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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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まずい?

「おかゆ、作りませんか?」


 とっさに閃いたことを言っていた。


「おかゆ?」

「はい。料理ルートを進むなら」


 ちょっと、冷静に考えてから話そう。


「オペラの代役ができない代わりに、おかゆを作ってあげたらいいんじゃないかと思いまして。風邪には、おかゆですよね?」

「おかゆ、いいね!」


 王子様は打てば響くように賛成してくれる。


 これぞ、料理ルートよね!


「おかゆ、といえば」


 今度は王子様が冷静に考えだした。


「梅干しか、卵か、ミルク粥、だよね?」

「ミルク粥が一番異世界っぽいですね。でも」

「まずそうだよね?」

「まずそうです」


 沈黙のときが流れた。


 まずい粥を食べさせた相手が、悪役妹だったら?

 どうなるんだろ? よくわからんけど、まずい。


「作ってみようか?」

「はい!」


 作ってみるしかない!


「作るとして、できた粥を妹さんに食べさせるには……宰相に話さないといけないね」


 王子様の口調は優しいけど、顔が険しくなった。


「王子様、宰相様を許してあげてください」

「そうだね……」


 なに、この沈黙と緊張感。


「…………宰相はさ、頭いいし頼れるし牢屋にブチ込んだら、まずいよね?」

「まずいですよ!」


 ふぅ、笑顔を交わせた。


 ――そうよ。頭いい宰相を牢屋にブチ込んだりして怒らせたら……復讐ざまぁされるかもしれないじゃない。

 狡猾でもあるって、ずる賢いとかいう意味でしょ?

 悪人(アクート)とか伏線みたいな名前でもあるし。

 あなたをプリマドンナにするためなら、どんな手でも使いますみたいな怖いこと言ってたし。

 下手に刺激するのは本当に、まずい。

 でも、もう私はオペラのこと断りに行くし。王子様は私をめぐる恋敵として既に嫌われてる可能性高い。

 それでも――


「味方につけておきたいですね、宰相は」

「そうだね」

「それに、妹さんのことも気になりますね」

「ん?」

「ほら、ズルいズルい言う悪役妹かもしれませんし」

「悪役妹か。そんな者までいるんだ。怖いね」

「だいたいは、姉に意地悪な悪役なんですけど」

「いるのは姉じゃなくて兄だね。それなら、ブラコン妹なんじゃない?」

「ブラコン!?」


 そっちだったか!


 お兄様を奪うなんて許さない!! 

 とか言って。私を亡き者にしようと、あらゆる手を使ってくるんだ。怖い。


「妹がブラコンなら、宰相はシスコンかもね!」


 のんきに笑ってらぁ。


 私が殺されるかもしれないのに。

 王子様は――王子様を反対に奪ってやりますわ! とか言って狙われるんだ!

 全てを奪われるかもしれない。阻止しないと。

 敵に塩を送ってる場合じゃなかった……


「また怖い顔になってるよ? 宰相がシスコンだと幻滅する?」


 幻滅してほしそうにもみえる笑顔。恋敵、だもんね?


「やだ、そんなことないですよ」


 いっそ、シスコンとブラコンで仲良くしててほしい。


 ミルク粥食べながら。

 やっぱり、作るしかない。



 宰相の部屋〜


「殿下……ウタカタリーナ様……」


 出迎えた宰相様の表情は硬い。


「テラー、話があってきたんだ」


 王子様が気さくな感じで切り出した。


「ウタカタリーナにオペラのことを頼んだ件について。まず、勝手に会いに行ったことは心外だよ」

「申し訳ありません」


 宰相様は頭を下げた。心から謝罪してるみたい。


「もういいんだ。頭を上げて」

「お許しいただけるのですか? 牢屋に行くことも覚悟していたのですが」


 考え読まれてたのかしら。笑えるわ。


「そんなことするわけないだろ。私はテラーの味方だし、テラーは私の味方だ」


 王子様がチラッとこっちみた。そうそう、そうですわ。味方味方。


「いいね?」

「はい。生涯、お仕えいたします」

「よかった」


 よかった、よかった。


 嘘偽りなさそうな態度だし。これで、王子様を没落させるために画策したりとかの復讐ルートは無さそう。

 こっち見た!

 私への復讐は……


「それで、ウタカタリーナ様。オペラには?」

「私は、その、やはりオペラには出られませんわ」


 ごめんなさい! ごめんなさいぃ!!


「どうしても?」


 怒って睨まれるかと思ったら。


 そんな切ない目で見てこないで。私にはどうすることも、どうすれば……そ、そうだ、シスコン!!


「私はやっぱり、妹様に出ていただきたいと思いますわ!」

「妹に。それは私もそう思いますが……あなた様ができないのなら他に妹の代役になれる者などいないと思っております。妹の歌声は唯一無二であり、まさにプリマドンナに相応しく――」


 酔ったように語ってる。シスコンでよかった。


「その」


 切りの良いところで、王子様が持ちかけるか。


「妹さんが良くなるなめに、ミルク粥を作りたいんだけど」

「ミルク粥を、ですか?」

「ああ、知らない?」

「いえ、存じております」

「まずいかな? ミルク粥って?」

「味、のことでしょうか?」

「うん」

「甘みがあり塩気もありますよ。私は、あまり好みませんが」

「妹さんはどう?」

「食べはしますが、感想を聞いたことはないですね」

「そうか……食べるなら作ってみるしかないね?」

「はい!」


 よくわからんミルク粥。


 私も食べてみたくなったわ。

 なんか緊張と恐怖疲れで、甘いものもほしいし――

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