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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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ご両親と対面!

 王の間入口前廊下〜


「準備はいいかな?」


 王子様の最終確認。


 綺麗なドレスに着替えたし、カーテシーの練習もしたし。


「はい、大丈夫です……!」


 後は王様と王妃様に会ってみないとわからない!

 行かないと! 二人を攻略に!


「じゃあ、行くよ!」

「はい!」


 笑顔の王子様と寄り添って――宰相様に見守られて。



 王の間〜


 赤い絨毯の上を歩いて、黄金の玉座に座る二人の前に。

 王子様と並んで到着。


「よく来てくれた」


 王様のお言葉。


「自己紹介しよう。私はこのオペラーラ王国、国王ルートヴィヒ二世」


 ルートヴィヒ二世……王子様が隣国と戦って勝った戦勝祝いのパーティー以来ですわ。

 改めて見ると――渋イケメン!!

 王様といえば初老で太ってるイメージだったけど、この王様はまだアラフォーくらい? シュッとしてて顔も若い頃イケメンだったのがわかる。

 さすが、王子様の父上ね。

 笑顔で見つめられると魅了されそう。

 さすがに、どうこうなりたいとは思わないけど。

 断罪直行の禁断のルートがあるのかと疑ってしま――!?

 もう一つ視線が王様の隣から!

 王妃様!!


「ようこそ、私は王妃のオペリアですわ」


 オペリア様!

 美しいお顔と金のマーメイドドレスを着こなす抜群のスタイルから放つ、なんと余裕に満ちた笑みと態度!

 私のような小娘など――って感じ。

 王様イケメンどうこうは一切忘れよう。


 私は王子様に一途ですわ!


 それをわかってもらうためにも、まずは自己紹介!


 必殺カーテシー! 完璧にできた!


「ウタカタリーナでございます。国王陛下、王妃様、お会いできて光栄でございます」


 落ち着いて上手く言えた――反応はどうかしら?


 お二人とも合格というようにうなずいてる。

 見守ってくれた王子様も笑顔!

 ふぅ、一つクリアしたわね。


「ウタカタリーナ、私どもも会えて嬉しいよ」


 王様……

 王妃様も笑顔でいてくれてる。

 私を歓迎してくれてる、これはもうほとんど攻略したも同然!?


「城に来て王子と料理をしていることは聞いていた。そのことについて礼を言いたいと思っていたのだ」


 王様が礼を?


「本当にその通りですわ。セレナードと楽しくお料理をしているとのこと、私からも礼を言います」


 王妃様も……


 嬉しいけど。

 お礼を言われるようなことかしら?

 それよりまず、許可をもらわなきゃ。


「よろしいのですか? 私がこのまま王子様と料理をしていても」

「もちろん〜」


 王様と王妃様は綺麗なハーモニーを奏でた。


 いいんだ……とりあえず、よかった。


「王子の見つけた新たな道だからね。応援するよ」

「心から」


 王子様の見つけた料理ルート。

 応援してくれるんだ――!

 こんなあっさり王様と王妃様を攻略できて拍子抜けだけど、まぁいい。有り難い!


「ありがとうございます」


 私と王子様は喜びの視線を交わしハーモニーを返した。


 めでたしめでたし、いや、まだだ。


 ふと、王様の視線が下に――


「オペラの道を閉ざしたのは残念だが」


 それですわ――!


 残念なのは当然だよね。

 オペラ王国の王子がオペラしないんだもん。

 粛々とした態度で残念さを分かち合おう。


「陛下、仕方ありませんわ」


 王妃様はもう完全に諦めて切り替えてるみたい。


「そうだな、仕方ない」


 王様も――顔を上げて、こっちと王子様を見た。


「王子はオペラの才能がないからな」


 えっ? 


 そうなんだ……


「本当に」


 王妃様も同意。


「声は美しいのに。歌の下手なカナリヤですわ」


 音痴なカナリヤ……


 かわいそう。


 そんな評価を受けた王子様の反応は――


「ハハハハハッ」


 爆笑してらぁ。


 もう笑っとけって感じ。


 私はどうしよ。

 オペラ劇場でルパート様より歌うまいんじゃ? って期待したぶんオペラの才能なしは笑うわ。

 差し入れのフィナンシェに力を授ける時の "あ~っ" てのが棒だった時に嫌な予感はしたからやっぱりねの笑いもある。

 いや、笑ってる場合じゃない。

 王妃様の表情が暗いもん。何か言おうと口を開いた!

 引き続き真面目に聞こう。


「私も陛下も若い頃はオペラ歌手としてそれなりに活躍しましたから、才能を引き継がなかった王子が不憫で……親としては何とかしてあげたいと教育にも力を入れてきたのですけど……」


 泣きそうになってる。静かにうなずいておこう。

 王子様も笑いを引っ込めてかしこまった。

 王様も重々しい表情で口を開いた。


「しかし、王子自身も才能の無さを気にするあまりオペラを嫌がるようになった。教育も拒否するようになり舞台に立つこともなくなり、城に引きこもる日々の中で、いつしか料理に没頭するようになっていた」


 王子様も……

 私みたいにオペラルートに挫折して引きこもり生活だったんだ。

 料理ルー卜が出てきて王様の反応は?


 王様の涙に濡れたような瞳がこちらに――


「料理をする中で王子は次第にかつての生き生きした姿を取り戻していき、そなたに出会ってからは完全に元の明るさを取り戻してくれた。それだけなく、料理をするうちにみるみる凛々しく成長もしてくれた」


 カッコイイ瞬間いっぱいありましたですわよね。


「それに幸せそうで……私達が切実に望んでいた姿を見せてくれましたわ」


 王妃様、流れる涙を指で拭いてる。

 王様も涙を流して喜んでくれてる。

 これ以上ないくらい良いご両親ですわぁ……

 幸せ者の王子様も泣きそう、私も!


「ウタカタリーナ」

「はい、陛下」

「そなたが王子に出会ってくれたこと感謝しかない。そなたの料理も折々で王子を助けてくれた」


 カツ丼とかね。懐かしい……


「セリアー王国の王族にも、おもてなし料理を一緒に作ってくださるそうですわね?」

「はい、王妃様」


 王妃様の期待の眼差し!


 ますます、これは絶対失敗できない。

 覚悟を新たに、強い眼差しを返す!


「頼もしい人……」


 王妃様は満足そうな笑みでうなずき――

 王様に目配せした!


「そこでだ、ウタカタリーナ」

「はい」

「もてなし料理を作るだけでなく、食事の席にも並んでほしい」


 私が食事の席に!?


 全然思ってなかった!

 料理を作って運ぶことしか頭になかった。

 私が王子様達と一緒に料理を食べる?


「それはっ……!?」


 王様の笑み!


「王子の一番親しくしている令嬢として、セリアー王国の王達に紹介したい」


 紹介!!


「唯一の婚約者候補としてですわ」


 王妃様の訂正!


「正式な契約が間に合いませんでしたからね」


 正式な契約!?


 それってもう――私を婚約者として紹介したいと言ってるようなもの――!


 王子様は――!?


 ビックリしたような瞳で、そわそわして笑ってる……

 なんで狼狽えたようになってるの?


「いいのですか? 私で……」


 思わず、三人に確認してた。


「もちろん」


 三人が綺麗にハモってくれた。


 心に響くトリオのアンサンブルでしたわ。

 王子様の声が少し震えていたような気がしたけど……


「セリアー王国の王子は我が国の公爵令嬢だったソプラノーラを婚約者として連れてきます」


 一番強い声を出してた王妃様が続けた。


「ソプラノーラはセレナードと婚約していながら、それを破棄するような真似をしてセリアー王国の王子テノールードと……! 私の息子から他の王子に行くなど生意気な小娘!!」


 血も滴るような声!

 王妃様の顔が怖い! ギリリッて歯噛みする音が聞こえてきそう……怖い。

 ソプラノーラ様への怒りが相当あるようですわ。


「ソプラノーラめ、セリアー王国の来賓として我が国に来るだけでなく、歓迎の礼にオペラを見せようなどとしている! ならば、こちらはウタカタリーナあなたとセレナードで料理を食べさせておやり!!」


 ギンッって目で見られた!


「はっはい! 王妃様!」


 直立不動で返事するしかない!


「フッ、オペラなどできぬよう黙らせてやるのです。どんな料理を作ってでも……」


 ヤバい命令きた!


 王妃様の言う通りにしてたら料理に毒盛ることになりそ!?


 なんとか、回避しなきゃ……


 私と王子様の料理を王妃様のソプラノーラ様への復讐ざまぁの手段にされるわけにはいかない!


「母上! ウタカタリーナと作る料理はセリアー王国と同盟を結ぶためのものです!」


 王子様も必死に訴えてる。


 その通りですわ。

 私達の料理は平和と幸せの象徴ですのよ!

 王妃様には――とにかく今回は引っ込んでてもらわなきゃ。

 そのために、


「王妃様」


 一歩踏み出し宣言しよう。


「ソプラノーラ様のことは私にお任せください」


 全て請け負うしかない!

 毒を喰らわば皿まで!? の精神ですわ!


「ウタカタリーナ……!」


 伝わったみたい。

 王妃様のギラついた目つきが穏やかに輝きだした!


「任せます。あなたに、ソプラノーラのことも王子のことも全て」

「ありがとうございますっ」


 本当に全て任されるとは思わなかったから。

 プレッシャーえぐいけど、仕方ない。

 よかったんだ! これで好きにできるし!

 前向きに喜ぼ!!


 王妃様に向けて頼もしい笑顔をみせてと。


「頼むよ、ウタカタリーナ」

「王子様」

「いや、一緒にやり遂げよう!」

「はい!」


 王子様とも笑顔を交わせた!


「頼むぞ。王子、ウタカタリーナ」


 王様も!


「それから」


 ん? なにか、思い出したことがあるみたい。


「ウタカタリーナが我らと席を共にするためにも、そなたの父親バスキューレ•ジュディチェルリ男爵の身分のことだが」

「はい!」


 その問題があった。


「身分を上げるために王都のオペラ劇場の支配人にすることについては、現支配人との間でいざこざが起きそうだとの話を宰相から聞いた」

「はい……」


 幸い、まだ何も起きてないけど。

 間に合ったってことよね?


「そこでだ、王都のオペラ劇場の支配人は今のメト支配人のままにして、そなたの父には城のオペラ劇場の管理責任者を任せることにした。現在はオペール公爵に任せているが、そろそろ引退したいと言っているから問題は起きないだろう」


 それならよかった!

 公爵の仕事を任されるなんて。

 やっぱり、お父様の将来は公爵って思わせてくれますわ。


「既に引き継ぎを、お二人の間で行っております」


 宰相様の報告。

 それなら間違いない!

 安心していいよね――


 これで何の憂いもなくなったかしら?


「これで何の憂いもなく料理を作り振る舞い、私達と共に食べることができるだろう」


 やっぱり!?


「ありがとうございます!」


 感謝を込めて深くお辞儀。


「一緒に食事するためのドレスも用意してあります。他に必要なものがあれば何でも用意しますわ。遠慮なく王子や宰相に願いなさい」


 王妃様の太っ腹なお言葉にもお辞儀!


「それでは、ウタカタリーナの列席は決まったな。それから」


 王様がちらっと王妃様の様子を確認した。


「ソプラノーラとテノールード王子の披露してくれるオペラも一緒に観てはどうだ?」

「よろしいですか?」


 観たいけど……


 王妃様だけでなく王子様も気が進まないんじゃ?


「ぜひ、観てあげるとよろしいわ。オペラの才能もあるというウタカタリーナの感想を聞かせておやり」

「はい、王妃様」


 怖い。

 まだ批評できるほどじゃないんだけど。

 とにかく観るか。


「一緒に観よう」


 王子様! 優しい笑顔に救われるわ。


「はいっ」


 一緒なら大丈夫!


「では、席を用意しよう。今日の晩餐会は欠席して、二人で会うんだったな。料理作りでも何でも楽しんでくるといい」


 王様と王妃様の含み笑い。


 婚約者候補の私なら夜に王子様と会っても問題ないよね。

 よかった!

 おもてなし料理の席に並ぶのは予想外の事態だけど。

 王子様と一緒にいられる許しは貰えたから!

 このまま――

 ソプラノーラ様とテノールード王子との対峙まで行こう!

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