表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/67

いくら愛が重くてもルート変更はしませんわ!

「あの、私はオペラしませんので」


 とにかく、断らないと。


「どうか! お願いします!」


 ズイッと一歩出てきた!


 仮面から目だけ見えて、見下されて怖い!

 一歩下がって距離を取りつつ、また断らないと。


「いえ、私は、料理しないと王子様が。ルート変更は死神に頼まれても不可能です。困りますので」


 頭混乱してきて困る。


 こんなので伝わったのか――

 元の位置にさがってくれた。

 王子様って言ったのが、よかったの?


「セレナード殿下のことが大切なのはわかります。ですが、どうか」


 ん?

 王子様!? どうして、あなたと関係あるんです!?

 とか言って驚かないんだ。

 もう一度、よく見てみよう。

 この人の黒髪、髪型、背の高さ、体型、雰囲気。

 なにより、理想というか予想通りの低い綺麗な声。

 お城の庭で見た、あの人だわ。


「あの、あなたは――宰相様、ですか?」


 ギクッてした。


 やっぱり。

 ふぅ、知り合い? でよかった。

 でも、なんで宰相様が仮面なんかつけてこんなことを?


「バレてしまいましたね……」


 仮面取った!


 間近で真正面から見てもイケメンだわぁ――

 こんなん、見つめられたら惚れてまう。

 目をそらさなきゃ。

 王子様、王子様。


「私は、オペラーラ王国の宰相を務める」


 あぁ、宰相様ぁ……ダメ! 王子様、王子様。


「アクート•テラーと申します」


 アクート!?


 私を、ざまぁの道に連れていく悪人(あくと)じゃないよね?

 いやもう、さっきの見た目が怖すぎて……


「突然押しかけて名乗りもせず頼み事をするなど、非礼をお許しください」

「いえ」


 礼儀正しいわ。


 理性はかなりあるみたい。

 私も冷静に話しの続きを、


「あの、どうして私にオペラをさせたいんですか?」

「あなたの美しい歌声が忘れられないからです!」


 また一歩出てきた。


 今度は一歩さがれない。

 いや、イケメンが近づいてきたからとかじゃないけど。もう身元わかってて安心だから。


「二日前の午後、城のキッチンに続く廊下で歌っておられましたね?」

「は、い」


 そういえば、聞いてたんだった


 それで、私を待ち伏せしようとしたとか……


「そして、今日。剪定(せんてい)中の庭園を見ていらっしゃいましたね?」

「えっ!? はい」


 見てたんだ。


 このエプロンとワンピース、言い逃れできない。

 オシャレしててよかったわ。

 いや、そうじゃなくて。


「あなたの、その美しい姿を見て確信しました。歌声の主はあなただと」

「そんなぁ」


 ニヤけるし、照れるしかない。


「その後で、殿下から歌っていたのはウタカタリーナだと聞かされました。私は令嬢の全ての名前と顔を把握しておりますので、あなたの名と庭園で見た顔はすぐに結びつき確証を得ました。しかし、殿下は言われました。ウタカタリーナに会おうとしないでくれ、ウタカタリーナは歌わないから、料理しかしないから、と」


 王子様、私のことわかってくれてる。


 悲しそうな宰相には申し訳ないけど。

 その通りよ。私は、


「ですが! そう言われると諦めきれなくなりました!!」


 また、ズイッと来た!


 わかるけど。ダメと言われるとやりたくなるのは。

 でも――


「お、落ち着いて」

「落ち着けません。それで、仮面などで正体を隠し押しかけたりなどして。このまま引き下がる気はありません! どうか、もう一度、歌ってください!!」


 そんな、熱く訴えかけられると。


 胸が熱くなってきた。

 か、覚醒……ダメよ、落ち着いて。


「いけませんわ。お引き取りください」


 悲しそう。ごめんなさい。


「実は、個人的な願望だけでなく切実な事情のある願いでもあるのです」

「事情? どんな」


 宰相らしい、事務的な話になってきた?


「実は、私の妹の代役として歌っていただきたいのです」

「妹さんの代役?」


 妹……ずるいずるい言う悪役妹登場? 怖い。


「はい。妹は数日前から寝込んでいまして」

「ご病気になったんですか?」


 悪役じゃないのかな?


「ご心配をおかけするほどではありません。風邪でもう治ってきてはいるのですが、オペラ公演には出られるかどうか……代役を立てようかという話が持ち上がっているのです。そんな時に!」


 ついに、手を握られた!


 あまりの素早さに避けられなかった。

 王子様とも握ったことないのに、ごめんなさい。


「あなたの歌声を耳にして、神のお導きと確信したのです!! あなたに代役をしてもらえとの!」


 神……


 (作者)がオペラルートに戻そうとしてる?

 なんで、中世ヨーロッパ風異世界で日本食作っとんねん、意味わからんわ。いい加減、オペラせいや!! って。

 ご、ごめんなさい。


「お願いいたします!! 妹の代わりは、あなたしかいない! あなたが代役の座につきオペラに出るためならどんなことでもいたします……」


 目つきが、怖くなってきた……


 どんなことでもって?

 この人は死神じゃなくて。

 オペラ座の怪人!?

 間違いない、白い仮面と狂気。


「代役候補は他にもいます。しかし、代役につくことは私が阻止いたします。どんな手を使っても!」


 どんな手を使う気!?


 シャンデリアで叩き潰して退場させたりするんじゃ? 


 いや、これは某高校生探偵のほうの殺害方法だっけ?

 なんにしても、怖い……

 これが、愛が重いってやつなのね。

 言うこと聞かなきゃ、私の身も危ない?

 たとえ大丈夫でも、この狂気の男といるうちに惹かれていくとか。そのほうが危ない。


「妹の代役、オペラのヒロインであるプリマドンナの座につけるのは、あなたしかいない!」

「プリマドンナ?」


 プリマドンナ、なんて素敵な響き。


「はい、プリマドンナ!」

「プリマドンナ!」

「プリマドンナァ〜!」

「プリマドンナァ〜!」


 いけない、ハモっては!


 か、覚醒しそう……

 今回はヤバい。覚醒したら戻れない!


 助けて 王子様!!


 王子様との記憶が走馬灯みたいに押し寄せる――

 笑顔、数々の試練と料理、今日作ってくれた、おいしかった牛丼……牛丼。冷静になれた。

 そうだ、王子様に相談しよう。

 もう、オペラのことは隠せない。


「王子様に相談させてください」

「殿下に……」


 嫌そうな顔。


 絶対、反対されるのわかってるもんね。

 でも、


「黙ったまま、こんな風に話を進めてはバレた時によくないですわ」

「私の身を気づかってくださるのですね?」

「え、まぁ、そうですわ」

「心まで美しい人だ」


 いやぁ、そんなぁ。


「普通、プリマドンナになれると言われたら周りなど気にもせず飛びつくのに。あなたはやはり他の人とは違う。王子様のお相手だけありますね。王子様にも、プリマドンナにも相応しいというのに……」


 王子様にもプリマドンナにも。


 二つの舞台でヒロインになれるということ? 


 ぐふふっ


 いえ、ダメよ。こんな、下品な笑いしてるうちは。

 相応しくないのよ。どちらか、プリマドンナは諦めよう……


「今から王子様に、ご相談して参ります。お待ちください。冷静に」

「わかりました……失礼いたします」


 仮面をつけて、帰って行った。


 閉めた扉に耳をつけると、馬車の去る音が聞こえる。

 御者さんは、あんな怪しい人を乗せて気にしないのかしら? お抱えとか?

 誰にも見られてないといいけど。


「ウタカタリーナ」

「お嬢様」

「お嬢様」


 はっ!?


「お母様、ばぁや、メイドさん。見てましたの」

「いいえ、扉の陰から声だけ聞いていましたわ。怪しい仮面姿が恐ろしくて。ごめんなさい、ウタカタリーナ」

「申し訳ありません、お嬢様」

「お母様も、ばぁやも、メイドさんも大丈夫ですわ。あの方は、お城の宰相様ですの」

「宰相様が、なぜ、ウタカタリーナにプリマドンナの座につかせたいんですの?」


 そこだけ聞こえたのね、大きい声で言ったりハモったりしたから。

 

「妹様が風邪を引いてしまっていて代役を探していらっしゃるんですって」

「そう、代役を」

「はい。お母様は、どう思いますか?」


 心配な顔のままだわ。


 プリマドンナと聞いたら飛びつくんじゃないの?

 冷静さは遺伝なのかしら?


「そうですわね。素晴らしい大抜擢だとは思いますけど。いきなりできるかしら? オペラの基本は小さい頃から教えていますけど。最近は、お料理しかしていないでしょう」

「そうなんですのよ」


 オペラのヒロインなんて、すぐできるわけないよね。

 完璧にできるスペックにチートも持ってる気はするけど。


「お城に行って王子様に、ご相談してきますわ」

「まぁ、王子様に、ご相談できるような立場にまでなっているのね」


 お母様、笑顔になった。


 プリマドンナより王子様のほうが嬉しいみたい。

 やはり、王子様に止めてもらわないと。


 プリマドンナ!? 大抜擢じゃないか! 

 私の相手に相応しい座だよ! 

 二つの舞台でヒロインになる! 

 それが君の野望だね!!


 とか言って、飛びついたりしないよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ