五
土方side
我々一同はすごく驚いている。
芹沢達ですら、驚いている。
それはそれは、もう。
物凄く。
天と地がひっくり返るほどに。
あァ?なんでかって?
そりゃあ……
―――時雨が、笑ったからだ。
いや、前からちゃんと笑ってはいたんだぜ?
そりゃあもう、
笑ってねぇ時はねぇくれぇに、な。
いや、泣いてもいたがな。
あれは、今まで貯めてきた分の涙だったんだろう。
そんくらい、あいつは泣いてたが。
それまでは、ほんとにずっと、笑っていた。
けど、その笑顔は……
昔の総司の……総司がまだ、“宗次郎”だった時の笑顔に、凄ぇ似てたんだよ。
だから、俺ァ分かる。
あれは、嘘の笑顔だって、な。
俺ァあの顔が嫌ぇだ。
辛えのに辛えと言わない、
ほんとは寂しいくせに寂しいと言わない、
苦しいくせに、
痛えくせに、
『助けて』すら言わねぇ、
あの顔が。
最初は総司のことが苦手だった。
もはや嫌ぇですらあった。
いじめられてほんとは痛くて辛くて周りに助けて欲しいくせにいつもニッコニコヘラヘラして。
人形みてぇで気味が悪くて仕方ねぇ。
そんなやり返しもしねぇやつなんざ、ここにいても意味がねぇとも思ったさ。
なんでここに居るんだ?ってな。
けど、俺ァある日見ちまった。
アイツが寺の端っこで一人泣いてるとこを。初めて。
そう、初めて、だ。
そん時、俺ァ自分が恥ずかしかった。
アイツは、意味もなくニコニコヘラヘラしてたんじゃねえ。
ましてや人形なんかじゃねぇ。
我慢してたんだ。ずっと。
まだ、自分じゃ大きいやつらに勝てねぇから。
自分が、強くなるまで。
同じ人間だけど、どこか人間じゃないと思ってだんだろうな、俺はよ……
そうだよな、たとえどんなに気味悪かったとしても俺らが、アイツを守らなきゃなんねぇだろうが。
ちびっ子一人守れねぇでどうすんだ。
いい大人がよ。
そう自分を叱った。
それから、きちんと謝った。
謝って許されるとは思ってねぇ。
今まで庇わず見て見ぬふりをしていたんだ、
許されなくても構わねぇ。
殴られたって構わねぇ。
そう、思っていたが。
宗次郎は、そんな言葉を言われるとは思っていなかったらしく、初めて、俺に本物の笑顔を見せた。
太陽にも負けねぇくれぇ眩しい笑顔だった。
それから宗次郎はどんどん強くなって、此処じゃもう誰も勝てねぇくれぇ強くなった。
……俺も中々勝てねぇ。
その頃にはダチが増えたのか、きちんと笑うようになった。
俺ともよくつるんでくるようになった。
そして、時々いじったり、嫌がらせをされたりする……が。
そのことが、俺ァ無性に嬉しかった。
だから、時雨の笑ってる顔をみて、あの頃の総司を見てるみてぇですっげぇ嫌だったんだ。
……が。
そんな時雨が、
初めて、
あの時の総司の笑顔みてぇな、
太陽顔負けの、眩しい笑顔を浮かべた。




