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WPM:能力探偵七加瀬の事件簿  作者: 空場いるか
花の咲く街
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最終日2

午後19時。


とうとう後一時間でフィナーレを迎える祭りは、嵐の前の静けさ・・・とはいかず盛況で、場所取り合戦から出店の賑わいも、観光客の増加と共に加速している。


そんな祭りの賑わいの中、出店を殆ど回り切ったと言えるほどに遊んだ私達は、最後の仕上げに花火鑑賞の場所取りの為に移動していた。


事前に聞いていた情報によると、川の近くの方が北側・南側両方の花火をしっかりと見れるとのことなので、そちらへと手を繋ぎながら向かう私達。


「ワクワクですねえ。三日目はどんな花火が打ち上がるんでしょうか?」


「き、きっと一番大っきい花火がドカンと打ち上がるんじゃないかな?」


「いーや。小っちゃいのが一杯と、同時に大きいのが一個打ち上がると見た」


「どっちもありそうですねぇ」


私たちは花火への期待に胸を膨らます。

そんな他愛もない会話のなか、七加瀬のポケットから微かに声が聞こえてくる。


『・・・い。・・・・かい?』


「お、おい、七加瀬。ぽ、ポケットから、なんか声が聞こえるけど・・・」


「ん?ああ。そういえば、一昨日からトランシーバー入れっぱだった」


「い、いや、着替えろよ・・・」


「七加瀬さん、ジャケットは良くクリーニングに出すのに、ズボンだけは一向に洗わないですよね」


「あんまり汚れてる気がしないんだよな〜」


そういって、恐らく臭いであろうズボンのポケットからトランシーバーを取り出す七加瀬。


恐らく内容はトランシーバーを返せといった物だろうが、七加瀬の臭さが移ってしまったトランシーバーを返される花火組合が可哀想でならない。


「うーっす。七加瀬だ。どうしたんだ〜」


悪びれもせず、太々しく言葉を返す七加瀬。

事件が解決したからって緩みすぎだろ、コイツ。


私がそんな事を考えて溜息を吐いていると、トランシーバーからは予想と180度違った、緊迫した玉屋の声が聞こえてきた。


『七加瀬!まだトランシーバー持ってたんだね!よかったよ!!困ったことが起きた!知恵を貸して欲しいんだ!』


「・・・困った事?」


玉屋の真剣な声に、七加瀬も巫山戯る事を辞めて真剣に質問を返す。


そんな七加瀬に対して、次に玉屋華がトランシーバー越しに放つ言葉は、到底信じられない言葉であった。


『焔とその仲間に話を聞いてみたら、彼らが初日に爆弾を仕掛けた場所は、中央の灯台のみだって言うんだ!』


一瞬思考が遅れる。

しかし、ソレはありえない事だ。


だって・・・


『じゃあ、あの西の灯台のドデカい爆弾は、一体誰が仕掛けたんだい!?』


時が一瞬止まる。


私には、全く理解出来ない事柄だが、七加瀬はこの一瞬で何かにたどり着いた様だ。


「くそっ!!有利!一番遠い東の灯台に今すぐ向かえ!!時間がない、全速力だ!!」


「分かりました!!」


七加瀬の言葉に、すぐさま駆け出す有利。


その動きは忍術を使っているのか、人混みに流されずとても速い。


「幸子!走るぞ!」


私と手を繋いだままの七加瀬は、そのままに有利とは違う方向に走り出した。


「ど、どこへ向かうんだ!?」


「西の灯台と、中央の灯台だ!途中まで道が同じだから、一緒に走るぞ!」


「ま、待ってくれ!何で灯台に向かうか分からない!爆弾と何の関係があるんだ!?」


『そうだよ!勝手に話を進めるんじゃないよ!私にも説明しな!』


「まず、確かな事が一つ。あの爆弾は確かに焔達が仕掛けた物ではない。おかしいと思ったんだ。爆弾が起動していないなんて。それに、コレまでの爆弾と爆発の規模が違う事も気になっていた」


『おい!それなら流石に、警察に言った方が良いんじゃないかい!?』


「何言ってるんだ。それで花火が止まったら、本末転倒なんだろ?」


『馬鹿!そんなの建前で、鍵矢の奴らの仲を戻す為に言っただけだよ!裏の世界に詳しくない私でも分かる。あの爆弾が太田の作ったものじゃないとしたら、それを作ったのは絶対にテロリストだ!!そんな危険な奴らとやり合うなんて、何個命があっても足りやしないよ!』


「しかし、今更何をやっても奴らの作戦は止まらないだろうさ。それこそ連絡で警察が動き出してでもみろ、直ぐに爆弾がドカンだ」


『なんだい!?もしかしてアンタ、テロリストが何で爆弾を仕掛けたのか、その理由が分かるのかい!?』


「ああ、勿論だ。・・・そもそも、当初の依頼は、花火大会の爆弾の起爆の阻止だったんだ。玉屋は安心して、いつもの様に花火を上げれば良い。後の事は、俺達に任せろ」


『任せろったって、アンタ!』


「時間がない。切るぞ」


『まちな!!』


ブツッ


トランシーバーのスイッチをオフにする七加瀬。

そんな彼の表情は焦燥と、ほんの少しの期待が見え隠れしていた。


「お、おい七加瀬。て、テロリストって!!」


「ああ、そうだ。GMが戦争を禁止して以来どんどんと湧いて出てくるテロリスト共のおでましだ。腹を括れよ、幸子。こっからが本番だぞ」


「で、でも何で灯台に向かっているかが、ソレでも分からない! 爆弾が仕掛けられているのがバレたなら、テロリストは爆弾の位置を変えるのが普通じゃないのか?!」


「今回のテロリストの爆破は、予告が来ていない。つまり、爆発させない事と引き換えに何かを得る事が目的ではなく、爆発した結果で何かを得る事が目的なんだ。だから、爆弾の位置は変わらず灯台だ」


「ば、爆発した結果で何かを得るって、一体何を?」


「この前の事件と同じ思考で進めればいい。灯台が爆発で派手に吹き飛ぶと、どうなる?」


「は、花火が揚げられなくなる!」


「そうだ。でも、花火を阻止したいならば、焔と同じ様に脅迫文を送れば良い話だ。狙いはもっと別で、恐らく物理的なモノだ」


「ぶ、物理的な物?」


「悠長に説明する時間がないな。灯台が派手に爆破されると、根本の橋が機能不全を起こす。そうすると、どうなる?」


「ま、町の救急車の北側と南側の行き来が出来ない!」


「そうだ。そして、町案内の時に阿佐見が言っていたよな?北側に位置する警察署が拠点となり、北側から南側へと救急車とパトカーが移動する時、あの橋を使うって」 


「つ、つまりあの橋が全て落ちると、南側で悪事が働き放題だ!」


「そう。そして一番の狙いは恐らく、俺も初日に南側で金を引き出しにいった、全国でも有名な巨大銀行。つまりは今回のテロリストの狙いは、最も利益に直結する・・・金銭を得る為の、銀行強盗だ」

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