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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

【短編】さすがの宇宙人でもこのシチュエーションは怖い

作者: 五十嵐誠峯

連載している作品がニッチなので少しは大衆受けを意識しましたがやっぱり自分には無理な話でした。

黒いジャージを着たロン毛の青年は、宇宙人達の前で呆れながら口にした。


「そもそもさあ、何でわざわざ宇宙人は地球を支配しに来るのさ。しかもこんな宇宙船の中に攫いやがってよ」


背丈が成人男性の腰ぐらいまでしかない宇宙人達は青年からこう問われると、一斉に一塊に固まって体を震わせる。


「・・・何かビビってね?もしかしてオレのことが怖いのか?」


青年の言葉を聞いた宇宙人は揃って首を縦に振る。すると青年は「何だよ。オレの言葉分かるのかよ・・・」と呟き、腕を組んで天井を見上げた。


そして沈黙がこの宇宙船を包んでいる中、リーダー格らしき、最も体格が良く頭部が大きく発達している宇宙人が勇気を振り絞ったような様子で口を開いた。


「koんF@nは。我wareFべtuKwaku星kaOkimaしQ・・・」


「いやこっちが理解できる言葉で話せよ。何言ってんのか理解できねえよ」


青年は大きなため息をついてやれやれといったような素振りを見せる。


だいたい、どうして自分がこんな奴らに連れ去られてこんなやり取りをしているのか。考えてみればこの夜、酒を買おうとアパートを出たのが運の尽きだった。


アパートの扉の前では前日の台風のせいで飛んできた段ボールや生ごみが散乱しており、酷い有様だった。それを避けるようにして家を出たのだが、酒を求めてコンビニに行く道中でも犬の糞を踏んでしまったし、ようやくお目当ての商品を購入してからも後ろから大きなトラックに迫られて散々だったのだ。


「でさ、ここどこ?何か見たことない機材がたくさんあるんだけどこれが宇宙船なの?」


彼が周囲を見渡すと、そこには確かに地球では見られないような物体がそこら中に置かれている。ただ一部には何となくモニターやキーボードらしき機械も目に入る。


「・・・や、yaはL珍siEdeRka?さ、さwaっWmo大jyou”@でsu)・・・」


「だから何を言ってるのか分かんねえんだってば。しかもそんなにビビんなよ。オレは腕っぷしそんなに強くねえよ」


自宅へと戻る最中、背後からトラックが突っ込んできた際には間一髪で何とか避けられたのだが、青年はそこから気を失って以降の記憶が全く無く、気づけばこの宇宙船の中で目を覚ました状況。


しかもせっかくコンビニで購入した酒もどこかで落としたようだし自分の周りには見当たらない。


もしかしてこの宇宙人共に盗まれたのか?なけなしの金で買ったやつだぞ。


「もうどうすんだよこれ・・・。明日はバイトがあるっていうのに・・・」


青年が宇宙船の天井を再び見上げてこうこぼすと、リーダー格の宇宙人の隣にいる少し細めの肉体を持った個体が、恐る恐るといった感じで声をかけてきた。


「我wareF貴方gaQと友kou関係InariたEnoですga。そno・・・貴方KhouはdaE丈夫deRka?」


「今回の言葉は長すぎだろ。・・・って、え?『貴方』?『関係』?日本語喋ってんのか!?」


これまで宇宙人が何を言っているのかさっぱり分からなかった青年が、ここで反応する。そうすると宇宙人達は一同が「「「「わッ!」」」」と叫んでさらに怯え始めてしまった。


「お、おい何だよ。どうしたんだよ。言葉が通じたのがそんなに怖いのか?」


ロン毛の頭をかきながら青年が尋ねると、宇宙人達はガタガタと体を震わせて彼のことを見つめる。


「・・・地球を支配しに来てるのにそんなに人間のことを怖がっていいのかよ・・・?」


「ちgaEまsu!ちgaEまsu!」


「何か『違います』って言ってる気はするけど・・・。何だよ地球を襲いに来たわけではないのかよ?」


彼の問いかけに対し、宇宙人達は勢いよく首を縦に振る。それはもうその首がもげそうなほどに。さらに宇宙人達は揃ってじりじりと後ろの方に下がっていき、青年から距離を取った。


そして様子を見た青年もまた、宇宙人とは離れるように後ずさりをしていく。


「お、おい・・・。まさか人体実験に使うわけじゃないだろうな・・・。お、おい!何とか言えよ!」


「あ、aKう・・・。そmoそmo、貴方はMuDんdeい>と思$noでsuT@・・・」


「『あ』とか、『そ』とか、『貴方』とかしか分かんねえよ結局・・・」


話は平行線のまま。


しかし青年の目の前で宇宙人達はコソコソと話をし始め、しばらくしてリーダー格が彼に向かってある提案をした。その宇宙人は青年の後ろにある扉を指さしこう言ったのだ。


「そ、soBかra外niW@るkoSがdeGまsu・・・」


「え・・・そこの扉から出ても良いのか?」


宇宙人達は再び首を縦に振る。


その様子を見た青年はゆっくり、慎重に後ずさりの動きをしながらそこへと向かう。そしてようやく扉に近づいたところで体の向きを変えると、正面にあるそれは自動で開き、目の前には見慣れた道路が広がっていた。


「何だ。家のすぐそばの道路じゃねえかよ。・・・ん?何かパトカーやら救急車やらがあそこに固まってんな・・・。何かあったか?」


それでも彼は「まあいいや。じゃ、これで帰るからな」と宇宙人達に告げる。


振り返ると宇宙人達は自分のことを震えながら指をさしたり、もしくは手を合わせている者もいた。それを見た青年も「まあそりゃ宇宙人の全員が全員、地球人より強いわけないか」と呟いて外に出た。


しかしその瞬間、彼は違和感を覚える。


「・・・あれ?オレ・・・浮いてる?」


そして足元を見るとその変な感覚の正体に気づいた。


「・・・オレの下半身、何か薄くね?」





以下、この報告書は地球のある言葉で記す。我々の言語で書いたものは昨日送信済みである。


第224回惑星現地調査レポート:青い惑星(通称・地球)


我々は先日、地球において、ある高度知的生命体―その生命体の言語表現に則り以後“彼”と呼ぶ―と接触した。そしてこの生命体は地球で最も繁栄している種族である。


しかし彼は既に死亡していた。どうやら同じ高度知的生命体が操縦する機械との衝突を避けようとした際、外壁に頭部をぶつけたのが死因のようである。周辺を調査していた乗組員の数名が、頭から血を流している遺体を事前に確認していた。


つまり我々が出会ったのは死後、肉体回路から離れた生命体のソフトウェア部分―地球の生命体間では“魂”と称するもの。以後、そう記す―であったのだ。


肉体から離脱したそれが一体全体どうやって我々の船に侵入していたのかは不明であるが、気づけばそれは談話室に姿を現した。


ただこれが地球、特にこの彼が暮らしていた地域の文化研究を記録していた先行研究の記述通りだったことに、驚きが隠せない。


本来、この高度知的生命体の魂は死後に自然消滅するものである。しかし不思議なことに、彼が暮らしている地域というのは魂が稀に顕在化する特殊な場所でもあると先行研究には記されていた。おまけにそれには『顕在化された魂というのは、死亡直前の姿と瓜二つではあるものの足元がグラデーション状に薄くなっている』とも書かれており、今回まさにそれを確認できたのだ。


さらに驚くべきことに彼は我々とコミュニケーションを取ることも可能だった。


肉体から離れた魂は音声を発する器官が無いために音を発することも不可能なはずだが、彼は言葉を発することができたのである。


ただ、彼は我々の言葉を理解することが困難な状態になってしまっていた。


我々は地球に来るにあたり、こちらの言語をいくつもマスターした。特に今回調査を行った研究チームは、日本語という言語をその土地に暮らす生命体と遜色なく扱える優秀な構成員で固めていたのだが、それでも我々の話した内容を彼は聞き取ることができなかった。


とは言え、地球における高度知的生命体の魂とコミュニケーションを取れたという奇跡的な機会に感謝し、我々の母星へと戻りたい。


追記:生命体の死後の肉体から離れ、顕在化した魂を実際に見たことで、調査員達は非常に恐怖を覚えた。帰星後、各々のメンタルケアをお願いしたい。もちろん、リーダーである私もだ。

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