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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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イケメンと妖精たち!

 オペラスタジオ前〜


 到着。

 意を決して、馬車を降りる。

 スタジオは石造りの大きな建物。

 宰相様についていき、中に入る――

 玄関ホールに、デスピーナ様とルバート様が出迎えに来てくれた。


「ようこそ、おいでくださいました」


 二人は声を揃えて、微笑んでお辞儀した。


 お似合いですわ。

 そう思ったのに――

 ルバート様が思いつめた顔でこっち見てきた!

 そうだった。

 私が "ルバート様〜" ってフラフラにならずに帰ったから頭かかえてたんだ……そんな瞳で見ないで。

 デスピーナ様がムッとしだした! 

 どうすれば…………

 そうだ! 


「ルバート様〜! 会いたかったですわぁ〜」


 フラフラ〜――


「えっ」


 デスピーナ様とルバート様は同時に驚いた。


「舞台と楽屋での素敵さが忘れられなかったですわ〜」

「そうでしたか!」


 やはり! と言いたげにルバート様は笑顔になった。


 見つめあう私とルバート様。

 さて、うっとりした笑顔から悲しげになってと。


「でも、ここまでですわぁ」

「え?」

「私には王子様がいますので」


 ヒソッ


「ルバート様にはデスピーナ様が」

「そう、ですね……」


 つられたように悲しげな顔のルバート様、


「王子様には勝てない!」


 めっちゃ笑顔になって王子様を見た!


 いや、勝てますけど? って笑顔。

 王子様の顔を立てて、引きさがってあげますよ的な。

 余裕で楽しそうにデスピーナ様に笑いかけてる。

 そうそう。承認欲求が満たされたなら、デスピーナ様のそばにいなさい。

 見つめあってる。もう、一切こっち見ない。

 ま、ねちっこくしつこくされるよりいっか。

 ふぅ。うまくいった。

 私も王子様のそばに戻ろう――


 王子様!?


「気が済んだ?」


 ニッコリしてるけど。なんて、怖い笑顔。


「はい……」


 違うんですよ!


 今のやりとりは、ルバート様に私を諦めさせるためのもので――いつか話そう。


「では、セレナード殿下、ウタカタリーナ様、宰相様」


 ルバート様が呼んだ。


「どうぞ、こちらへ。ご案内いたします」


 いよいよ、たくさんの人と向かい合うのか……


 気持ちを切り替えて、ドキドキドキドキ。

 いざ!



 明るく広い一室〜


 たくさんの人が集まってる!

 何人いるんだろう? ザッと見たところ五十人はいないみたいだから。フィナンシェは足りそう。


「ようこそ、おいでくださいました」


 たくさんの綺麗な声が揃って迎えてくれた。


 みんな、うやうやしくお辞儀してる。

 私も――お辞儀が済んで頭は上げても、視線は下にしたまま上げられなくなってしまった。

 みんなの好奇の視線が向けられてるのが、わかるから。

 助けて、王子様……


「皆さん、初めまして!」


 王子様が笑顔で声をかけ、みんなの視線を集めてくれた。


 さすが、私の王子様。

 助けてほしいときに助けてくれる……


「オペラーラ王国王子セレナードです! こちらは」


 こっち見て固まった。


「えっと」


 考えてなかったんだ。私の紹介文。


「昨夜、一緒にオペラを観た令嬢のウタカタリーナさんです!」


 うん?


 ま、そうだね。

 それだけの令嬢? って気がして物足りないし――つい見てしまった――みんなも同じこと思ってそうな顔してる。

 けど、下手に騒ぎが起きない無難な紹介だった。

 これでいいのかも。

 よし、笑顔で挨拶しなきゃ!


「初めまして!」


 目が合わないうちに深々とお辞儀。


「初めまして」


 みんな挨拶を返してくれた。ひとまずよかった。


 頭を上げて、目線は下に。


「では、殿下」


 宰相様の声。


「皆に、激励のお言葉を願います」

「うん――皆さん、国の宝であるオペラに日々身を捧げてくれてありがとう!」


 みんな、うやうやしくお辞儀をしてる。


「昨夜のオペラ、素晴らしかった!」


 王子様の渾身の、お褒めの言葉。


「ありがとうございます!」


 また綺麗な声が揃った。


 チラッと見たところ、みんなが感激してる。

 涙を拭う人もいて。ホッとしたような、ため息も聞こえた。

 王子様にオペラを観てもらうことって、物凄く緊張する大舞台だったんだろうな――


「これから、私は陰ながらオペラを援助し支えていきます! 皆さん安心して、オペラをしてください!」


 陰ながらが強調されてたけど。


 わぁっと拍手がおこった。

 みんな、王子様からのパトロン宣言を待ってたんだ。

 よかった、よかった!


「では、皆さん。これからも頑張ってください!」


 あ、頑張れと言えば……王子様と目があった。


「そうだ、お菓子を持ってきてたね。テラー」


 宰相様が箱を抱えて進み出た。


「皆さん、こちらは殿下がお持ちくださった菓子です。このフィナンシェには、殿下とウタカタリーナ様が皆さんを思い頑張れと声をかけられています」


 知られてたか。王子様と照れ笑い。


「食べれば、力を授かることでしょう」


 チカラを――うん!


「力を授けよう!」


 王子様が力強く宣言した!


「ありがとうございます!!」


 力強い綺麗な声が揃った。


 みなさん、頼もしい笑顔ですわ。

 ソプラノーラ様たちに観せる舞台も成功することでしょう。

 ね? 王子様。

 そうだね、と言うような笑顔が返ってきた――


「食べる前から力を授けられたみたいだね」

「そうですね。でも、食べてもらいましょう」

「そうだね! 皆さん、遠慮なく食べて!」


 みんな、食べはじめた。


 特に、わぁっ! これは! 力がみなぎる!

 みたいな反応はない。う〜む、おいしいって感じでお上品に食べてる。


「おいしそうに食べてくれてますね」

「そうだね」


 王子様とちょっとスカスカした喜びを交わす。


 スキルで力を授けられなかったのにくわえて、私たちが作ってもないし、手応えがないのも当然か。

 なんにしても、おいしそう。私も食べたい……

 ん?

 中年の男性がこっちに来た。


「王子様! 私は舞台監督をしております!」


 舞台監督さんか。うやうやしくお辞儀した。


 援助について待ってましたと、お礼を言ってる。

 嬉しそうだ。よかった。

 話が一段落したところでまた、誰か来た。

 イケメン!


「セレナード殿下、初めまして。私は今回の舞台で主人公の親友役と歌の指導もしております、リリックと申します」


 リリック様ぁ……


 綺麗な深みのある声。パンフレットには美しいバリトンの使い手とあったっけ。ダークブラウンの髪と瞳。背が高くて頼もしい感じ。主人公と冒険する姿も似合ってた。アラサーかしら? 優しい落ち着いた大人の魅力にあふれてる……こっち見た!


「ウタカタリーナ様」

「は、はいっ!?」


 なんて、優しい笑顔。


「やっと、会えましたね」

「え?」


 なんて、意味深な言葉……


「私は、あなたの歌の講師をするはずだったんですよ」

「あっ!」


 そういえば、お母様が。


 お城に通い始めた頃、歌の講師を雇おうかって言ってきたっけ。

 あの時――

 歌? なにそれ、おいしいの?

 みたいな反応せずに雇ってもらっていれば!

 このイケメン講師、リリック様と色々おいしい思いができたのに……!!


「くっ」


 くやんでも、くやみきれませんわ!


 オペラルートには戻れない。残念。

 リリック様も、残念そうな顔になった。


「一緒にオペラができず残念に思っていました」


 ……笑えないくらい、つらいですわ。


 優しいイケメン講師に残念な日々を送らせてしまっていたなんて。


「ごめんなさい」

「謝らないでください」


 優しい声音……優しい笑顔。


「オペラをせず、どうしていらっしゃるかと思っていたのですが。殿下といらしたなら喜ばしいことです」

「はい。一緒に、お料理をしていますわ」

「お料理を」

「はい――!」


 決意を新たにしましたわ!


「そう、ですか。それは喜ばしいことです」


 リリック様は驚いた顔で。


 なんとか自分を納得させるかのように微笑むと、王子様にお辞儀してさがっていった。

 さようなら、リリック様……


 はっ!?

 王子様の視線!


「残念だったね」


 そんな、悪役みたいに冷たく言わんでも。


「吹っ切れた?」


 厳しい目つきのままの問いかけ!


「はい!」

「なら、いいんだ……」


 どこか、ホッとしたような響き。


 嫉妬してたんだ! 

 リリック様に。だから、冷たく厳しく……フフッ

 喜んでる場合じゃない。また、誰か来た。次は演技指導の方。次々、王子様に挨拶する流れができてる。

 かしこまっていよう。

 今度は、四人まとめてきた。

 私と同世代の娘さんたち。なにか、嫌な予感がする。そうだ、確か、転生前の私はオペラの才能があってオペラしてる娘たちの妬みを買ってたのよね。この人たちが妬んでたのかしら? 緊張感。ドキドキ……


 デスピーナ様も来た。


「殿下、ウタカタリーナ様」


 なにか、声と表情に真剣さというか深刻さが?


「こちらの四人は、オペラの妖精役をしている令嬢たちです」


 妖精たち!


 どうりで、嫌な予感がしたわけだ。

 王子様もちょっと、うろたえてる。


「初めまして、妖精たち……」


 妖精たちは、なにか言いたげに王子様を見ただけ。


 なにか、この妖精たち元気ないですわね。

 王子様も不思議そうに首かしげてる……

 妖精たちがなにか言いたげに、こっち見た!

 なに?  

 なんか、この妖精たち見覚えがあるような。

 妖精じゃなくて……令嬢……?


 そうだ! ソプラノーラ様の! 


 とりまき令嬢たちだ――!!

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