの、殺気にも似たその威圧感。
笑っているはずなのに何故か“無”に見えるその表情。
そして、誰よりも澄んでいるように見える、天色の瞳の奥に密かに巣喰っている“闇”。
……俺ァ、その“闇”を知ってる。
この“闇”は俺らにとって身近な“闇”だからだ。
――――こりゃあ、“人斬り”の目だ。
――――じゃあコイツは一体、何者なんだ?
――――公家なのか?
――――……誰かの落胤なのか?
――――…………それとも、ただの人斬りなのか?
“それとも――――――”
目が合うだけで冷や汗が出るなんざ、今まで経験したことがねぇ。
初めて殺されそうになった時でさえ、こんな身がよだつほどの恐怖を感じたことなんざかった。
“――――――得体の知れねぇナニカなのか?”
アイツの金色の瞳の中を覗くと、まるで御伽噺に出てくる龍の前で一人、対峙しているかのような。
そんな気持ちになる。
誰よりも美しく、尊く、血の味なんざ、穢れなんざ、ひとっつも知らねぇような顔をしてるっつぅのに。
確かに、人斬りの顔が垣間見えるのは何故なのか。
俺ァそん時、初めて本物の恐怖ってぇのを味わった。
―――――あの総司ですら、取り乱しそうになるほどの、恐怖。
実際、時雨の首の皮を一枚切って血を見たところで正気に戻ったみてぇだったからな。
そしてその疑問は時雨本人が説明してくれたおかげで解けたのだが。
俺が予想していたのがすべて合っていたとは思わなかったがな。
そう、あいつは公家であり、天皇の御落胤であり、そして人斬りでもあった。
それを聞いて納得した。……いや、納得せざるを得なかった。
あんな不思議な雰囲気を感じたことは今まで一度もなかったからな。




