お約束!? 寄り道デート! 向かった先には――
「さぁ、急いで帰りましょうか」
プリン・ア・ラ・モードのグラス作ってもらわなきゃだし。
商品も積み終わったし、私たちも乗って――
乗れない、王子様が笑いかけてきた。
「王子様?」
「せっかく来たから、もう少し町を見て回らない?」
待ってました――! そうこなくちゃ!!
仕事脳だけの王子様じゃなかったんだ。
喜びの笑顔を返してっと、
「嬉しいですぅっ、行きましょう!」
「行こう! 御者に言ってくるね――」
王子様も嬉しそうに、はゃいでる!?
いい感じの二人が町を歩く。
これって、デートみたいなものだよね……
それに、はしゃぐなんて!
王子様ったら〜〜
いや、待て――町を歩くのが嬉しいだけかも――
私だけ、テンション上げすぎないようにしないと!
「御者君。ちょっと、その辺を歩いてくるよ。待ってて!」
「かしこまりました。護衛がついておりますが、何卒お気をつけください」
「わかった、ありがとう――」
護衛がいるんだった。キョロキョロ。
あ、少し離れたとこの店の壁にもたれてる男の人がいる。
こっち見たような……ちらほら同じような人がいる、普通の町の人みたいだけど。あの人たちかしら?
なんにせよ見られてるなら、なおさら私だけはしゃぎ過ぎは恥ずかしい。
王子様とテンションを合わせないと!
「行こうか!」
手招きする笑顔の王子様に、まずは笑顔を合わせて。
「はいっ」
声も高くなり過ぎないように、足取りも急ぎ過ぎず。
そばに寄ったときの距離感も近すぎないように。
「行きましょう!」
「うん! とりあえず、この大通りをまっすぐ行ってみようか?」
「はい!」
いつも通りに隣を歩いてと――
こんな風に色々気にして誰かと歩くなんて。
大変だけど、これが恋のドキドキよね……楽しい!
王子様の顔ばかり見てはいけないのに。
ちらちら見てしまう! 目があった!
「楽しいねっ」
「はいっ……!」
ただ歩いてるだけなのに、気持ちが通じ合ってる――!
もうこのまま、どこまでも歩きたい気分……
「この辺、他にどんな店があるんだろうね?」
「そう、ですねっ――!」
そうそう、ただ歩いてる場合じゃない。
王子様みたいに町を見ながら歩かないと!
えーっと、お店が沢山並んでる――レンガや石造りで中世の雰囲気あるけど、店の上はビルかアパートみたいになってる大きな建物ばかり。王都だけあって人も沢山歩いてて、店の中も賑わってる。
あ、服屋。ショーウィンドウのマネキンが着てるのって――
「見てくださいっ、王子様が広めたマーメイドドレスみたいなワンピースですよ!」
ドレスほど豪華じゃないけど、タイトでエレガントな感じのワンピースだ。
「ほんとだ! こんなところにもあるんだ?」
「あっ、歩いてる人も着てますよ!」
髪型もメイクもばっちりのお姉さんが着てる。あっちにも。これは……
「流行ってるみたいですね!」
「流行ってるんだ……町の人にも?」
「セレブの服装が流行ったりするようなものでしょうかね」
「そっか……!」
王子様、驚いてるし嬉しそう!
「俺の広めたドレスがこんなに流行してるなんてね。予想外だけど、なんか嬉しいよ!」
「王子様、凄いですねぇ!!」
尊敬と羨望の眼差し! キラキラ〜
「ありがとうっ、王子の影響力は凄いね!」
照れてるし喜んでくれた!
「この影響力を料理にも活かしていこうね」
「――! はいっ」
自分だけの手柄で終わらせずに。
私たちの料理にも活かしてくれる――
なんて、カッコいい笑顔……求心力のある王子様。
喜んで、ついていくしかない!!
そうと決まれば!
「食べ物屋さんありますかねぇ?」
「あるかなぁ?」
二人でキョロキョロ。
「あっ、カフェがあるね!」
コーヒーカップの看板がさがってる。
「行ってみましょう――!」
白い壁に木の格子の大きな窓があるシックなカフェ。
クラシックっぽい音楽が流れてて、いい雰囲気――
お客さんも沢山、食べてるケーキもおいしそう!
入ってみたいけど……
「満席みたいですねぇ」
「そうだね……あれ? 奥のほう見て。あれってさ――」
ん?
王子様が指差した先、お客さんたちも見てる。
テーブル席の奥で何人か立ってるのを。
服は普通のワンピースとかシャツとズボンだから、お客さん? 向き合って話してるような、歌ってるような、身振り手振りもまじえて……明るい照明スポットライトみたいな下で……
「あれって、オペラしてるんでしょうか?」
「そう、みたいだね……オペラだ」
カフェでオペラしてる?
私たちは半信半疑のまま、カフェの入口に向かって。扉の上の金の文字、カフェの名前を確認。
「オペラカフェ!」
「オペラカフェか……!」
王子様の視線が下に、足元に立て看板が二つ。
一つはメニュー表。
もう一つには――
オペラできます!
お気軽にスタッフにお声かけください!
即興オペラも歓迎!!
熱烈な宣伝文句が。
スタッフによる今日上演するオペラの案内も。
「オペラができるそうですよ……」
「凄いね……」
王子様と絶句するしかない。
もう一度、窓を覗いて確認してみよう――
確かにやっぱりオペラしてる。
流れてくる音楽と歌声、生オペラだったんだ。
カフェでオペラしてるなんて、驚きだけど……
みんな楽しそう――こっちまで笑顔になる!
「こんなに身近にオペラがあるなんて、凄いですねぇ!」
王子様も笑顔になった!
「ほんとだね、さすがオペラ大国だ……!」
「歌ってるのはスタッフさんでしょうか? お客さんでしょうか? みんな上手ですねぇ」
「うん、国民みんなオペラできるのかもね。なんていうか……オペラ大国の王子として、頼もしいよ!」
笑ってらぁ。
国民を率いる立場の王子様自身はオペラしないんですが。国民は納得してくれるのかしら?
ま、後ろ盾にはなってくれるだろうから……
オペラしろー! って、妖精の要求どころじゃない怒号に囲まれた! なんてことにならないよね?
ん? 王子様の表情が真面目になった。
「このカフェや国民のオペラも、陰ながら支えていかないとね」
やっぱり! なんて、頼もしい笑顔……
「はいっ! 王子様がそうしてくれたら、国民も頼もしいと思います!」
「だと嬉しいね!」
国民にもオペラを永遠に!!
私たちは誓いの笑顔を交わして。
オペラカフェを後にした――




