テーブルマナーの先生との因縁!?
気合いも充分になったところで!
「ウタカタリーナ」
お母様が急いできた。
「王子様がいらっしゃいましたわよ」
王子様が! もうそんな時間!?
玄関ホール〜
「ウタカタリーナ、来たよ!」
にこやかに両手広げてバーンッて。
「王子様!」
いつもの登場だけど、いつも感動しちゃう。
お母様も。
今回は先生もだわ――
「王子様が、本当にいらしたわね」
先生の声が感動に震えている。
えっへん! とうなずいておこう!
「ご挨拶申し上げますわ。セレナード殿下」
先生は王子様の前に立った。
「私は、ウタカタリーナ様のテーブルマナー講師リーダ•ポプリと申します」
私と初めて対面した時みたいな態度ですわ。
威圧感に王子様も恐怖しているみたい。
「あ、はじめまして。セレナード王子ですっ」
小さくペコリ。
王子様とは思えない挨拶ですわ〜。
先生の目つきも厳しくキラリと光った!
「残念ですわ、殿下」
怯えた弱っちい態度が?
私には可愛く見えるけど!
「えっ、何が!?」
王子様も戸惑ってオロオロして、こっち見た!
先生の側に立ってると一緒に責めてるみたいに思われるわね。
そっと王子様の側に移動して一緒に話を聞こう。
先生は遠い目をして口を開いた。
「私は、殿下のテーブルマナー講師の候補だった過去があります」
そうだったんだ。
私じゃなくて王子様を教えてたかもしれないんだ。
王族を教える立場、なれなかったのは残念よね。
王子様と一緒に納得。
「お城でテーブルマナーをお見せした際、選考員からは講師になる資格は充分あると言われました。ですが、陛下とお妃様に "あなたは怖くて厳しそう" と言われまして不採用となりましたの」
そんなことが……
申し訳ないけど、私も同じ理由で不採用にするかな。
「選ばれた方は、お優しい顔つきで甘いレッスンが得意でしたわ」
チクチクした言い方!
見た目で不採用にされた恨み辛みが滲み出てる!
仕方ないか、私でも恨むもん。
「すみません! 父と母が私に甘くてっ」
王子様も大いに慌ててるわ。
「殿下が謝ることはございません、ただ」
先生は優しい笑顔をみせた。
けど、どこか意地悪さがある!
「殿下のテーブルマナーがどれほど、ご上達なされたか拝見さていただきたいですわ。今後のレッスンの参考にさせていただくためにも」
王子様を立てながらも。
甘いレッスンを受けた甘ちゃん王子様のテーブルマナー、どんなもんか見せてごらんと言いたげ!
「丁度、ウタカタリーナ様と隣国の王族との食事会の件で、テーブルマナーの最終確認をするところでもあります。殿下もご一緒していただけると大変助かりますわ」
そう言われたら断れない!
王子様もそう言いたげに笑って震えながらうなずいた。
「わかりました! 見せます!」
恐怖を振り切ったようですわ。
頼もしい王子様!
「よろしい」
先生も不敵に笑ってうなずいた。
「では、馬車から王族用のカトラリーを取ってまいります。少々お待ちになって下さい」
玄関から出ていく後ろ姿を見送ってと。
二人きりになった静寂が――
「怖かったよ!」
王子様の悲鳴で破られた。
私の肩にしがみついてくっついてきた。
まるで抱きついてこられてるみたいでドキドキ!
「どうしよう! あの先生に見せたら絶対 "こんなテーブルマナーでどうするの? あなた本当に王子様?" とか厳しいこと言われるよね!?」
もう泣いてるよ。
「前世社畜なのがバレたりして!?」
まさか、先生も転生者?
もしそうなら、あの気の強さで甘んじて不採用にされたりしないか。それに、
「バレるなら私のテーブルマナーレッスンでバレていると思いますわ。緊張で前世が出たりしましたもの」
「そっか」
王子様はようやく落ち着いたみたい。
けどまだ、心配そうな表情を?
「ウタカタリーナはずっと、あんな怖い先生にレッスンされてたんだね。大丈夫だった?」
王子様、私の心配を!
「大丈夫ですわ、王子様とお料理を食べるためなら! 厳しいレッスンも耐えられました!」
「ウタカタリーナ!」
ギュッて抱きしめてくれた!
フフ、この日のために頑張った!
「体罰やパワハラされなかった? あの先生いかにもやりそうだよね "フォークの持ち方はそうじゃない! " とか言って、手をビシッて棒で叩いたりとかさ。 されてるなら俺が対処するよ」
私を虐げていた先生が王子様によってざまぁされる。
あるあるな結末だけど残念ながら、いいえ、有り難いことに。
「大丈夫ですわ、先生は厳しいですけど素晴らしいレッスンをしてくださる方です。安心してください!」
嘘偽りない笑顔!
「そうなんだ、よかったっ」
王子様もほっとした笑顔になった。
私の肩からもスルッと離れてく。名残惜しいけど、自分の足でまた力強く立ってくれた。
「俺も堂々と見せよう!」
「王子様のテーブルマナーなら先生を圧倒して唸らせることができますわ!」
「だよね!? なんといっても王子だし。確かに甘いレッスンだったかもしれないけど」
「ちなみに、どんな先生から、どんな甘いレッスンを受けたんですか?」
王子様を甘やかす先生――
ふわふわした優しいお姉さんみたいな先生かしら?
は~い、ナイフとフォークの持ち方はこうですよ〜
手取り足取り教えてるうちに王子様の顔や体に先生の胸が当たったりして!?
まさか、わざと? 先生の真の目的はそれ?
"他にも甘いレッスンしてあげるわ " とか囁いて二人きりの部屋へ……そっちはベッドよ! どんなレッスンをするつもりっ……!
いやああぁ―――!!
王子様は既に奪われていた!?
純粋無垢清純可憐な私には耐えられない!
最低最悪な刺客による大人の "ざまぁ!" に憤死させられるバッドエンド!
「どうしたの!? 顔が怖いよっ、どんな先生想像してるの?」
声が出せない息も絶え絶えで絶命しそう。
「心配しなくても大丈夫だよ」
何が?
「甘いといっても、ちゃんと教えてくれたから。熟練の先生でさ」
何の?
「優しいおばあちゃん先生でさ。孫みたいに甘やかしてくれたよ」
なーんだ、早く言ってよですわ!
ふう。
「おばあちゃん先生っ、それは甘やかしてくれそうでよかったですわ〜!」
「そうなんだよ。でも、しっかり教えてくれたから大丈夫!」
あははと笑いあったところで先生が戻ってきた!




