三
この人は……
私の、
番だ―――――――
番というのは獣人の特徴の一つで、狼のように、α、β、Ωと性別とは別に分かれている、もう一つの性別のようなものがある。
番は、目が合うと誰が自分の番なのか分かるものらしい。
匂いを嗅いだ時点で薄々勘づいてはいたけれど……でも、人間に反応するかはよくわかんなかったから気のせいだと思って……いたかったんだけどなぁ……気づいちゃったしもう遅いよなぁ……
番持ちになるのはαとΩだ。
βは番が認識できないのかそれとも番になれない何かがあるのかはわからんけど。
βはそもそもあまり存在しない。
私の知る限りでは私のお父様がβだった。
だから妻がたくさんいたんだろうけどね。
βは……なんだったかな、よく思い出せない。
昔、誰かに言われた気がする……
誰だったかな?
あまり、思い出したくない思い出、だった気がする。
……まぁ、いいや。
続き続き。
エルフやドワーフは片翼、っていうのがあるらしい。
ほぼ番と同じなんだそう。
確かαが左翼、βが有翼、Ωが右翼、だったかな?
ただ面白いことに獣人も、エルフもドワーフも、稀にいる番が二人……つまり、一人のΩに二人のαの場合、
両翼と言う、らしい。
「……あの?」
ハッ
いけないいけない、つい顔をじーっと見すぎたらしい。
この人は"人間"だ。
獣人じゃない。
だから私の感情を勝手に相手に押し付けてはいけない。
だって人間には番という概念がないわけで。
前世の頃よく読んでいたラノベは大体、人間は番を認識できていなかった。
だからこそ、期待なんかしてはいけないと自分に言い聞かせるので精いっぱいで。
尻尾をゆらゆらと揺らすのを抑えることはできなかったが。
「すみません……私は一条 蒼月と申します。
よろしくお願いします、山崎さん。」
「うん。よろしくね。……な、あのさ俺のこと烝って呼んでくれない?」
「「「えっ???」」」
え?どっ……?ん?え??急に??
いやそして何で貴方達までそんなに驚いてるんです!?
「え?」
「ダメ……ですか??」
うっ……そのうるうる顔は反則、だよ……
「……っ……普通に話してくれるなら。」
「普通?」
「えぇ。山崎さん、大阪の人でしょう?」
「!?あぁ、そや。って、あ、なるほどな、普通ってそう言うことか」
コクッ
「じゃあ、俺、普通の話し方にするさかい、……あ!蒼月って呼んでええ?」
ドキッ
……し、心臓に悪い……から……
き、急に名前呼ばないで欲しいぃぃ……
「……っ、いい、ですよ」
「やった」
パァァァッとものすごく嬉しそうに笑うもんだからもう私鼻血が出かかってるよ……
「蒼月も、俺のこと烝って呼んでぇな?」
「は、はぃ……」




