一
時雨は……いや、龍族は、興奮したり、気分の上がり下りが激しい時、強い喜、怒、哀、楽……特に怒と哀に反応しやすく、瞳孔が縦に割れる。
それも、ただの割れ方じゃ無い。
猫や狐などのような割れ方じゃ無いのだ。
まず、目が少し淡く光る。
そして瞳孔も光るのだが、その光の色が黒で、しかも光が長い。
眉毛の少し上のところから目の中心を通り、頬の上の方まで黒く怪しく光っているのである。
しかも目が両方金色になるのだ。
つまり、龍人化した、と言うことだ。
なのでもちろん、鱗が生えるなんていうこともあるわけで、時雨の左頬の下らへんに二枚、右寄りのおでこに小さいのが一枚と、中位のが一枚ずつ、そして喉に六枚ほど鱗があり、まるで真ん中の逆さの鱗を守るような形に生えている。
その真ん中の逆さの鱗というのは龍の逆鱗……つまり、触ったらやばい。
多分。
触られたこと無いからわからんけど。
完全な龍人になったら耳は魚のヒレのような感じになり、爪が伸び、角が生え、足が獣やそれこそ龍のようなそれになる。
ただ、完全な龍人になるには意識をしなければならないのでそこだけは安心だ。
そして……
「し、時雨……?どうしたの、その姿……」
総司さんに言われて私は初めて気づいた
「……え?」
「目が……光ってるよ?それに、鱗が……」
今、自分が龍人化してるってことに……
「あ、ごめんなさい!!!つい……!!やばいな、こんくらいで龍人化してしまうとは……」
それも厄介なことにこの龍人化、自分ではいつなったのか中々気が付けないのだ。
しかもいつもは龍人だとバレないように振る舞っていたため、こちらでは大丈夫だからと警戒心が薄れていた……!!
「ごめんなさい、鱗が、っ生えてるとか、気持ち悪い、……ですよね、っごめんなさい……あと、しばらくは治らないと、思います……っ、ごめんなさい…………、嫌いにっ、ならないで……っ……ごめんなさい……っ、ごめ、なさい……ごめ、なさ…………っ」
「「「「時雨??」」」」
時雨の瞳には光がなくなっていた
カタッ……スタッ
「時雨は、誰に謝っとん?」
上から降りてきた烝さんにそう、問われる
「え……?」
誰に……?私、誰に謝ってるんだっけ……?
「や、山崎……!?」
す、すむ、さん……?
なんで……?
いやだ、
こっちに、こないで……!
烝さんに蔑んだような瞳で見下されたら、
もう、私は――――――
「……っみな、見ないでっ……!!いや、いやだっ……!っおね、がい……見ないで……!
ごめん、なさい!見ないでっ!嫌いにならないでっ……!!ごめんなさい……!ごめん、なさい……!!」
烝さんだけには見られたくなかった。
烝さんにだけは嫌われたくなかった。
他の人たちには嫌われても構わないから。
烝さん、だけには…………
――――あぁ、きっと、もう、だめだ。
……嫌われる。
彼の綺麗な瞳に、私の醜い姿が映り込む。
……あぁ、……醜い、……醜い、なぁ……
こんなの、嫌われて当然だ。
こんな、……化け物。
「なんで、謝るん?時雨は何も悪いことしとらんやろ?」
……なのに、なんで貴方はそんなに優しい言葉を掛けてくれるの?
こんな化け物、嫌われて当然なのに。
……捨てられて、当然なはずなのに。
「……いや、でも……勝手に龍人化しちゃったから……きら、われる??気持ち、悪い、から……たた、かれちゃう、よ……?」
そう言った時、ちらりと頭の隅からのぞいたその顔を思い出す。
あれ、あ、そうか……あの女か……私はあの女に、謝らなきゃ……勝手に……龍人化しちゃったから……殴られる前に……叩かれる前に……
「な、殴られる……?ぁ、あれ……?痛い?痛いの、……いやだ……たす、けて、ぁ、……いやだ、いやだ、いやだ、よ……っ…………っ、痛いの、怖いよ……「時雨……」助けてっ……っぁあ、……ごめんなさい、ごめん、なさい……もう、なら、ないで、す……「時雨」……ら、っか、ら、叩か、ないで……カヒュッ、は、はっ……っは……っ、き、斬ら、っは、っはぁ、は、……はっ……ない、で……!もう、や……!はぁ、はっ、はぁ……っま……っいや、いやだ……っ!!」
過呼吸になる
「時雨ッッ!!!」
ぎゅうっ
気がついたら誰かに抱きしめられていた
番の香りが……私の好きな香りがする……
「時雨、大丈夫や、俺らは殴らんから……!!絶対に……!!嫌いにもならん……!!!!」
『俺らは絶対にお前のことを殴ったりしないっ!!!約束するっ!!!
お前を、大切にするって!!!』
……あれ……?
太陰、様……?
……違う、
太陰様じゃ、ない……?
…………誰、……?
…………あ……れ……?
……烝、さん……?
……どうして、此処に……?
……そういえば、此処って……何処、だっけ……?
「っは、っ、はっ、、はっ……は……すす、む、さん?ここ、は………………あ、そう……か、……ここ、は、……もう、昔じゃ、なかったっ……け……」
そう言ってから私は疲れていたのか、それともこれまでの張り詰めていた糸が切れたのか、意識を手放した。




