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祭囃子✳︎conviction3
19時59分30秒。
自ら設置した爆弾の起爆時間になっても何も起こらない中央の灯台を、今や鍵矢の町では無くなった川の北側から眺める。
「爆発しない・・・か」
その理由は分かりきっている。
「やるじゃないか、探偵」
わざわざ旅館から、投光器の柱を登る機器まで盗み破壊したのに、あの高所の爆弾を解除するとは。
命を危険に晒して柱をよじ登ったのか。
ソレとも、あの時間に打ち上がるはずのない巨大花火を使って何かしたか。
「俺の負けだな」
既に部下とは誰とも通話が通じない。
こちらも全て捕縛されてしまったのだろう。
「さて、どうしたものか」
破られると思っていなかった作戦が全て破られてしまった、本来ならば諦めるべき場面。
しかし・・・そんな妥協点を見出すつもりは、サラサラない。
やるならば、100か0か。
俺は、最後に残った爆弾の入ったカバンの肩紐を握りしめる。
この爆弾の使い道は、もう決めていた。
20時を過ぎて、本格的に打ち上がり始めた花火。
その光に背を向け、俺は思い描く終わりへと歩を進めだした。




