第60話 食器の準備完了!
無事、城に到着〜
王子様のエスコートで馬車を降りて、
「荷物も」
食器割れてないといいけど……
揺れも少なかったし、カチャカチャぶつかる音もなかったし、大丈夫だとは思うけど。
大事な食器が割れてピーンチ! なんてあるあるだし。
いやもう、プリン・ア・ラ・モード用のグラスを今から作らなきゃいけなくて既にピンチだから!
大丈夫ですよね、王子様……
「割れてないといいね」
「はい……っ」
心配を察してくれたみたい。
たとえ割れてても、王子様とならなんとかできる!
確信!
さぁ、食器をキッチンへ運びましょう。
「お帰りなさいませ」
宰相様が迎えに来てくれた。
「テラー、ただいま」
「ただいまですわ」
「トラブルなどありませんでしたか?」
「うん、何事もなく買えたよ! ね!」
「はいっ、楽しかったですわぁ〜」
王子様と笑顔を交わして思い返すと楽しい思い出!
「それはようごさいました」
「あっ、でも、プリン・ア・ラ・モードのグラスが無かったんだ。職人に頼めるかな?」
「はい、念の為に職人は既に城に呼び待機させております。お目通りになり、グラスのご希望の形などお伝えください」
「ありがとう」
「助かりますわ」
宰相様も職人さんも、
「好きなグラスを作ってもらうといいよ」
王子様も。
「はいっ、ありがとうございますぅ!」
上手く伝えて作ってもらわなきゃ!
「では、職人をお呼びいたします。食器は大食堂のほうへお運びいたします。そちらで、セリアー王国おもてなしの際と同じテーブルセッティングをしておりますので、食器を並べてご覧になってください」
「うん、見てみよう!」
「はいっ」
本番と同じセッティング、映えるかしら?
ドキドキ……
「その前に、お疲れのようではございませんか? しばし、お休みになられますか?」
「大丈夫? 疲れたかな?」
「いえ、私はこのまま大食堂に行っても大丈夫ですわ!」
むしろ、早く行きたい!
「王子様は?」
「大丈夫! 行こう!」
「はい!」
大食堂〜
綺麗……!
大食堂というだけに広い!
何十人も座れそうな長い長いテーブル! 豪華なイス! その上に並ぶシャンデリア!
ここで、おもてなしするのね……
圧倒されて声も出ねぇですわ。
体も緊張して動かない!?
しっかりしなきゃっ、今のうちに空気に慣れておかないと!
「凄い食堂だね」
「はいっ」
「大丈夫、入ろう」
王子様のエスコートで――安心できた!
「お帰りなさいませ」
テーブルの前、料理長が出迎えてくれた。
「お気に召す食器はありましたか?」
「うん、プリン・ア・ラ・モードのグラス以外は全部買えたよ。テーブルに並べてみよう」
料理長にも手伝ってもらって。
箱の包装を丁寧に取って、フタをオープン――
皿も小鉢も丼も……無傷! よかった〜!
「どれも美しい食器ですな!」
そうでしょう? 王子様と一緒にニコニコ。
「では、テーブルにセッティングいたしましょう」
料理長の丁重な手つきで食器が置かれていく――
まず、ご飯をのせる皿。
華やかに舞う妖精が白いテーブルクロスに映える!
ガラスの小鉢も、さり気なく輝いてて綺麗!
さすが、王族御用達の店の食器ですわ。
じゃあ、庶民的な店で買った味噌汁カップは?
一つだけ木製で……ちょっと浮いてる気がする!
だ、だけど、温もりが加わったような!?
花畑のような妖精皿に木のカップが良い感じ!
「綺麗に映えますね!」
「うん! いいね!」
後は、
「メインの白い皿は数種類用意しました、お選びください」
さばの味噌煮用の皿。
縁のないシンプルなのと、金の縁取りがあるのと、
「この縁の広くて真ん中のくぼんだ皿……」
高級レストランで見たやつ。
「こちらはリム皿といいます」
リム皿!
「これがいいですわ!」
「それにしよう!」
決まった!
「これを真ん中に置いて――」
ご飯皿は左に味噌汁は右に小鉢はメインのそばに。
木のスプーンも出してカトラリーを並べて。
セッティング完了ですわ!
「できたね!」
「はい!」
これは私と王子様が求めていた光景!
「良い感じだね!」
「はいっ」
「どうかな? 料理長」
「殿下とご令嬢がお選びになっただけあり、豪華さの中に愛らしさがありますな」
フフッ
「後は、料理をのせるだけだ!」
「はい!」
楽しみになってきた!
「あっ、それから、牛丼用の丼も置いてみよう……」
どんと置かれた丼。
異彩を放っているような……
「いいね!」
「はい!」
王子様が満足ならそれで!
「後は、デザートのグラスだ」
「殿下、ウタカタリーナ様」
宰相様が来た、一緒に中年のイケオジも。
「プリン・ア・ラ・モードのグラスを作る、職人を連れてまいりました」
職人さん!
料理長みたいに、たくましい体にスーツ着てる。
目つきが鋭いような。王子様と、こっちも見た!
「ご希望通りのグラスを作ってご覧に入れます」
頼もしい!
「頼むよ。ウタカタリーナの希望通りに作ってあげてくれ」
「かしこまりました。ウタカタリーナ様」
「はいっ」
「どうぞ、お望みのままにグラスのイメージをお教えください」
「はっ、はい! えっと……」
職人さん、画用紙とペンを構えた!
上手く伝えないと!
「えっと、フルーツグラスのように横に長いガラスのグラスで、大きさは……」
大きさが難しい! 助けて! 王子様!
王子様は笑顔で何も言わない。
完全に私に任せてる。
じゃあ、料理長!
「プリンがメインですからな、プリンに合わせて大きさを決めるのがよろしいでしょう」
「はいっ」
料理長が居てくれて助かりましたわ。
プリンカップも持って来てくれて、丁度いい大きさがわかった!
「グラスのデザインはどういたしますか?」
デザインも大事よね。
「グラスの縁は花びらのようにしていただきたいですわ」
「花びらのように。よろしければ絵を描いていただけますか」
「絵っ、絵は私……」
絶対下手だ、感覚でわかる。
「よろしければ、私が代わりに描きましょう」
料理長!
「お願いします!」
料理長、描き慣れてるみたい。
料理のイメージをいつもこうして描いてるのかしら?
さらさらと絵が出来上がっていく。
「いかがでしょうか?」
「完璧ですわ!」
花びらのグラスに盛られたプリン・ア・ラ・モード!
「これで、お願いしますわ」
「かしこまりました」
「時間がありませんが約束の日時までに、よろしくお願いいたします」
宰相様からも頼まれた。
「大変だろうけど頼むよ。君の腕を信じてる!」
王子様からも。
急激に職人さんにかかるプレッシャー。
「必ずや、お約束の日時までに完成させてみせます」
ブレない頼もしい眼差し! 惚れそう、じゃくて、信じよう。
間に合うように祈っていますわ――
間に合わなくても "どうしてくれますの!?" とか喚き散らして、王子様に頼んで処刑したりしないから安心してください。
私達の思いを背に職人さんは去っていった。
「これで、食器の準備は一段落だね」
「はい」
王子様と一緒にホッ。
「後は、そうだ、ウタカタリーナのためのパフェグラスもあった」
あっ、そうそう!
王子様が持ったパフェグラス、この大食堂にも映える大きさ!
「料理長、これにパフェを頼むよ」
「かしこまりました。丁度、お昼時でございます。ご昼食になさってはいかがですか? デザートにパフェをご用意いたします」
「そうしようか?」
「はいっ」
並べた食器見てたら、お腹空いてきてたし!
いよいよ、私の作ったお弁当を食べてもらうのね。
ドキドキしてきたー!




