表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/67

第61話 ピクニック

 お城の庭園〜


 青い空、降り注ぐ日差し、花々の咲く花壇、青々とした芝生。

 噴水のそば、テーブルとイスがセットされてる。


 一生懸命作って大事に持ってきた、お弁当。


 いよいよ、お披露目ね!


 王子様と向かいあって着席してと。


「王子様、これ! お弁当です!」


 バスケットをテーブルの真ん中に、はい!


「おお! お弁当! 待ってました!」


 ハイテンション、可愛い!!


「作ってくれてありがとう」

「どういたしまして、さぁ、どうぞ――」


 フタを開けてと。

 中の様子、さっきチラ見して確認したから大丈夫。

 おにぎりの隣におかず、綺麗に詰まってる。

 王子様も身を乗り出して見てる――


「おお〜、おいしそうだね!」

「フフッ」


 見た目は合格ね。

 次は肝心のお味!


「どうぞ、食べてください!」

「いただきます! まずは……」

「この紙に包んであるのがオニギリです。これがシンプルな塩だけオニギリ、ウメボシ、サケ、焼きサバ、シーチキン、フリカケ色々です!」

「おお、凄いね! まずは塩オニギリにしようかな」

「私も」


 包みを開いて。綺麗な三角にできてる。


「上手だね」

「フフッ」


 これくらい、朝飯前ですわ。


「異世界でオニギリが食べられるなんてなぁ。いただきますっ」

「私もいただきますっ」


 パクッ もぐもぐ。

 うんっ、丁度いいコメの固さ。塩加減も丁度いい。

 王子様の反応は?


「おいしい!」

「よかったですわぁ!」


 ニコニコ笑顔、待っていた光景!!


「おいしくて、泣きそうだよ」

「王子様……」


 目を閉じて本当に泣きそう。

 そこまで喜んでくれるなんて……私も泣きそう!


「卵焼きも食べようかな!」


 泣いてる場合じゃない――


 タマゴヤキのお味は?

 甘さは? 塩っぱさは?


「おいしいよ! 甘さがいいね。優しさが体にしみてくるよ……」

「よかったです!」


 王子様、また泣きそうになってる。

 転生者なのもあるけど、慣れない王子様業で疲れてるのかしら?


「沢山食べてください」

「ありがとう、これも食べようかな。これは?」


 チキンボンボン!

 だけど、ここはお城だから。


「チューリップチキンです! 形がチューリップみたいな唐揚げですよ」

「唐揚げか、嬉しいな! うん、チューリップに見えるね」


 骨に赤いリボンのついたチューリップチキン。

 王子様が手に持つと、お洒落に見える!

 お味は?


「うんっ、唐揚げだ!」


 嬉しそうに食いちぎって食べてる。

 それでもさすが王子様、お上品さがあるわ。


「おいしいよ、スパイシーでタマゴヤキと交互に食べたくなる」


 片手にチキン、片手にタマゴヤキ。

 さすがに城の人に見られてはまずい食べ方だけど。

 幸せそうだからいっか!

 私だけがみていよう……


「最高だな〜!」

「フフッ」


 早起きして作ってよかった。

 心もお腹も満たされていく――


「次は、このケーキみたいなのは?」

「これはキッシュです。この世界のお弁当ですよ」

「異世界のお弁当か、どれどれ――うん、変わってておいしいね! 野菜と肉とチーズとタマゴか、一度に食べれていいね」

「おいしいし、オシャレですよねぇ」


 王子様に、よく似合う!


「異世界の弁当に前世の弁当も食べられるなんて思わなかったよ。そうだ、お茶があるよ。茶葉を沢山取り寄せて飲み比べて作ってみたんだ。麦茶みたいな味のやつ!」

「麦茶!」


 私がお弁当を作っている間。

 王子様は麦茶を作ってくれていたの? 感動!

 二人で用意した完璧なピクニックになりますわ!

 どれどれ――

 真っ白な陶器のティーセット、これね。

 王子様がティーポットからカップに注いでく。

 薄茶色のティー、


「いただきます」


 ゴクリ……ほんのり香ばしくて、


「うん、麦茶みたいです! おいしい!」

「よかった!」


 良い感じに冷たくて、飲みやすいですわ。

 お城の庭園を見ながら麦茶を飲んで、お弁当を食べる。

 目の前にいるのは中身日本人だけどキラキラな異世界の王子様。私も中身日本人で多分それなりにキラキラの令嬢で。

 私達がどこにいるんだか、何者なんだか、わからなくなるけど……


「幸せです」

「そうだね」


 幸せを共有できる幸せ!


「日本にいるのか異世界にいるのか、日本人なのか令嬢なのか、わからなくなりますけど」

「ほんとだね、不思議だよ。だけど、楽しいよ!」

「楽しいです!」


 王子様の顔つきが少し真剣に……?


「こんなに楽しくて幸せなお昼は初めてだよ」

「私も」


 少しうるうるした瞳で見つめあって――

 私達、これからどうなるの?

 王子様……オニギリをがっついてる。次々と。


「シーチキンマヨ、懐かしいね! フリカケも!」

「ですよねぇ! 町のジパングのお店で買ったんですぅ」

「今度、一緒に行こうか?」

「はいっ」


 新たな、お出かけの約束! それも幸せ!

 楽しみを増やしながら、お弁当を食べ続けよう!




「おいしかった、おごちそうさま!」

「おごちそうさまでしたー!」


 バスケットの中は空っぽ。

 ほとんど、王子様が食べてくれた。


「それじゃあデザートのパフェを持ってくるけど、お腹に入る?」

「入りますぅ!」


 お待ちかねですもの!!


「作ってもらってくるね、待ってて!」

「はい!」


 王子様は足早にキッチンに向かった。


 入れ替わりにボーイさんが来た。

 テーブルを片付けて綺麗にしてくれてる。

 パフェ用のスプーンもスタンバイ。

 これで、パフェを迎える準備は完了ね。


 フフッ、楽しみですわ。

 こうして待ってる時間、幸せ――

 王子様、まだかしら? 

 来ない……そわそわしてきた。ちょっとその辺歩いて、お腹減らしとこ。

 うろうろ、うろうろ、あ、蝶々。


 あっ、王子様が戻って来た!


 手にはパフェグラスが!!


「おまたせ!」


 急いで、席についてと。


「俺が考案した特製パフェだよ、どうぞ!」

「ありがとうございます!」


 目の前に置かれた、特製パフェ。


 フルーツ盛り沢山、ピンクやグリーンのクリーム、グラスの中は色とりどりの層になってる!


「綺麗ですわ〜! おいしそうですぅ!」

「食べてみて!」

「はいっ、いただきます!」


 向かいに座る、王子様の笑顔に見守られながら――


 まずは、花のようなピンククリームをパクッ


「おいしいです!」

「よかった!」


 甘くて口溶けの良いクリーム。

 フルーツと合いますわ。


「このパフェはね」


 王子様の解説、聞かなきゃ。


「フルーツとクリームで花畑と地面、グラスの中は地層に見立ててるんだ。どんどん掘って食べていって――良いものが出てくるよ」


 良いもの!?

 王子様の意味深な笑み……掘った先に特製の秘密が!?

 これは、どんどん食べねば。


 何が出てくるの? 


 こういう、サプライズで出てくるのは……


 指輪!!?


 流石にそれは早すぎますわぁ! 私達まだ……!


 いや、いいのかも! 一気に婚約! 異世界の王子様と令嬢だもんね!?


 そうなるのか――確かめるためにも、掘っては食べ掘っては食べ――バニラの層、チョコレートの層、ベリーの層、どれくらい進んだか――


 あっ、スプーンに何か光るものが!!


「見つかりましたわ!?」

「それだよ!」


 やりましたわ!!


 それでは……

 スプーンにのった物体を確かめてみましょう。

 赤いベリーがついてるけど……

 金色に輝いてる固形物! 

 形は丸くない四角い?

 なに、これ……?


「これは?」

「金塊だよ!」

「きん、かい?」

「うんっ、ジパングの金箔を重ねて作ったんだ。パフェを作ってるときに思いついてね、入れてみたんだ! 埋蔵金みたいな?」

「埋蔵金……」


 指輪じゃないんかい。

 いや、埋蔵金、お金も嬉しいですけどぉ……


「あんまり、嬉しくない?」

「そんなことないですぅ、びっくりしちゃって! まさか、金塊が出てくるなんてぇ凄いですー!」

「楽しんでもらえた!?」

「はい!」

「よかった!」


 嬉しそうに笑ってらぁ。


 全く、とんだ勘違いをさせられましたわ。

 心のすれ違い、もやもや。

 だけど、私を楽しませるためにしてくれたこと。

 王子様の気持ちは嬉しいから、もやもや解消。

 切り替えて、パフェを食べつくしましょう――


「おいしかったですわ。おごちそうさまでした」

「ほんとに、おいしそうに食べてくれて嬉しいよ」

「こんなに、おいしくて楽しいデザートは初めてでしたわ」


 全く、王子様と居ると飽きないですわ。


「ありがとうございます、王子様」

「こちらこそ、ありがとう。ウタカタリーナ」


 幸せで満ち足りた笑顔を交わせた。


 理想通りの、いいえ、理想以上の。


 最高のピクニックでしたわ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ