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10話 親友

 放課後、保健室で薬を貰ったことでようやく腹痛が止んだ僕は、帰ろうとして下駄箱にいたところを汐咲さんに見つかった。


「あっ翠くん!あの後見なかったから心配したよ~」


 誰のせいだと思ってるんだ。


「ちょっとお腹の調子が悪くてね......さっきまで休んでたんだよ」


「もう大丈夫なの?」


 汐咲さんは心配そうな顔で僕を見る。


 そんな顔されたら僕も怒るに怒れないじゃないか。


 

 そうやって僕たちが他愛もない会話を続けていると、汐咲さんの隣にいた一人の女子生徒が口を挟む。


「ちょっと心美。私のこと無視しないでよ」


 汐咲さんを下の名前で呼ぶその女子生徒は、明るく煌びやかな見た目をした汐咲さんとは対照的に、地味目でぼーっとした雰囲気を纏っていた。


「ごめんごめん(しずく)ちゃん、完全に忘れてたよ~」


「しっかりしてよ、もう少し放置されてたら寝てたよ......で?その子が噂の翠くん?」


 雫と呼ばれたその女子生徒は、眠そうな目をこすりながら僕の方を向いた。


 この子のことは見たことないな、違うクラスだろうか。


 急に知らない女子に見つめられて緊張している僕に向けて汐咲さんは手を向けると


「そう、彼が翠くん。昨日私のことを助けてくれたの」


 そう彼女に僕を紹介した。


 彼女は僕を一瞥すると、ゆったりとした動作で手を差し出した。


「よろしく」


「う、うん。よろしく」


 僕はその手に応じる。


 あ、柔らかい......


 ふとそんなことを思うと、汐咲さんがジトっとした目で僕の方を見てくる。


「ちょっと翠くん。なに鼻の下伸ばしてるの」


「ご、ごめん!」


 彼女の珍しく棘のある言葉に、咄嗟に雫さんから手を引く。


 雫さんはそんな僕の行動に嫌な顔一つせずに元の位置に手を戻した。


「ほら心美、怖い顔してないで翠くんに私のこと紹介しないと」


 ボーっとした顔のまま雫さんはそう言ってくれた。


 見た目よりも案外気遣い上手なようだ。


 彼女の言葉に汐咲さんはハッとした顔をして僕に向き直る。


「そうだった、紹介がまだだったね」


 汐咲さんが彼女に手を向ける。


「彼女の名前は及川 雫(おいかわ しずく)。私の一番の友達なの」


 

 及川雫─そう呼ばれた彼女は、親友という言葉が嬉しかったのか僕に向かって無表情のまま両手でピースしてきた。


「ご紹介に預かりました及川雫です。心美の親友やってます」


「ご丁寧にどうも......」


 僕が見た目にそぐわないはっちゃけたポーズに困惑していると、汐咲さんが僕に耳打ちしてきた。


「雫ってね、いつもは眠そうにしてるけど実は凄いんだよ!」


「汐咲さん、内緒話ならもう少し小さい声でお願い......」


「あっ、ごめん」


 汐咲さんは恥ずかしそうに頬をかく。


「心美って結構天然なところがあるからね。私がよく見張ってないと危ないのよ」


 ちょっと分かるかも、完全無欠なイメージを持たれがちだけど意外と抜けてるんだよな。


 僕が心の中でうんうんと頷いていると、雫さんはピースしていた両手を元に戻し


「実際に今朝も考えなしに翠くんに突っ込んで困らせちゃったみたいだし」


「あだっ」


 汐咲さんの後頭部をチョップした。


 二人は親友というだけあってかなり気安い関係のようだ。


 それは後頭部をチョップされても汐咲さんが笑顔を崩さないことからも察せられた。


「でも安心してね。もう君はこれから変な目で見られることもないと思うよ」

 

「どういうこと?」


「君のことは、"心美が幼少期に離れ離れになってしまった幼馴染"だっていう噂を流しといたから」


 そういってまた雫さんはピースする。


 まさかそんな出鱈目信じる人の方が少ないと思うが......


 だが確かに、今朝と比べると僕たちのことを変な目で見る人が減った気がする。


 こうして廊下で長話をしていても、好奇の目線は感じるが今までのような敵意の目線は感じない。


「でもそんな簡単に信じるかな?」


「それは君、()()だよ()()


 雫さんは制服の袖を捲り、その細く白い二の腕をポンポンと叩いた。


 一体どんな魔法を使ったんだろう。


 なにはともあれ有難い。


 もう気にしないとは言ったものの、できれば変な目で見られるのは避けたい。


「ね?雫はすごいでしょ?」


 汐咲さんは得意げに胸を張る。


「うん、ありがとう雫さん」


 僕は素直にお礼を伝えた。


「どういたしまして。......ところで心美、今日またバイトじゃなかった?」


 雫さんが手首に着けている小さな腕時計を見ながら言う。


 気づけばかなり時間が経っていた。


 汐咲さんはスマホで時刻を確認すると、途端に焦り始める。


「やばい、もうこんな時間!?翠くんゴメン!私先に帰るね!」


 そう言って、彼女は慌てて学校を飛び出していった。


 僕が呆気に取られてその後ろ姿を見ていると、雫さんが隣に立つ。



「翠君、このあと時間ある?」

完読ありがとうございました!

少しでも面白いと思って下さったら下の☆を★にしてくれると嬉しいです!

次回にもどうぞご期待ください!

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