ホットミルク
卵粥を食べてもらっている間――
ホットミルクをいただくことになった。
食堂のダイニングテーブルについてと。
ティーカップのなかで湯気を立てるホットミルク。
砂糖を加えて甘みを足してもらってる。
王子様が、
「砂糖入れたほうが、おいしいよね!」
って、また気づかってくれたから。
一口飲むと甘みが広がってく。
本当においしいというか、ほっとできた。
それに、米が入ってる違和感が無いって。
こんなに大きいんだ。
ほっとするわ。
でも、まだ――
「食べてくれてるといいね」
向かいの王子様がホットミルクを見つめたまま。
そう、気になることを言った。
「そうですね……」
おいしいかの前に。
食べてくれるかの心配せねばならんかったか。
でも、その心配は、
「王子様が作ったんですから、喜んで食べてくれますよ」
「それは、そうかもね!」
うん。それより、心配なのは私だよ。
「私が一緒に作ったってことのほうが、心配です」
「どうして?」
「だって、令嬢ですから。王子様と仲良く料理してる令嬢なんて他の令嬢からしたら妬み恨みの、ざまぁ対象ですから」
また、笑ってらぁ。
笑いが引っ込んだ?
「何か、されそうになったら言って」
王子様……なんて、まっすぐで力強い眼差し。
「はい」
本当に、嬉しいし心強いな。
「言ってくれたら、そうだな……令嬢には会わないようにしてなんとかするから」
令嬢に会わないように。そうだった。
「令嬢にトラウマがあるんですよね」
「まあ、ね」
それなのに、私のために頼もしいこと言って。
笑ってくれてる。
私も守りたい、王子様を。
守りたい、この笑顔ってやつ。私にも、ついにそんな人ができた――
「何もしなくていいですよ。話しを聞いてくれるだけで」
「大丈夫だよ。ほら、王子には家来がいっぱいいるから。何とかさせるよ」
「えぇ……」
家来に何とかさせる王子というのも――
悪役王子っぽい。
やっぱり、絶対、何もさせないほうがいい。
ちょっと悪そうに見えてきた、この笑顔も守りたい……
「殿下、ウタカタリーナ様」
宰相様が戻ってきた!
「どうでした!?」
「どうだった!?」
抱えてる、お盆の上の器は――
からっぽだ!
「食べてくれたんですね!」
「食べてくれたんだな!」
宰相様が穏やかに微笑んだ。
「はい。こんなにおいしい、お粥は初めてと言っておりました」
「よかった!」
「よかった!」
王子様と喜びの笑顔を交わす。
卵粥ルートで間違いなかったんだ!
「つきましては」
つきましては?
「妹が、ぜひ、お礼を言いたいとのことで着替えております」
「え?」
「え?」
「しばし、お待ちください」
「妹さんが、会いに来るの?」
「はい」
どうしよう……
王子様もそう聞きたげに、こっち見た。
どうしましょうか。令嬢にトラウマ持ち王子と、ざまぁ対象令嬢。会わないほうが――
伝わったみたいで、王子様は宰相様に向き直った。
「いいよ、お礼なんて! 私達は帰るよ、ね?」
「そうしましょう」
帰ろう、帰ろう。
「そんな、お待ちください!」
宰相様が食堂の出入り口に立ちふさがった!
「お礼も言えずに帰られてしまったら、妹が悲しみのあまり泣いてしまうかもしれません。どうか、お待ちください」
宰相様が泣きそうになってるやん。
これは、待たねば?
王子様もそう言いだけに、こっち見た。
「待とうか? 確かに、着替えてくれてるとこ帰ったら悪いよね」
「そうですね!」
悪役になりきれない、優しい王子様だ。
私も……
そばに寄り添って、ついていこう!
「お礼言われたらすぐ帰れるように、玄関で待とうか」
「そうですね」
「そんなに、お急ぎにならずとも」
「いやぁ、風邪の人を相手に長居したら悪いよ」
「そうそうですわ」
「お気づかい、ありがとうございます……」
妹を想ってか、引き下がってくれた。
私たちのことは、ただ良い人と思ってもらいたい。
玄関ホール〜
悪役妹、どんな感じだろ?
ピンク髪ふわふわしてて、私より華奢で、ちっさいのかな。
お兄様〜〜!!
とか、叫びそうな可愛い小悪魔系?
「妹が来ました」
階段を降りてくる!
――デスピーナ
私と同じ茶髪で巻きは控えめで、私と同じような普通体型で背も同じくらい。
気品が漂ってて雰囲気は、悪役令嬢に似てるような。
それはそれで、怖いけど……
私と王子様の前に来た。
白いワンピース着てる姿――私と似てるような。
丁寧に、お辞儀した。
「セレナード殿下、ウタカタリーナ様」
綺麗で可愛いらしい声。
風邪のせいで声ガラガラとかじゃなくてよかった。
それに、私の名前も呼んでくれたし。
目も合わせてくれた。
私の存在は完全無視して王子様だけ話しかけるとかしないんだ――




