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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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力を授ける!?

「フィナンシェは後は焼くだけかな」

「そうですね」


 遠巻きに見てると――


 視線に気づいたコックさんが、型を持ってきてくれた。


「フィナンシェの生地でございます。味はプレーンとチョコレート、殿下とウタカタリーナ様が最近こだわりのジパングから取り寄せたマッチャもあります」

「抹茶!」

「いいね!」

「ありがとうございます。それから、舞台練習の疲れを取るサッパリとしたベリーにレモンです。他にご希望の味があればお作りいたします」

「ありがとう。待ってて。何か思いつく?」

「うーん」


 今日は浮かばない日だ……和菓子じゃないから?


「王子様はどうですか?」

「うん――」


 何か真剣な眼差しで考えてる。


「フィナンシェの味じゃないんだけどね」

「なんでしょう?」

「疲れが取れるって聞いて思いついたんだけど」

「はい」

「おれ達ってさ、料理のチートスキル何か持ってないのかな?」


 出た! チート!


 ま、私もカツ丼のときに思ったし。


「例えば、どんなでしょ?」

「料理の腕というよりは、ほら、付与スキル。おれ達の作った料理を食べるとオペラの歌声? とかがレベルアップするとかさ」

「しますかねぇ?」

「うーん。今まで作ってる最中にスキル発動した感覚とか見えたりとかないんだよね。何か感じたことある?」

「いえ、残念ながら何も」


 王子様が物凄く残念そうにガクーッてなってしまった。


 なにか、なにかないか!?


「そ、そうだ! 歌声!」

「歌声?」

「そうです。ほら、歌声で色々付与したりあるじゃないですか!?」


 国、崩壊させたり。


「あるね、あるけど」


 嫌そうな笑い。


「歌わなくても "あ〜〜〜" とかでもいいんじゃないでしょうか?」

「それくらいなら。試してみようか?」


 王子様の笑顔に力が、瞳に輝きが戻った!


「はい!」

「よし。このフィナンシェの生地にやってみよう」

「そうですね」


 ツバが入らないように距離を取って。


「王子様から」

「う、うん」


 すーっと息を吸って。


「あ〜〜〜」


 綺麗な声。


 だけど、あ〜〜って言ってるだけでスキルか?

 王子様も首ひねりながら、フィナンシェ見てる。


「どうも、何もできてないんだよね」

「そうですか。綺麗な声なのに」

「ウタカタリーナも、やってみて!」

「はいっ」


 私も綺麗な声だ。気合い入れて!


 すーっと息を吸って。


 力を授ける!!


「あ〜〜〜」


 どうかな?


 ただ、あ〜〜って言っただけで。

 なにも授けてない気がする。王子様みたいに首ひねってしまう。


「どう? "スキル" とか、何か文字が目の前に出たりしてない?」

「ないですねぇ」

「そっか。他になにか感じてない?」

「はい。残念ながら」

「二人でやってみようか?」

「やってみましょう!」


 一緒なら!


 並んで。すーっと息を吸って。

 タイミング合わせて同時に!


「あ〜〜〜」

「あ〜〜〜」


 力を授ける! 授けるったら授ける!!


「ハァハァッ」

「ハァッ、キツイね」

「はい」

「どう?」

「王子様は?」

「なにも」


 ガクーッてなった。


「私も。力は出せたと思うんですけど、チートスキルでなにか授けられたかと言われるとなにも……」

「うん。同じく」

「歌ってみるのは?」

「ええ〜」

「ガッツリ歌わなくても! 頑張れ〜とか?」

「それくらいなら――」


 やる気になったみたい。準備してる。


「頑張れ〜〜」

「あっ! いい! いいですよ!」


 ちょっと、棒だったけど。


「綺麗な歌声で励まされてる感じ!」

「ソレってただ励まされてる感じ?」

「そうですね」

「うーん」


 納得いかないよね。


 私も……

 歌声聞かせたら、フィナンシェがキラキラ光りだして――みたいなの期待してたら。ガクーッてなる気持ちわかる。

 王子様は少し持ち直したようで、腕を組んだ。


「チートはない世界なのかなぁ?」

「ハイファンの世界じゃないですからねぇ」

「恋愛の異世界でも聖女とかは持ってるよね?」

「付与とかは聖女だけのスキルかもしれないですね」

「聖女かぁ」

「探さないでくださいね」


 勝てる気がしねぇですわ。


 察したのか、王子様はニヤッと笑った。


「大丈夫だよ。自分で、できないならいいや。諦めよう!」

「そう、ですね!」


 王子様がスッキリしてるみたいだし、いいか。


「普通に心を込めて料理しよう」

「はいっ」


 王子様、なんて素敵な言葉と笑顔。


「このフィナンシェもコックに任せよう」

「そうですね。あ」


 コックさんたちが、こっち見てる!


 "なにやってんだ? こいつら" みたいな顔で。


 あ〜〜から見てた顔だ。


「見られてたみたいですね」


 ヒソッ


「変なことしてると思われてますよ」

「ヤバいね」


 どうしよう……


 王子様が取り繕うような笑顔みせた!


「えっと、今のはね。その、チ、チー、チカラ! 食べた人に力をつけてもらいたくてね。頑張れーって声をかけてたんだ。ね?」

「そうっ、そうです! おいしくなれーおいしくなれーみたいなアレです!」

「そうそれ!」


 なるほど、みたいにうなずいてくれた。


 全員……よし。


「じゃあ、後は頼むよ」


 そそくさと、この場を後にしてと。


「スープを見に行きましょうか?」

「そうだね!」


 スープ担当のコック長も見てたみたい。


 何事もなかったかのように、


「スープはどうですか?」

「どうかな?」

「丁度、出来上がりでございます」


 かき混ぜる度に、いい匂いがしてる。


「テーブルにお持ちいたします」



 テーブル〜


 待つこと少し。

 湯気のたつスープ皿が運ばれてきた。


「カブにニンジンにポテトペーストを加えて煮たミルクスープに喉に良いハーブを散らしております」


 真っ白いミルクスープに小さな葉っぱが浮いてる。


「おいしそうだね! 頂こう」

「頂きましょう!」


 お味は――


「おいしいですわぁ」

「うん、おいしいねぇ」


 優しい甘さとコンソメの味がほんのりとするスープにやわらかい野菜。


「胃に優しそうなスープですね。ハーブもスースーして喉に良さそうです」

「うん。スープとハーブも絶妙に合ってるね」

「これをデスピーナ様に食べさせてあげましょう」

「そうしよう。コック長、とてもおいしいよ。レシピをもらえるかな?」

「ありがとうございます。ハーブも一緒にお持ちいたしまします」


 コック長さんはキッチンに戻っていった。


 スープを飲みほそう――スプーンで。


「おいしいですね。私達の作ったミルク粥とは違って」


 思い出さずにはいられない……


「ハハハッ」

「フフフッ」


 もう、笑える思い出になってる。


「だね。それにこれならチートスキルとかで付与しなくても、力が付きそうだね!」

「そうですね!」


 料理で覚醒とかチートとかないのは残念だけど。


 今回はコックさんたちの料理に任せよう。

 私と王子様の気持ちはこもってるしいいよね!

 さぁ、食べたら行かなきゃ――

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