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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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デザートグラスと恋人同士!

 庶民的な店が並ぶ大通り〜


 食器店『カチャカチャ』前到着。

 こちらも清潔な白い壁と青いレンガ屋根のお店。

 店の前にも商品が出てる、結構雑然とした感じに。

 値段も書いてる、お皿一枚が100ルン! 安い!

 これよね。庶民的な安心感。


「入ろうか!」

「はい!」


 王子様と足取りも軽く入店。


「いらっしゃいませー」


 店員さんも商品の整理をしたまま、こない。


 勝手にゆっくり見させてもらいましょう――


「えっと、デザートグラスは……」

「こっちにありそうだよ」


 王子様についていくと。


 本当だ、ガラス製品コーナー。

 飲み物のグラスが沢山ある。シンプルなグラス、取っ手付き、ワイングラス、ジョッキ……

 ジュースグラスは結構種類がある、色付き、形の変わったもの、大きいのはパフェ用にできるかしら?


「あっ、これは!」

「あった?」


 私が見つけたのは、パフェグラスじゃなかった。


「ペアソーダグラスですよ!」


 指差してみせたのは、二つのグラスがドッキングしたグラス!


「二種類のジュースを一つのグラスで飲めるんですよ」

「へぇ、珍しいね――」


 王子様も興味津々!


「片方ジュースで片方パフェにしたりもできるんです」

「へぇ、いいね!」


 そしてそれを二人で飲んだり食べたりできるグラス。


 一つのグラスから一緒に――恋人同士の証。


 一人一人独立したグラスで飲めるから一つのグラスで二人で飲む用のペアストローを使うより、衛生的でもある。ありがたいグラス。


 これで、王子様と――妄想中。


「これで、二種類のジュースを同時に飲めるわけだ。革新的なグラスだね! おもてなしのデザートで出そうか? 俺たちの料理の時はプリン・ア・ラ・モードがあるから別の食事の時間にね」

「それもいいですね……」


 なんて、仕事脳な王子様。


 私みたいに恋愛脳になってほしいのに……いや、おもてなし用のグラス探してるんだから仕事脳の見方で正しいのか。

 私も!


「ジュースとパフェを一つのグラスで楽しめるなんて贅沢だし、お城のデザートグラスにいいかもしれませんね!」

「そうだね! 自分用にも欲しいし、ウタカタリーナもいるよね?」


 やはり、二つ。別々でか……笑顔よ、引きつらないで。


「はい! 欲しいですぅ! あ、これはストローもいりますよっ」

「そっか、ストローで飲まないと片方こぼれるんだね。城にストローあったかな? がぶ飲みしても意外に怒られないんだよね」

「そうなんですね――」


 王族には豪快さも必要なのかしら?

 でも、


「私はストローを使います」


 お上品な可憐さを演出しとこう!

 上目遣いで王子様の反応を確認。


 やはり、好感触な笑顔をみせてる!


「令嬢は使ったほうがいいかもね。後でストローも探そう」

「はいっ。それと! パフェ用の長いスプーンも欲しいですね」

「デカいグラスがあれば、スプーンもあると思うけど――」


 そうそう、パフェグラスがあるかないかが問題……


「ありましたよ!」


 棚の隅に!

 高級店で見た小さいグラスの倍ある逆三角形のと。

 バケツみたいなデカ盛り用!


「デカいのあったね!」

「はい!」


 どちらにしようかな〜、デカ盛りのほうがお城っぽい。ゴージャスにフルーツを盛ってもらって……


「こっちは、大食い選手が食べるやつみたいだね!」


 王子様が笑いながら指差したのは――


 デカ盛り用。大食い選手と言われたら選べない……

 令嬢の可憐さを優先させなきゃね。ヒロインだもん!

 ま、普通に大きいのでもじゅうぶん。

 笑顔で普通サイズを指差し!


「私は、こっちにします!」


 王子様も納得の笑顔!


「それを買おう! 値段は」


 グラスの台座にシールが貼ってある。税込み……


「1500ルンか。安いね!」

「安いですね! それじゃ、王子様の分も」

「おれはいいや! 食べるのを見てるだけで……」


 どこか怖がっている笑顔。

 このグラスはそんなにデカくないのに。

 ま、強制するとオペラケーキの悪夢が蘇るしいいか。


「それじゃあ、私の分だけ!」


 もう手に持っちゃってるし。購入決定!


「よし。後は、プリン・ア・ラ・モード用のだね……上にあるよ!」


 あった! 


 透明のシンプルなグラスでフチが花びらのように波打っていて、大きさも丁度いい――

 プリン・ア・ラ・モードを盛った想像しても完璧。

 求めていたデザートグラスだ!


「ありましたね! よかった!」

「よかったね! けど、十個あるかな? ジュースのグラスも」

「どうでしょうね……」


 その心配があった。店員さんに確認!


「ジュースグラスは在庫も合わせて三個でデザートグラスは五個しかありません。十個ですと取り寄せに日数がかかるかもしれません」

「そうですか……なら、大丈夫です。ありがとうございました」


 王子様が丁重に礼を言い、店員さんは去っていった。

 困った顔で見送るしかない。

 ここになかったら、


「どうしましょう?」

「そうだね――」


 王子様が顎に指を当てて考えてる、カッコイイ。眺めながら待とう。


「――デザートグラスは一個買って帰って、職人に同じのを作ってもらおうか?」

「そうしましょう!」


 王子様のアイデアと職人さんがいてくれてよかった!

 さっそく、カゴにグラスを入れてと。


「ジュースグラスは、おれたちの分だけにしようか?」

「そうしましょう――」


 それだけでも、二人だけの特別感……!


 ジュースグラスもカゴに入れて。


「これで、食器の購入は完了ですね!」

「うん、無事良いものがあってよかったね! それじゃあ、ストローとスプーンを見にいこうか」

「はいっ」


 カトラリーコーナーに移動。

 棚に沢山並んでる。シンプルなのからデザインされたものまで。


「あっ、ストローがありますよ――」


 透明なシンプルなものと色付きと、ハートとか星に途中で曲ってるのもある。


「可愛いですね……!」

「可愛いねっ」


 あっ、ペアストローもある!


 王子様も気づいた……照れたように笑った!


 ――なに、この気持ちは……?

 気づいてほしかったのに。

 気づかれると猛烈に恥ずかしいですわぁ……私まで笑ってしまう。

 多分、両想いだけど――まだ、恋人同士じゃないからだ。


 意識すると照れが勝ってしまう!


「こ、この星の形とか可愛いから、何種類か買っていいですかぁ!?」


 恥ずかしさを誤魔化して、大量のストローを鷲掴みにしてしまった……!


「うん! 好きなだけ買いなよ!」


 王子様も助かったみたいに笑ってるし、いいか。


 あぁ、ここでペアストローを手にして――

 私たち恋人同士になって、これ使いませんかぁ?

 とか聞ける小悪魔令嬢だったらなぁ……

 最短ルートで恋人同士になれるかもしれないのに。

 ふぅ。

 そういう天性の才能というか、魅了の魔法みたいなのは備わってないのね。

 残念……いや、魅了を使う令嬢はだいたい、ざまぁされるし。使えないほうかいいんだ。


 地道に恋人同士を目指さなきゃ――!


 気持ちを切り替えて顔を上げて!

 ん? 王子様が隣にいない。


「ほら、長いスプーンもあるよ!」


 王子様、スプーンコーナーまでいって距離あけてるし。道のりは遠いみたい。


 ま、二三歩で隣にいける距離だし。笑顔で手招きしてくれてるし。前向きに笑顔!


「ありましたね、よかったぁ!」

「プリン・ア・ラ・モード用のスプーンは長くなくていいかな?」

「そうですね、大丈夫です!」

「じゃあ、城にあるのでいいね」

「お城のスプーンにしましょう」


 何もなかったように――


 ほのぼのした雰囲気に戻れたし。

 私たちはまだこれでいいんだ。

 買い物も完了かしら?

 一度、棚を眺めてみてと――あ、木製のスプーン。

 そうだ、王子様にこれを取って見せてと。


「味噌汁のカップは木でしたよね。スプーンも木にしてはどうでしょう? ぬくもりがあっていいんじゃないでしょうか?」


 王子様も木のスプーンを手に取って、笑顔になった!


「うん、木のほうがいいね! これも十本買おう。カップに合う大きさはこれかな」

「ツヤのあるのとないの、これなんか持つとこがリアルな木の枝みたいですよ!」

「本当だ、迷うね!」


 カップと同じく王子様が厳しい眼差しで見て、こだわり抜き選んだのは……持ち手が枝のスプーン!


「これにしよう! 見た目の、なんか珍しい異世界っぽいところが気に入ったよ!」

「私も!」


 ご満悦でスプーンをカゴに入れて。


「さぁ、レジに行こうか」

「はいっ」


 王子様の後について通路を行く――


「あっ」


 棚を見て王子様が止まった!?


「お茶碗みたいなカップがあるね」

「ほんとですね――」


 ご飯をよそうのに丁度よさげな陶器のカップが並んでる。


「牛丼用のどんぶりもあるかな。城にあるのより、こういう庶民的な店のがいいと思うんだけど……」


 王子様と一緒に探してみよう!


 どれどれ、ちょっと大きめのがこっちにある。

 どれも牛丼に丁度よさそう、後はどんぶりの見た目ね……


「こ、これは!?」


 王子様に指し示した先には――!


 白い陶器に青いチェックと赤いチェック模様のどんぶり。

 前世の牛丼チェーン店のに似てる気がするけど。

 王子様の反応は?


「これだ!」


 両手に持って、歓喜してくれた!


「あったね! 丁度良いのが!」

「ありましたねぇ!」

「よし、これも十個……」


 また止まって考えだして、小さいカップのほうを見た?


「こっちの小さいのにも同じ模様のがあるね」

「そうですね?」

「女性はこっちに盛るミニ丼のほうがいいかな? サバノミソニの後に出すつもりだし少なめで。ウタカタリーナはどっちがいい?」


 なんて、繊細な気遣い。私はもちろん――


「ミニ丼のほうで」

「それじゃあ、テノールード王子には普通のどんぶりで出すとして、ソプラノーラさんたちにはどちらか選んでもらうとしよう」


 普通のとミニを五個づつ購入!


「これで、全部揃ったね!」

「はい!」


 達成感のある笑顔を交わしつつ、レジへ。


 お会計も一万ルンいかない額で、安心感。

 満足して店を後にできる。


「ありがとうございました――」


 王子様と仲良く笑顔を交わして、退店。


 友達以上恋人未満の――理想のお買い物ができて最高でしたわ!


 ありがとう、カチャカチャ。またね!

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