さばの味噌煮定食
「味噌汁の具は何にしようか?」
味噌汁に集中しよう。
「そうですね、シンプルにワカメとか。海藻のなかにワカメそっくりなのがありますから。王子様は何がいいですか?」
「ワカメいいね。あと、豆腐とかいいね」
だんだん完成に近づいていく。
また目を合わせて笑顔を交わすことができた。
「味噌汁は、さばの味噌煮にも合うし丁度よかったね。名前も異世界っぽくしよう」
「そうしましょう」
「名前は後で考えるとして、メニューは決まった。さっそくとりかかろう! 材料集めだ」
私たちは食材置き場を見たり、コックさんに相談したりして材料を確認した。
「魚も葉っぱも海藻もあるし、味付けは味噌と醤油があればできるものばかりだから大丈夫だね」
「はい。プリンア・ラ・モードの材料も卵、ミルク、砂糖、フルーツ全部あるので大丈夫ですね。足りないのは、味噌煮に使う生姜とおひたしのゴマと味噌汁の豆腐です!」
「困った時の、日本をモチーフにした国頼みだ! あそこにはある気がする!」
頼みの国に材料はあった。
材料も揃い、調理開始!
王子様と料理するのは楽しい。並んで笑いあって、
「味見して、あーん」
あーんしたりして。
イチャコラしてしまう。
真剣にやらんとまた、ざまぁされるで。
突っ込み不在なので自分で入れて落ち着かなればならない。王子様もそうなのか、私たちはすぐに真剣さを取り戻した。
数時間後〜
できた料理を盛りつけて。
さばの味噌煮定食完成!
「完成だ!」
「完成ですね!」
嬉しくて気分が上がっていく。テーブルに並べる動作がつい、大げさになりそう。ラララ~とか歌い出しそう。ダメよ、オペラは!
落ち着いて、並べた料理を眺めてみる。
白い皿に盛りつけた、さばの味噌煮。ガラスの小さな器に盛った、おひたし。白い器に盛った、ごはん。木製のスープカップについだ、味噌汁。
「完璧……」
思わず呟いていた。
「完璧だね」
王子様も。
「試食しよう!」
「はい!」
向い合せでテーブルにつき手を合わせ、
「いただきます」
一緒に言って箸を取った。
「まずは、念願の味噌汁から飲もうか!」
「はい!」
私と王子様オリジナルの味噌。
ワカメそっくりな海藻だけのシンプルな具。
同時に味噌汁をすすった。
味噌味は濃いめでしっかりしてる。口のなかに懐かしい味が、鼻に風味が、体中に温もりが広がっていく!
「わぁっ、おいしい……!」
「おいしいなぁ……やっぱり、味噌汁を飲むと落ち着くね」
「落ち着きますねぇ」
私達はホッと一息ついた。
「……この日を忘れないよ」
王子様……
味噌汁越しに、なんて素敵な瞳と笑顔。
「味噌汁が飲めたのは君のおかげだ。ありがとう」
「私のほうこそ、こんなおいしい味噌汁が飲めたのは王子様のおかげです。ありがとうございます」
キスしそうな雰囲気。
さばの味噌煮定食が間にあって届かない。
私たちはおとなしく、さばの味噌煮に箸をつけた。
「これも、おいしいです!」
「おいしいね! 味噌味が薄すぎず、濃すぎず」
「甘すぎず、辛すぎず」
「完璧だ……米ともよく合うよっ」
「おひたしも控えめな味加減で、箸休めに丁度いいですよ!」
「これはいける!」
同時に断言した!
後は夢中で食べるだけ。
ふと、目が合うと笑顔を交わす。
こんな風に一緒に食べていると、将来を想像してしまう。幸せな夫婦生活を――
ここは、お城だけど。ささやかな幸せがありそう。
時にはオペラして華やかな幸せを――
何を考えてるの!?
さばの味噌煮定食に集中しよう。
「ごちそうさまでした」
満足のため息をつけた。
「食後のお茶もほしいですね」
「そうだね」
水を飲んで一息つく。
お腹が満たされたら、やる気が湧いてきた!
「後はアレンジして、デザートのプリンア・ラ・モード作りですね!」
「さっそくとりかかろう!」




