ちょっと過去を振り返り、これから!
王の間退出〜
廊下の静けさに包まれて一息。
無事に終わって安堵ですわ。
王子様とも笑顔を交わせた。
「父上と母上に会ってくれて、ありがとう」
「お会いできて、お話できて光栄でした」
王子様の笑顔に複雑さが――?
「父上の話は前向きでよかったけど、母上の話は……」
それね。
「ごめんね、ソプラノーラさんのこと任せてしまって」
「大丈夫ですわ」
どんと胸を叩く勢いで請け負ったけど。
王子様の表情はまだすぐれない――不安そうな瞳向けてきた。
「母上が望んでいるオペラができないように黙らせるみたいな、何かその、過激なことはしないよね?」
ざまぁって高笑いさせるようなことね。
「しませんわ。美味しい料理を食べていただいて黙らせるくらいのことを考えています」
「うん。それくらいで頼むよ……」
王子様が視線をそらせた、表情にまた憂いがみえますわ。
何を考えているの?
口を開いた――
「ソプラノーラさんが、私から隣国の王子に行ったのは仕方ないと思っているんだ……私はオペラの才能がないからね。アハハ」
王子様……
また笑ってるけど前の爆笑より悲しい感じ。
なんて言葉をかけたらいいか……
「このオペラーラ王国ではオペラの才能が異性の魅力の第一位ですからね」
宰相様!
「オペラの才能の有無は貴族の婚姻にも大きく影響します」
特殊な世界……
「才能の無い者は良い婚姻を結ぶのが困難であり、自身だけでなく家まで立場が下になることもあります。仕方ないことです」
なんて冷徹というか冷酷な解説……
「殿下は王族ですのでそのようなことにはならず、国で一番才能溢れるプリマドンナのソプラノーラ様と婚姻いたしましたし、ソプラノーラ様も殿下の事情を了承して婚約したはずですが……やはり……ということだったのでしょう」
なるほど。
やっぱ、王子でも才能無い人は無理。
才能溢れる隣国の王子に行こってなったのね。
私との浮気疑惑も出てきてたし未練もなかったのかも。
「失礼ながら、殿下にオペラの才能が無いとは。ソプラノーラ様のショックも計り知れないものがあったことでしょう。オペラーラ王国の王子ならば一番才能が有ると思わせて当然の存在。それが全く無いのですからね」
そんなズバズバ言わないであげて……
「私自身も初めて知った時は衝撃を受けて頭を抱えたほどです。なんとか解決策はないかと奔走しましたが見つからず……」
宰相様、悔しそう。目を閉じて泣きそうに震えてる。
優秀な宰相様が何もできなかったんだもんね……
「私にできることといえば、デスピーナが知ってはショックを受けると思い、殿下のオペラについて話さずひた隠しにすることだけでした」
兄としてできることはしたのね。
それでデスピーナ様は王子様のオペラ観たことないっていってたんだ。
これからも真実は知らせないほうがいいかな。
すっごい上手いかもって夢見てるかもしれないし。
ショックを与えないためにも――
与えてしまう王子様のためにも――
王子様……しゅんとしてコソコソしてる、小さい。
寄り添ってあげなきゃ!
そっと腕に手を触れて、
「王子様、しっかり」
「う、うん、大丈夫」
下を見たままだけど力ないけど。
笑顔を見せてくれた。守らなきゃ! この笑顔!
「私は気にしません! オペラの才能がなくても!」
力いっぱい宣言!!
「特殊な方ですね」
宰相様の静かな驚き。
オペラ第一の国の人からしたら、私のほうが特殊なのね。
変人とか異質な存在として見る目変わってしまわないように、なんとか理解してもらわなきゃ……
「私も挫折した経験がありますし、王子様の気持ちがわかるんです」
「あなたのように才能溢れた方が挫折を?」
宰相様は絶賛してくれたから疑問だよね。
「はい。その才能を妬まれたり、男爵令嬢のくせにとかヒソヒソ言われまして屋敷に引きこもりに」
「そうでしたか。気にせずプリマドンナになっていれば、男爵令嬢でも殿下と婚約することができたのですが」
そうなんだ。
本来のオペラルートではそうなってたのかも。
だけど、今はこうして――
「お料理を通して王子様と出会えましたから。私はそれで――」
充分幸せですわ。
王子様とも笑顔を交わせた!
「そうですね」
宰相様にも納得してもらえた。
「まことによい出会いをなされたと思います。殿下が料理に熱心になった時にウタカタリーナ様が現れるとは……運命的なもののような気がいたします」
はい! 宰相様にも運命の出会いと思ってもらえた!
嬉しいですわ〜ありがとうございますぅ〜
王子様も照れてるし、幸せ! イチャイチャしとこ!
「安心いたしました」
宰相様も珍しく笑顔!
「ありがとう、テラー。心配かけてたんだね」
王子様と一緒に感謝。
「オペラではショックを与えてゴメン」
「いえ」
「デスピーナさんにはこのまま、ひた隠しにしといてあげて」
「はい」
「解決策を探してくれてありがとう、だけど、もういいよ。私は料理の道に行くから」
「はい。料理のことにつきましては私のできる限り、お力になりたく思います」
「頼もしいよ! これからもよろしくね」
「はい」
淡々としたやり取りに見えるけど――
笑顔を交わしてるし。
王子様と宰相様の間に絆が芽生えたみたい。
よかった、よかった!
「力を合わせて」
王子様の視線が宰相様から私に、
「オペラに匹敵する料理を作ろう!」
「はい!」
誓いを新たに!
行きましょう! 料理ルートを!!




