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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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演技指導でわかる!? お互いの気持ち!

「殿下、よろしいでしょうか」


 話が一段落するのを見計らったように、誰か来た。


 この人は、舞台監督。

 五十くらいのオジサマ。

 ちゃんと、ブラックスーツ着てるからかオペラ歌手にも見える。


「なにかな?」


 王子様の、にこやかな対応。


「これから舞台稽古がございます。ぜひ、ご覧になってくださいませ」


 舞台稽古――


 王子様が伺うように、こっち見た。


「見させてもらおうか?」

「はい!」


 ぜひ! なんか、理由はないけど。観たいですわ。


「ぜひ、観させてもらうよ」

「ありがとうございます。では、舞台のほうへ」



 稽古用の舞台〜


 オペラ劇場と比べると天井は低いしコンパクトだけど、客席もあって五十人くらいは座れそう。

 舞台に立たせてもらうと。

 何もしないのに、いい緊張感が味わえますわ。


 客席の最前列真ん中に座らせてもらってと。

 稽古がはじまりましたわ。

 主人公のアルケミスが旅立つところからね。

 今回は、リリック様にも注目してみましょう。


「私は旅立つ〜〜」


 ルバート様のアルケミス、


「近くで観ると迫力がありますね」

「そうだね」


 王子様と話しつつも、目は離せませんわ。


「私もついていこう〜偉大なる旅へ〜」


 リリック様! 素敵!


 あれが、バリトンなのね。美しい響き!

 あぁ、先生として手取り足取り教えてもらえていたら……今だけ、今だけ妄想に耽らせてもらおう。

 今回はオーケストラがないから、歌声だけがよく聞こえる。

 そうして美しい調べのなかに浸っていると、


「船旅の場面、本当に船に乗ってる気分になるね」


王子様が語りかけてきた。


――現実も大事に答えなきゃね。


「そうですね。嵐の場面、思わず応援したくなりますわ」


 場面は新天地へ。

 アルケミスとオペラッタが出会ったとこで、ふいに静かになった。


「前半部分の通し稽古が終わりました」


 あ、終わったんだ。目をしっかり開けよう。


「いかがでしたでしょうか?」


 王子様の隣に座る舞台監督が聞いてきた。


「凄くよかったよ。ね?」


 自信がないのか王子様が聞いてきた。


「凄くよかったです」


 私も、どこをどうと詳しく聞かれると困るけどね。


「迫力がありましたわぁ」

「そうそう。旅立ちから船旅まで特に大迫力だった」

「ありがとうございます」


 監督が嬉しそうに笑った!?


「前半部分は旅立ちと船旅という勢いと力強さの表現を大事にしておりまして。迫力があると言っていただけると感激です」


 そうなんだ、言ってみてよかった。


 舞台上の皆さんも、お礼のお辞儀した。


「殿下、ご指導をいただけませんか?」


 ルバート様が無茶振りしてきた!


「え? いやぁ、無理だよ」


 王子様は当然のごとく、苦笑いで拒否。


「どうか、ご意見だけでも」


 食い下がるルバート様。


 王子様がどうしようか困ったような笑顔を向けてきた。

 期待の笑顔と眼差しを返してみよう!


「そうだね、意見なら……」


 何かあるのか、王子様は立ち上がった。


「ここはどこだ〜の場面だけど。もう少し、うろたえて慌てたほうがいいかな。船が偶然辿り着いて、知らない地に来たということだから、ね?」

「知らぬ土地に来て、うろたえ慌てるですか。確かに」

「新天地についた喜びもあるだろうけどね。難しいだろうけど、それらを織り交ぜてみるといいと思うな。多分」


 多分に自信のなさがあるけど。


 王子様、この異世界に来たと気づいたとき同じ気持ちになったのかな?

 ここはどこだ〜って、うろたえ慌てて。

 異世界!? って喜びもあって。

 だとしたら、面白いな。


「それから、オペラッタに出会った場面だけど。やっと、話せる人に会えたって嬉しさと安心感がほしいかな」


 王子様がチラッと、こっち見た!


 もしかして、私と出会ったとき?

 やっと、話せる人に会えたって嬉しくなって安心してくれたの?

 きっと、そうなんだ――

 王子様のまっすぐな眼差しと笑顔を見ればわかる。


「私から言えることは、それくらいかな。後は申し分ないよ」

「ありがとうございます。さっそく、演技に取り入れさせていただきます」


 ルバート様は満足したようで、うやうやしくお辞儀した。


「ウタカタリーナ様にも、ご指導いただきたいですわ」


 デスピーナ様が無茶振りしてきた!


「いえぇ、私は」


 王子様、期待の眼差しと笑顔を向けないで―!


「王子様と違って、何もわかりませんわ」

「そうでしょうか?」


 デスピーナ様も食い下がってきた!


「いつでしたか、セリアー王国のテノールード殿下を歓迎したパーティーで、お料理を食べた感想を歌うように語っていましたわね。あの、ビブラートの響き。思わず、一緒に食べたくなりましたわ」


 力説してる。あの場にいたんだ――


 皆様、うなずいてる。

 見られてたんだ、お恥ずかし。けど、食べたくなったのなら私の食レポが心に響いたってことなんだ。

 嬉しさが湧き上がってきた!


「あのとき、あなたは只者ではないと確信いたしましたわ」


 デスピーナ様が見つめてくる。


 皆様、うなずいてる。そんな風に見られてたんだ。

 戸惑うけど。王子様を婚約者から奪った令嬢とは思われてなかったこと喜ぼう。

 そして――


「ならば。少しだけ」


 王子様のほうをチラッと見て、と。


「アルケミス様と出会った場面ですが。最初はただ一緒に歌うことが嬉しいという風にしてみてはいかがでしょうか。そして徐々にアルケミス様と歌えることが嬉しいという風にしていくといいと思いますわ。その、恋心が芽生えてきたという風に……」

「恋心、そうですわね。徐々にですわね」


 デスピーナ様はわかってくれて、笑顔をみせた。


 思い切って言ってよかったけど。

 頬が赤くなりそうで。手で隠しとこ。


 王子様は……チラッ

 意味深な、若干嬉しそうな――? 

 笑顔で、こっち見てる! 伝わったのかしら?

 そんな見つめられると。


 嬉し恥ずかしですわ……!

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