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味噌汁飲みてぇと王子様が言ったから!〜料理令嬢になりますわ。オペラルートには進めません〜  作者: 城壁ミラノ


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これぞ料理ルートのはずなのに!

 王子様を見送って進む。

 無事辿り着いたキッチンではコックさんたちが料理をしてる。


「こんにちは」

「これは、ウタカタリーナ様」


 みんなが笑顔と挨拶をしてくれた。


 もう馴染みの顔になっていて、私からも自然に近づいていける。コック長のそばにいくとプリンがあった。


「ウタカタリーナ様のレシピを見て私もプリンを作ってみたのですが」

「凄くおいしそうですね!」

「どうぞ、味見なさってください」

「いただきます」


 さっそく、スプーンで一口食べてみる。


「おいしいです! 私のレシピなのに……私の作ったのより、おいしい気がします」

「お世辞がうまいですな」


 コック長さんは笑ってるけど、本当に。


「味は合格のようですな。形についてですが」

「はい」


 普通のプリンの形じゃ面白みがない?


「ご相談したいのです。プリンを皿に出すのが下手でしてな。欠けてしまうことがあるのですよ」


 確かに。このプリンもちょっと欠けてる。


 レシピには……皿に出すとしか書いてない!

 申し訳なかったな。


「プリンの出し方は詳しく書いてなかったですね」

「カップに入ったままのプリンがありますので、出し方を教えていただけますか」

「はい!」


 カップと新しいスプーンと皿を用意。


「まずは、スプーンでカップのフチに沿ってプリンを優しく押していきます。次に皿にカップを引っくり返してカップと皿をしっかり押さえて持ったまま、くるっと一回転します!」


 スカートをひらめかせ華麗な回転ができた。


「おお!?」

「この遠心力でプリンをカップから完全に離すんです」


 離れているはず。頼む!


 お皿を調理台に置いて、そっとカップを外してみる。

 見事、プリンが出てきた!


「おお!!」

「どうですか?」


 ふう。プロを驚かせることができた。


「こんな出し方とは、わかりませんでしたな。私もやってみましょう」


 さすがはコック長さん、手際よくやってく。


 くるっと一回転も豪快で華麗だ。

 もちろん、プリンは綺麗に出てきた。


「うまくできましたな。それに、これは良いパフォーマンスになります」

「そうですねぇ」


 パフォーマンスか。目の前で料理して盛りつける。


「それじゃあ、食べるときに目の前でプリンをカップから出しましょうか」

「いいですな。皿に出したプリンを器に移してフルーツとクリームを盛りつけていきましょう」

「はい!」

「プリンを出すのは、お頼みしてよろしいでしょうか」

「はい。フルーツとクリームの盛りつけを、お願いできますか」

「かしこまりました」


 コック長さんと二人三脚のデサート披露が決まった。


 うまく出せるといいけど。

 悪役令嬢も驚いてくれるかしら? 

 面白い見世物ですわね とか言って鼻で笑いそうではあるけど。テノールード悪役王子も。


「お待たせ!」

「あっ、王子様! いいところに」

「何かな?」

「プリンをこうやって一回転して出すじゃないですか。それを食べるときに目の前でやることにしたんです」

「ソプラノーラさんとテノールード王子の前で?」

「笑われますかね?」


 王子様にも、もう笑われてるし。


「笑われるかもしれないけど、いいんじゃないかな? 場が盛り上がるし和やかにもなる気がするよ」

「ですよね! それじゃ、コックさん、お願いします!」

「かしこまりました」

「パフォーマンスってわけじゃないけど、私も料理を一つ思いついたんだ」


 王子様が料理を?


「どんな?」

「それは……今から作るから昼食にしよう。座ってまってて」

「手伝いますよ」

「いいから。ここにいて」


 肩を押されるままに食堂のテーブルに来た。


「材料は準備できてるかな?」


 王子様はさっさと行ってしまった。


 イスに座って、おとなしく待つしかない。

 何が出てくるんだろう。こういうのも楽しみ。

 ――ソワソワしてきた。ちょっと立ち上がってキッチンを覗いてみよう。

 王子様が見えない。おとなしく待とう。

 お腹空いたな……

 何か、おいしそうな匂いがしてきた!

 香ばしい醤油の匂い? 何を作ってるんだろ。

 料理を作る音も食欲をそそるわぁ。早く早く。


「お待たせ!」

「待ってました!!?」


 王子様がお盆に載せてるのは。


 肉のたっぷり盛られた丼!


「牛丼だよ!」

「牛丼!!」

「どんぶりも作ってもらったんだ」

「完璧に牛丼ですよ! おいしそう!!」

「食べよう!」

「いただきます!」


 お肉とご飯を一緒に一口。


「おいしい?」


 瞳をキラキラさせて聞いてくる王子様。

 期待の笑顔から一生懸命作ったのが伝わってくるし可愛い!

 それを抜きにしても、


「おいしいです! お箸が止まりません!」

「よかった! 牛丼は自分で作ってよく食べてたんだ。うん、懐かしい味! これをテノールード王子にも食べてもらおうと思うんだけど。どうかな?」

「牛丼をですか」


 それは……想像すると。


「笑われるかな?」

「そうですねぇ、牛丼って庶民の食べ物って感じですから。笑われるというより、パーティーの時みたいにdisってくるかもしれないですね」

「disられるのか……それでも食べてみたら反応が変わるとおもうんだよね! こんな風にかき込んで食べてほしいな」


 王子様は飢えた会社員のように牛丼をかき込んだ。


「テノールード王子がそうするところ、見てみたい気もします……」


 ダメよ、ニヤついちゃ。


「そうだよね。食べてもらおう! それで気に入ってもらって、牛丼を我が国だけでなく隣国にも広めるのが私の――野望なんだ!!」

「王子様……!」


 なんて小さい庶民的な野望……


 いや、壮大なんだ。食べ物が定番になったら未来永劫まで残り続けるんだから!

 ここは私が王子様を励ましてあげなきゃ。


「王子様なら絶対できます! この牛丼なら大丈夫です!!」

「ありがとう!」


 笑顔がまぶしいですわ。


 いつかの王子様みたいに励ますことができたかな。

 安心して信じてもらえたらいいけど――

 米粒一つ残さず食べ尽くすくらい、おいしいから。

 食後のお茶をいだいて一息つくと、満足感も凄い。


「満腹になったし、自信もついたよ。ありがとう」

「どういたしまして。私も自信がついてきました!」


 料理ルートを突き進む自信が。


「午後は、テーブルマナーのレッスン?」

「あ、はい。お箸借りて帰っていいですか? 先生に箸の使い方を教えてあげようと思いまして」

「箸も広めないとね。職人に大量生産してもらおう。ちょうど私達のために、これと同じ何か高級な木でできた箸がまだあるから持って帰って」

「ありがとうございます」


 割り箸じゃなくこれ、高級な箸なんだ。


 言われてみると何千円とかで売ってる箸に見えてきた。ハンカチに包んで大事に持って帰ろう。


「それじゃあ、帰りますね」

「うん……」


 王子様、何か言いたげにじっと見てくる。


「もう、おもてなし料理もできたしすることもないけど。明日も来てくれる? また一緒にお昼を食べよう」

「――はい!」


 予定のない誘い。

 ただ私に会いたいから?

 幸せ……私もただ王子様に会いたい!


「明日も楽しみです。では……」

「うん、私も。気をつけて帰ってね」


 笑顔を交わして見送られて。


 私たちの気持ちは通じ合ってる!

 これは、おもてなし料理を成功させてハッピーエンドですわ。

 馬車に揺られて気持ちよく帰宅。事故らないでね。

 ドキドキしてきた。事故って急展開がお約束よ……


「お嬢様、着きました」


 無事ついた。


「ありがとう。明日も同じ時間に、お願いね」

「かしこまりました」


 家の扉を開けるのもドキドキする。

 またお母様が慌てて出てくるとか?


「お帰りなさい」


 ゆっくり出てきた。


「ただいまですわ。先生は?」

「もう来ていますわ」


 遅刻した!?

 早く帰りついたはずだけど。


「怒って!?」

「いませんわ。ちょっと早く、いらっしゃったのよ」

「そうでしたの」


 ふぅ。よかった。



 食堂〜


「ごきげんよう。ウタカタリーナ様」

「ごきげんよう。先生」

「あなたとのレッスンが楽しみで、早く来てしまいましたわ」


 そういうこと。

 先生、メッチャ笑顔だわぁ。私に期待してくれてるのね。フフ、応えて差し上げなきゃ。


「そうですわ、先生。今日は、お城から新しいカトラリーを持ってまいりましたの」

「まぁ! お城から新しいカトラリーを……?」

「これですわ。オハシといいますの」

「オ、ハ、シ、ですか」


 両手に持って興味津々だわ。

 お母様も、ばぁやも、メイドさんも。


「王子様が国中に広めようとしているカトラリーですわ」

「王子様が!」

「一緒に使ったことがあるのは私だけで」


 多分……


「先生にも使っていただいて広めていただこうと、一番に持って来たのです」

「王子様とあなた以外まだ誰も知らないカトラリー!? それは、ぜひ私が広めさせていただきますわ。光栄なことです。ううむ!」


 私の先生でいる特別感。満足していただけたようね。


「さっそく、使い方を教えてくださるかしら」

「はい。オハシをこうして、食べ物をはさんで口に運ぶんです」


 実践してみせなきゃ。

 箸の使い方を学ぶときは大豆を皿から皿に移す。

 これだよね。


「ばぁや。豆があるかしら?」

「豆ですか。グリーンピースがございますよ」


 私、グリーンピース嫌いなのよね。

 まぁいいわ。


「それをお皿に沢山入れてきてちょうだい。それと、お皿をもう一枚ね」

「かしこまりました」


 用意ができたら、座って実践。


「こうして、豆をつまんで、お皿に移していってください」

「こうね……あぁっ、豆が!」


 箸から逃げ出して転がっちゃった。


「難しいですね。しかし、私はカトラリー使いのプロとして負けませんわよ!」


 凄い、次の豆から連続で移していけてる。


「先生、さすが、お上手ですわ」

「あなたの先生ですもの。王子様にお話されても恥ずかしくないようにしなければね」


 真剣な横顔。尊敬してきた。


 お母様も、ばぁやも、メイドさんも。

 みんな一心不乱に豆を移し続けてる――



 数時間後〜

 練習に使ったグリーンピースを料理にして、私のカトラリーレッスンを兼ねた食事を共にしてから先生は帰っていった。

 グリーンピースもベーコンと一緒にカリカリに焼いたりポタージュにされると、おいしかったわ。


 今日は何もかも満足ですわね!


 リビングのソファーでくつろぎながら、お母様とお茶を飲んでいよう。

 お母様も満足そうに見える。精神が安定してきてるといいけど。


 うん? 玄関からノック音が。

 先生かしら?


「私が出ますわ」


 先生と見せかけて――


 油断したところに凄いのが来るのよね。

 王子様が飛び込んでくるとか?

 それにしては、ノック音は落ち着いてる。

 それだけに、扉越しじゃ予想がつかない……


「はい。どなたですか――!?」


 扉の向こうにいたのは――


 白い仮面をつけた、黒マントの謎の人物。


 やっぱり、なんか来た――――!!


 何、この人。


「ウタカタリーナ様」

「はい!?」


 やっぱり、私に何か用??


 声は男の人。怪しい。不審者だ。つ、通報……


「あなたに、お願いがあって参りました」

「お願い!?」


 な、何?


「はい。あなたに、オペラに出ていただきたいのです」

「オペラ!!?」


 一番されたくない、お願い来た!!


「出演料は、いくらでもお支払いします」

「え、いえ……」


 お金なんかいくら積まれても、オペラだけは。


 なんで急にこんな人が。怖い。


 謎の人物、頼みごと、お金、恐怖――


 この人、そう。


 死神だ!!


 前世の世界でオペラの作曲とかしてた超有名な音楽家モーツァルト――彼の家に仮面をつけた謎の人物が突然訪問してきて作曲を依頼した。モーツァルトは依頼を受けたけれど作曲中に死んでしまった。作曲していたのは鎮魂歌(レクイエム)という不吉さもあって謎の人物は死神だったのではないかと語り継がれている。


 そっくりな展開だわ。


 なんで?

 私は作曲家でもないしオペラもしない。

 ただ、料理ルートを突き進んでるだけなのに――

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