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WPM:能力探偵七加瀬の事件簿  作者: 空場いるか
花の咲く街
92/97

Luck

「ねえ君、綿飴買いすぎたから一個もらってくれない?」


「おい坊主、タコ焼きを焼きすぎたから一つやるよ!」


「君達、姉弟?用事が出来て使えないから、このくじ引き券あげる」


「おい、ソコの男の子・・・」


「ねぇ、ちょっと貴方・・・」




・・・・・・何だ、これ?


たまたま再会した少年と祭りを歩いているとひっきりなしに掛けられる声と、その結果増える祭りの景品と食品の数々。


最初はたまたま運がいいだけと思っていたが、ソレでは説明出来ない程に今の状況は度を超えている。


タダで譲り受けた数多くの物品が持ちきれなくなれば、おあつらえ向きの大きなバッグを譲られ、ソレすらもパンパンになると、今度は物々交換で景品が更に高価な物に早変わりしていく。

挙げ句の果てに子供向けの玩具が白金の指輪に早替わりしたタイミングで、私と少年は祭りから逃げ出した。


出店が多く並ぶ町の市街から抜け出し、出店が並ばない方へと移動し続けた私たちは、気づけば町から離れて、町を囲む山道を登っていた。


これ程に距離を置かなければ出店と人混みから抜け出せ無い事から、祭りの規模の大きさが分かると言った物だ。

最も大きなその規模によって、私たちは町から追い出されてしまった訳だが。




「い、一体どうなってるんだ?」


「はぁ・・・はぁ・・・すいません。こうなってしまうとは」


「い、いや。べ、別に私は良いんだが・・・」


正直あのまま祭りに滞在していれば、周りがヒートアップしてどうなってしまうか見当もつかない。


私は軽く息を切らす少年を見つめる。

どこからどう見ても普通の少年だ。

変わったところなんてただ一つもない。


しかし、明らかに彼の運は度を越している。


初めにあった時も、そういえば自販機から大量の飲み物がお金も入れてないのに吐き出され続けていた。


彼の能力なのだろうか?

にしても、これだけの幸運を引き寄せる能力であれば、ソレこそ開運グッズを星の数ほど消費しなければ為し得ない筈なのだが・・・。


「? お姉さん、どうしたんですか?そんなに僕の顔をじっと見て」


「い、いや、凄い運だなと思って」 


「・・・そうですね。でもだからこそ僕は今、生きていられるんです」


「はは。た、確かにその運だと生きやすそうだ」


「そう言う意味じゃないんですけどね」


たわいない話を話しながらも散歩感覚で山道を歩いていた私達は、たまたま見つけた小さな看板に書かれた公園という文字に惹かれて、山道からソレて細い道を進む。


「こんな所に公園なんてあるんですね。またあんな事にならない様に人が少なければ良いんですけど」


「ま、町の郊外だし、騒がしい声も聞こえないからきっと大丈夫だ」


何か面白い物でもあれば良いのだが。


偶然とはいえ再会できた少年。

祭りで楽しむ予定だった彼を半ば無理やり引きずってきてしまったからには、少しでも彼に楽しんでもらわなければ、年上として失格だ。


遊具でもあれば良いのだが・・・。

あれ?でも10台後半の子は、遊具で遊ぶのか?

んー?

まあ、公園についてから考えよう。


一人でそんな脳内会議を開いて歩いていると、立ち並ぶ木々が開けて、広い公園が見えてくる。


芝で整備されたその公園は遊具こそなかったものの、小高い山の高所に位置している関係で、手摺りの設置された向こう側には祭りの開かれている町が綺麗に覗けた。


「うわあ!綺麗ですね!」


手摺に向かって走ってゆく少年。

彼の顔は祭りでの困った様な表情ではなく心底楽しそうで、この公園に立ち寄ってよかったと心から思えた。


「これ、夜になればもっと凄いですよ!出店が光って、凄い良い景色になりそうです!」


そう叫ぶ少年。


少年の言葉に私も景色が気になり手摺に向かう途中で、私と少年以外の声が響く。


「此処からは花火も綺麗に映る。最早誰も知らない穴場じゃから、秘密じゃよ?」


公園に響くシワがれた老人の声。


私からはちょうど死角になっていた公園の端。

手摺に近づくと見えるソコには、車椅子に乗ったサングラスをつけた老人と、ソレを引くお手伝いさんが居た。


「お爺さん、この町の人なのですか?」


少年が興味津々そうに老人に尋ねる。

こういう物知り老人に話を聞くと話は長くなるきらいはあるが、ソレでも面白い話が聞けるのは確かだ。


私も老人の声に耳を傾ける。


「そう・・・だったんじゃが、儂は逃げ出したんじゃ。この祭りの眩しさから」


「なんで、眩しいのに逃げ出したんですか?」


「実は儂は何年も前に運営に携わっていたんじゃが、数代も続く祭りじゃ。代を重ねるたびに募る期待。ソレがドンドン強くなってしまった。ソレに儂は飲まれてしまったんじゃ。だから、この町から逃げ出した。あの頃は儂も若かった。上手く時代に合わせる事が出来たらよかったんじゃが、頑固だったんじゃ」


「よく分からないですけど、凄いですね!こんな大きな祭りに携わっていたなんて!」


「ははは、そうじゃろう?昔は“北側の花火は儂が担当していたんじゃぞ?”」


北側の花火を担当していた・・・!?


「す、すいません!お、お爺さん、お名前は何と言うのですか!?」


老人に駆け寄る私。

その勢いにサングラスの奥で目を丸くしつつも、老人は言葉を返す。


「儂の名前か?・・・もしかしてお主、花火組合の者か・・・?いいや、今更関係がないか。儂の名前は鍵矢 銅一郎。今は無くなった、北側花火組合の組長じゃよ」

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