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WPM:能力探偵七加瀬の事件簿  作者: 空場いるか
花の咲く街
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再会

「今日は遊ぶぞーーーー!」


「うおーーーーー!」


「う、うおぉ・・・?」


花火大会二日目。

時間は昼過ぎ。


私達事務所メンバー3人は、旅館で女将と組合員と本日の打ち合わせを行った後に、町に繰り出していた。


「初日は遊べなかった分、限界まで遊びますよーーー!」


七加瀬と有利は、二日目でより激しさを増す祭りの喧騒に呑まれて、ハイテンションだ。

正直20代男女とは思えない。


「射的射的射的ーーーー!」


「輪投げ輪投げ輪投げーーーー!」


・・・まあ、楽しそうだからいっか。


私も何か楽しそうな出店が有れば遊びたいが・・・。


むむ。

あれは、綿飴の出店じゃないか。


食べた回数は多くは無く、その経験上そこまで好物と言えるだけの味では無かったと思うのだが、何故ここまで惹かれるのか。


普段ならば惹かれる事がない物にも、つい目がいってしまうこの現象は、祭り効果とでも言えるだろう。


私は綿飴の出店の列に並び、少ししたあとに目的の綿飴を購入出来た。


長めの割り箸に纏わり付いたソレを一口食べる。


・・・想像通りの味だ。

まあ、そんなもんか。


残念ながら想像を超えることの無かったその綿飴は、しかしながら合格点の味を超えていたので充分に食は進み、すぐに全てを食べ切ってしまう。


「ご馳走様でした」


ゴミとなってしまった割り箸を近くのゴミ箱に捨てた後、中途半端な食事で胃袋が動き、逆にお腹が空いてきてしまったことに気づく。


そこで目についたのが、焼きそばとタコ焼きの出店だ。

どちらも祭りのテンプレート的な出店だが、ソレらの看板から目が離れない。


一体どうしたんだ、今日の私は。


普段ならば、ここまで食い意地は張っていない筈なのだが。


まあ、いっか。


私はまた出店に並ぶ。

そして手に入れた焼きそばとタコ焼き。

ソースの効いた二つは、正直いって塩分の効き過ぎた辛い出来なのだが、ソレでも祭りの場では美味しく感じてしまうんだな、コレが。


そんな事を考えつつ周りを見渡すと、あることに気づく。


「あれ?七加瀬と有利は?」


二人が知らぬ間に居なくなってしまっていた。

さっきまではソコの輪投げ屋と射的屋に・・・あれ?


出店があると思っていた方向に視線をやると、知らぬ風景。


どうやら綿飴や焼きそば&タコ焼きを食べながら少しずつ人に流されて、元の位置より移動してしまった様だ。


「はぁ。全く」


七加瀬と有利はすぐに何処かに行ってしまうのだから。困ったものだ。

そう、決して私は迷ってなど居ない。

たまたま、そういう感じになっただけだ。


ソレに、今日の仕事の打ち合わせは既に終わっている。その時間に目的地に到着していれば良いだけなのだから、迷っても問題ない。

いや、迷ってはいないのだが。


「あれ?お姉さんじゃないですか」


そんな折、後ろから声を掛けられる。

その声は聞いた事が有るのだが、なかなか人物の顔が思い浮かばない。


私は答えを求めて後ろを振り返る。


「た、確かキミって、自販機の・・・」


ソコには布連通町に電車で来る際に、駅のホームで出会った少年が立っていた。


「はい。また会えるなんて、僕って本当に“幸運”だ」


そう微笑む彼は、底抜けに明るい笑顔を浮かべた。

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