幕間〜王子様の態度
もう、先生来てるかもしれない。
――廊下が長い
それにしても、料理の準備上手くいったわぁ。
あれだけスムーズに進むと気持ちがいいね。
……歌いだしたくなる。
ダメよ、歌は。
オペラルートは封印するの、したはずよ。
それに、お城で歌ったりしたら "綺麗な歌声ですね" とか言ってイケメン宰相とか出てくるかもしれないじゃない。
王子様とも、料理も、何もかも順調に行ってるの。
ここでイケメンに出会ったりしたら、ざまぁルートが開いてしまうかもしれない。私はどう考えても本来、ざまぁされる側の令嬢なのよ。悪役令嬢から王子様を奪ったり、奪った王子様に命の危険が迫ったとき見てるだけだったり、ヒロインはしないクズ行為してきたことは自覚してる。
だからって、ヒロインの座は諦めないしイケメンにたぶらかされて全てをブチ壊したりしない!!
でも、ちょっとだけ歌ってみますか。キョロキョロ。
誰もいないみたいだけど、もしイケメンが歌に誘われて出てきても今の私なら――
「ラ、ラ〜〜〜ラララ〜〜〜」
ふぅ、廊下でも綺麗な城で歌うと気持ちいい。
誰も来ないし。
「綺麗な歌声だね」
はい! 後ろから来た!!
だ、誰!?
って、なんだ、王子様か。
「王子様――」
笑顔で目をみはってる。
イケメンじゃなくて、王子様に驚いてもらって褒めてもらえて嬉しいな。
王子様も歌いたくなったりしてる?
……私を見たまま動かなくなってる。
もしかして、覚醒中?
私とオペラやろう! とか言い出す!?
「王子様、ど、どうしたんですか?」
「あ、ああ、あのね」
普通に話しだした。
覚醒しなかったんだ……?
「話したいことがあって、追いかけてきたんだ」
「なんでしょうか?」
「明日の予定、何も決めてなかったね」
「そうでしたね!」
そうだ、この世界は手紙しか通信手段ないんだった。
何も決めず帰ったら大変だよね。
「明日も、城に来てくれる?」
「はい。いつでも」
「じゃあ、いつでも来て。私はテノールード王子達を迎える準備があるから午前中は会えないかもしれないけど、その間、城で好きに過ごしていてくれ。家臣達には君のこと、その、伝えておくから」
意味深な、目配せと笑顔をいただきましたわ。
家臣達に私のこと、なんて伝えるんだろう。
「ありがとうございます……」
「合流したら、もてなし料理の最終確認をしたり、お昼を一緒に食べようか」
「はい!」
「それじゃあ、話しはこれで」
「はい……」
王子様、また私を見て固まった。
やっぱり、歌について何か?
「あ、じゃあ。私は、これで――」
王子様、また会社員みたいな態度になって行ってしまった。
時々、前世の態度が出てしまってる。
料理中に聞いたところによると、私より少し早かったくらいで転生して日が浅いから。
大丈夫かな、おもてなし。
――王子様のことは信じられる。
ここぞという時は、王子様してるもんね。
誰よりも、カッコよくて優しい王子様。
早く、結婚したい――!!
「いや、今は早く帰らないと」
家到着〜
嫌な予感がする。
家に入ったら、先生が立ってるとか?
「……ただいま帰りました」
誰もいない。
と安心しかけたら、お母様がリビングから小走りできた!
「おかえりなさい、もうテーブルマナーの先生が来てますよ」
「やっぱり、もう来てますか!?」
遅刻しちゃった、
絶対、恐い女の先生で怒られるんだ。
確かめに行こう……




