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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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馬車乗り場で料理の話

 城の馬車乗り場〜


 宰相様がいる。


「お供いたします」


 いつもの冷徹な態度に対して、王子様は笑った。


「大丈夫だよ、テラー。買い物くらい二人でできるって。ね?」

「はい!」


 二人のほうが、お忍びデートになるし!


 そういえば、異世界で買い物したことないけど。

 王子様となら大丈夫!


「そうですね――」


 二人で行かせてくれる?


「買い物といっても、代金は城に請求されますので支払いの必要はありませんし」


 そうなんだ。


「そういえば、今まで支払ったことなかったね」

「そうですねぇ」


 私もない。王子様のおかげね!

 これが、スパダリの溺愛なのね……快感!!


「商品も城に送ってもらうので持ち帰る必要もありませんし、お選びいただくだけですので」


 楽で助かりますわね――これが、王族!


「殿下のお買い物ということは、御者から伝えるとして」

「それなんだけどさ、テラー」

「はい」

「今回は、王子ってことは知られずに買い物したいんだよね」


 そうだった。王族としての買い物はまた今度――


「お忍びで、お願いしますわ」

「お忍びですか。かしこまりました」


 さすが、宰相様。話が早い!


「では、代金を用意いたします。それから、馬車も」


 黄金の王家の紋章がバーン! とついてる馬車。


 紋章は王様と王妃様? の横顔。二人の口から音符が出てる。オペラ歌ってる紋章ね。


 それじゃなくて――


「お忍び用の、こちらの馬車にいたしましょう」


 紋章の無い、私の馬車に似てる普通の馬車だ。


「これに乗ろう! あ、それから、店で欲しい食器が見つからなかったら他の店にも行きたいんだけど。いいかな?」

「他の店ですか?」

「うん、庶民が行く普通の店」

「かしこまりました。それとわからぬように、護衛の者を町に派遣いたします」

「助かるよ、ありがとう!」

「ありがとうございます!」

「では、代金と護衛を用意いたしますので、少々お待ち下さい」


 宰相様は走って行った。


「ほんと、テラーは仕事ができるよね」

「ほんとですねぇ」


 かっこいい……


 はっ!?


 罠だ!!


 王子様が横目に見てる、探るような視線を感じる!


「ほほほ、ほんと、早く良い人が見つかるといいですね!」

「そうだね」


 まだ、疑われてる。


「お弁当作ってくれるような!」

「そうだねぇ」


 お弁当という、ほのぼのワードのおかげか冷酷さは消えた? けど、まだなんとも言えない。

 こっちを見てくれない。

 私……そんなに信用ならない?

 確実に浮気性のある、ふしだらな、あばずれ令嬢って思われて警戒されてるよね?

 確かに、宰相様やらルバート様やらリリック様やら。

 惚れっぽくはあるけど、思いとどまってる!

 浮気はしてないし! する気もない!

 この際、ハッキリわかってもらいたい!!

 だけど、浮気はしませんとかダイレクトに言うのも大げさというか必死すぎというか。


 もっと、正統派ヒロインらしく可愛く伝えたい!


 ――そうだ!


 お弁当だ!!


「私が――」


 思わせぶりに間を置いて、


「お弁当を作るのは」


 真剣な顔を王子様に向けて、


「王子様だけですよ?」


 可愛く首をかしげて、どや!!?


 王子様、こっち見た!


「そうなんだ……」


 嬉しそうに笑ってくれた!


「はい!」


 笑いあえた!!


 ふぅ。

 宰相様に、お弁当作るのを思いとどまってよかった。

 作ってたら、確実に断罪されてたな。怖い怖い。


 そうだ、お弁当といえば――


「王子様、見てほしいものがあるんです!」

「なにかな?」


 馬車に置いてしまってた、料理の本!


「これは、ジパングの料理の本なんですが」

「ほんとだね」


 王子様が開いた本のページをめくってと、


「ミソシルが載ってるんですよ」

「ほんとだ! そのまんま、ミソシルだね」


 王子様の目が見開かれた。

 声音も私につられてか、神妙だ。


「はい。それから――サカナノミソニも」

「サカナノミソニ。見た目はまんま、サバノミソニだね」

「はい」


 王子様、笑った?


「さすがは、日本をモチーフにした国ジパングの料理だね。なにか、嬉しさ……だけじゃなく、懐かしささえ感じるよ!」

「そうですね!」


 一緒に笑顔になっちゃう!


 確かに、そうだけど――


「それだけではなく、問題もあるのでは?」

「うん?」

「サバノミソニは王子様発案の料理として、この国に広まっていますから」

「そうだったね! それが、ジパングの料理本に載ってるのはおかしいか。サバとサカナで違いはあるけど」

「どうしましょう?」


 王子様、考えてる――また、笑った?


「偶然、同じ料理を思いついたことにしようか?」

「そうですね!」


 それもいいか。


「ミソシルも?」

「うーん」


 今度は悩んでる。


「さすがに、いくつも偶然同じになるのは無理があるかな?」

「ですねぇ」

「それじゃあ、ミソシルはジパングの料理を真似て作ったってことにしようか? 料理本もあることだし」

「そうですね!」


 よし、決まった。


 安心したいけど、別の不安が出てきた……


「ジパングの料理を、おもてなし料理に出すのは問題ありませんか? この国の料理じゃないのは変だと思われたり。外国の人をもてなす料理って、普通は自国の料理ですよね」


 今さらだけど、気づいたからには気になる。


「そうだね……」


 腕を組んで考えてる王子様もかっこいい。


「自国の料理は滞在中の別のご飯の時間に食べてもらうとして。ジパングとは同盟国だから、おれたちが作るのは問題ないと思うけど」


 王子様はまた悩みだした。待とう。


「――テノールード王子からしたら、戦いの時にこちらの後方支援をして自分たちと敵対した国の料理だからね。一応、オペラーラ王国と終戦して和解した際にジパングともしているはずだけど――良い気はしないかもね」


 やっぱり、問題が!?


 そのことをソプラノーラ様が知ったら……


 私たちと敵対した国の料理を食べさせる気!?

 宣戦布告と取ります!

 今度はオペラで勝負なさい!!


 ボッコボコにされて料理と一緒にゴミ箱に――

 怖い。


「王子様、どうしましょうっ」


 王子様も眉を寄せて、深刻そうに考えてる。


 ここに来て、メニュー変更?


「このまま、出そう」

「大丈夫でしょうか!?」


 王子様の、安心させるような笑顔……


「同盟国の料理だとまず説明して食べてもらおう。そして、セリアー王国もジパングと同盟国にならないかと提案してみるよ!」

「同盟国に!?」

「うん。このオペラーラ王国とも同盟国になってもらうように話をする予定だったからね。丁度いい。三国まとめて同盟国を目指そう!」


 なんて、大胆な王子様……頼もしい瞳が私を見てる。


 ついていかなきゃ!!


「そうしましょう!」

「よし! そうと決まれば、もてなし料理作り! このまま頑張ろう!!」

「はい!!」


 決意の笑顔を交わして――


 ほっとした空気が流れたと思ったら、王子様が勢いよく本を閉じた!?


「そうだ、そうと決まったら、ジパングに連絡してもらって話しておかないとね! 父上のところに行ってくるよ。待ってて!」

「はい!」


 走っていく後ろ姿に手を振って、お見送り!


 王子様も仕事が早い。かっこいい背中……


 戻ってくるのを待っていますわ!


 本でも読みながらにするか――それにしても、これからは堂々とジパングの料理本を見ながら料理できる。

 きちんと分量と作り方がわかるのは助かるよね。


 あ、肉じゃが。

 王子様に作ってあげたいなっ。

 食べたい家庭料理とかでもランキング一位よね!

 きっと、喜んでくれるはず。

 まさか、肉じゃがを異世界で作ることになるなんて……


 王子様とは前世で結ばれるはずの相手だったのかも。


 お母様に言ったときは、とっさの誤魔化しだったけど。今は、本当に思う――


 王子様は運命の人なんだ!


「あっ、王子様!」


 笑顔で手を振りながら、戻ってきてくれた――

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