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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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ピクニック

 馬車の中〜


 来たときと同じ位置に座ると、宰相様は隣に本を置いた。


 お礼を言っとこ。


「私の分まで運んでくださりありがとうございます。重かったですよね」


 笑顔、にこっ。


「いえ、問題ありません。仕事ですので」


 表情も崩さす冷徹な返答。


 やっぱり、カッコいい! 宰相様としてね。

 安心して、王子様の隣に座っていよう。


 馬車が動き出した。

 小窓から見えていたスタジオが、あっという間に消えていく……


「来てよかったね」


 景色を眺めていると、王子様が笑いかけてきた。


「そうですねっ」


 やっといつもの、ほのぼの? した笑顔を交わせた気がする。


 王子様は若干お疲れ気味にも見える。

 演説で消耗したのかも。

 それに、その前に膝がガクガクすることもあったし。

 そのことを聞いてみよう。


「大丈夫ですか? ソプラノーラ様とテノールード様のこと」

「うん。驚いたしショックだったけどね」


 力なく笑ってる……


 気持ち、わかりますわよ。

 精神的な浮気ってやつ? されてたんだもんね。

 私も、きょとん令嬢みたいな王子様の心を奪う存在が一番怖いし。

 絶対、取り返せねぇ……ってなるだろうし。

 奪われてしまった王子様に、なんて声をかければいいかわからない。

 私がいますわ! って、手をギュッと握るとか?

 したいけど、宰相様が見て……気まずそうに窓のほうに視線をそらしてる。

 よし! そのまま気づかれないように無言でやってみよう!


 ギュッ――


 私がいますわ!



 握り返してくれた!


「ありがとう。もう大丈夫」


 こっちが気遣われているような優しい笑顔……


 王子様! 好き!

 一生ついていきますわ!


「二人のことは祝福してるから」

「私も!」


 笑顔を交わせて気持ちも一つになれた!


「もう何も気にしないで。舞台と同盟交渉が上手くいくようにしよう」

「はい! あと、おもてなし料理も!」

「そうだね!」


 いつもの笑顔を交わせた!


「お気持ちが決まったようで、よかったです」


 宰相様も安心したようで、王子様を見た!


「うん。テラーも気にしないで。二人には大事な客人として接してくれ」

「かしこまりました」


 こちらも話が決まったようで、よかったです。


 ほっとした空気が流れだした――

 安心して……本でも読もう。

 王子様と繋いだ手を、名残惜しく離してと。

 一番上にあるのを取って――


 "オペラ用語集" か。

 これこれ、オペラのこと何も知らないの気になってたから。勉強しなきゃね。


 まずは――オペラとは。歌と演技と音楽が融合した総合芸術です。なるほど。なんか凄い。

 登場人物のセリフは歌で表現されます。そこが一番の特徴だし魅力だよね。

 登場人物の喜怒哀楽や繊細な感情を巧みな技法で表現し歌声で伝えるのがオペラ歌手です。凄すぎて、できる気がしねぇですわ……そんな私が演技指導なんかして難しい表現を頼んでしまった。デスピーナ様ならきっとできますわ……お任せします!

 オペラ歌手の歌声には様々な声域があります。

 ソプラノ――女性の歌声で一番高い音域です。ソプラノーラ様の名前の元にもなってるよね。

 メゾソプラノ――ソプラノより低い中間の音域です。メゾか、ばぁやの名前だ。

 いやいや、そんな見方じゃなくて真面目に勉強勉強。

 ん?

 王子様の視線も本にそそがれてる。


「熱心だね」

「はい。勉強しておかないとと思いまして。これからまたオペラを観るし、オペラのお話を誰かとすることもあるでしょうから」

「うん、そうだね! 任せるよ!」

「え?」


 そうだね! 一緒に勉強しよう! じゃないんかい?


「王子様は?」

「もちろん、勉強するよ。けど、オペラについては援助のほう、なんていうか実務的なことのほうを主に任せてほしいかな!」

「そう、ですね」


 なんか納得いかないけど。


 王子様パワーに飲まれて流されそうになってる。

 ま、私もデスピーナ様にお任せします! って思ったところだから何も言えないのもあるけどね。不満を。


「実務的なことでしたら、殿下」


 宰相様が話に加わった。


「オペラに使う国家予算など、今まで陛下にご相談して決定しておりましたが、これからは殿下にもよろしいでしょうか?」

「うん、そうしてくれ! 父上にも言っておこう」

「陛下も感激なさることでしょう」

「そうだね!」


 ……いい話に私の不満が流されていく。


 ま、いいか。

 王子様なら、お勉強もしてくれることでしょう。

 さぁ、続き続き――――

 馬車の中が静かになって、集中できるというか。

 眠くなってきた。

 もう無理だ。目を閉じてしまって開けられない。

 スタジオに行った後に本読んで疲れたみたい。お勉強中に居眠りなんていけないけど……


「眠い? 勉強は後にしなよ」


 王子様のお優しさに甘えよう。


「はい……」


 そうと決まれば、馬車に揺られるだけ。




 お城?〜


 馬車が止まった……ドアも開いた……起きなきゃ……


「お運びしましょう」


 宰相様、頼みま


「いいよ、任せて」


 王子様が……?


 肩と膝の下に腕を回してきた。

 お姫様抱っこしてくれるんだ、嬉しいな……


「よっと……」


 体が浮いた。


 馬車から出たみたい。


「客室のほうへ」

「うん」


 運ばれていく……


 王子様のぬくもりと頼もしさを感じる……

 けど、重くないかしら?

 軽々ってより、わっせわっせって運んでる気もするし。重くないですか? って聞きたいけど。寝たふりしてたほうがいいのかしら? わかりませんわ……


「こちらへ」


 悩んでる間に客室についたみたい。


 ベッドに寝かせてもらって、我慢できずに目を開けてしまった。

 王子様の笑顔が覗き込むように……


「昼食ができたら、起こしにくるよ」


 囁くように優しく言ってくれた。


 なんて、優しい王子様………


「ありがとうございます……」


 目を閉じると、扉が閉まって静かになった。


 寝よう――



「ん?」


 寝たような寝てないようなだけど。


 目が完全に覚めた。

 こう意識がはっきりすると――お姫様抱っこしてもらったことが夢のよう――はっきり味わいたかったな。

 仕方ない、またの機会に期待!

 さぁ、起きよう。

 大きくて綺麗な真紅のベッド。木製のアンティーク調の家具、花柄の壁、バルコニーもあるのね。ここで待つのもいいけど、王子様に会いに行こう。

 昼食と言ってたから、キッチンにいる?

 とりあえず、部屋を出て廊下。どっちに行ったらいいんだろう? 階段があるから降りてみよう。

 あ、途中にお化粧室がある。身綺麗にしてと。



 階下〜

 玄関ホールだ。

 ここからなら、キッチンに行ける。


「あ、王子様!」


 やっぱり、キッチンのほうから来た。


「あ、ウタカタリーナ」


 目覚めに王子様の笑顔が気持ちいい。


「起こしに行こうとしたとこだよ」

「ありがとうございます。すっかり目が覚めました」

「お昼食べようか?」

「はい!」


 お腹がすいてきた!


「サンドイッチ作ったから、庭園で食べようか?」

「庭園で!?」

「うん。行こう!」


 行こう行こう!




 庭園〜


 花壇と噴水のそば、テーブルとイスが用意されてる。

 白いテーブルクロスの上には大きなバスケットとティーセット。


「わぁっ、こういうの憧れだったんですよ!」

「なんとかウサギだっけ。お茶会みたいだよね」

「三月ですね」

「それそれ、三月ウサギ。お茶をどうぞ」

「ありがとうございます――」


 席について、カップを受け取るだけで楽しい。


「サンドイッチもどうぞ」


 王子様がバスケットを開けてくれた。


「おいしそうですねぇ!」


 思わず、腰を浮かして見てしまう。


「これはタマゴサンド、異世界でも定番らしいよ」

「へぇ〜」

「これはツナマヨ。非常用の保存食にツナ缶があったから作ってもらったんだ」

「ツナマヨ!」

「コックも、テラーも、おいしいと言ってくれたから国中に広めて定番にしよう」

「そうしましょう!」

「それから、こっちも異世界でも定番のハムとチーズのホットサンド」

「うんうん、とろけてるチーズはどこの世界でもおいしそうですね」

「ホットサンドなら、先にこっちから食べてほしいな。ちょっと考えて作ってみた和風サンドなんだ」

「王子様が作ったんですか!?」

「うん。ガッツリ食べたかったし無性に食べたくなった生姜焼きとキャベツの千切りを挟んでみた!」

「生姜焼きサンド!」

「味見してみたら、おいしかったけど。どうかな? 食べてみて!」

「はい!」


 さっそく、お皿に取ってと。


 生姜焼きの肉と千切りキャベツで分厚いホットサンド。

 王子様しかいないし思い切って、かじろう!

 ガブッと――生姜の風味が口に広がる。


「おいしいです! まさに生姜焼き! キャベツにもパンにもよく合いますっ」

「よかった――うん、おいしい! マヨネーズかけてもイケるよ」

「かけてみますね」


 王子様を見習って、たっぷりめに。ガブッ


「――うんっ、おいしいです!」


 止まらない! 


「これも定番にしましょう!」

「そうだね!」


 王子様が考案して作ってくれたサンドイッチ。


 おいしいし幸せ!

 ふぅ。全部食べた。


「次は、ツナマヨをいただきますね――うん、これもまさにツナマヨ!」

「名前もそのままツナマヨサンドでいいかな? 他に浮かばないし」

「そうですねぇ。浮かびませんねぇ」


 考えるより、食べていたい気分でもあるし……


「次は、タマゴサンドを」


 コックさんというプロが作った、濃厚で分厚いタマゴサンド。


「これも、おいしいです!」

「市販のとかとはタマゴの量が違うよね。お城のタマゴサンドって感じ」

「ですねぇ」


 王子様も似たようなこと思ってたんだ。


 お城でサンドイッチ食べられるのも幸せだけど。

 王子様と笑いあって食べられて、ほっとできた――

 やっぱり、この瞬間が一番って言えるくらい好き!

 お腹も心も満たされていく――


「おごちそうさまでした」


 お茶を飲んで、落ち着いたら。


 お返しに私も何か作りたくなってきた!


「サンドイッチ、ありがとうございました! 今度は、私が何か作りますね」

「ほんと!?」


 なんて、期待にキラキラした眼差しと笑顔。


「はい! えっと、そうですねぇ」


 何も浮かばない。何かサンドイッチみたいなもの?


「そうだ、お弁当! 作ってきます!」

「お弁当!? うんっ、楽しみにしてる!」

「はい!」


 サンドイッチ以外詰めるものが浮かばないけど……


 そうと決まれば、家に帰って準備しないと――!

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