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祭囃子✳︎conviction2
感動的な話だ。
悲劇のヒロインを演じるのは、さぞかし楽しかろう。
それとも本当に、何も知らないのか?
いや。どちらにしろ、関係ない。
俺は必ず、この間違いを正す。
『リーダー。全員、準備完了だ』
花火組合で用意されたトランシーバーとは別の、こちらのチームが持つトランシーバーから声が聴こえる。
「そうか。それじゃあ、こちらも始めよう」
俺は手元のスマートフォンのマップに表示されている、今なお動く光点を見つめる。
「今から指定する場所に、角と亮に向かってもらう」
『例の探偵にぶつけるんだな?』
「ああ。不安要素は早めに潰した方が良い」
『了解』
トランシーバーの通信を一度切る。
マップの光点は、こちらの都合の良い様にどんどんと人気の少ない路地裏へと向かう。
爆弾でも探しているのだろうが、好都合だ。
「・・・復讐か」
探偵の言葉を思い出す。
そうだ。
人間を強く駆り立てるのは、常に負の感情だ。
憎悪、嫉妬、そして復讐。
その気持ちは、俺も負けていない。
「さぁ勝負だ。探偵」
暗い感情を隠さぬまま、俺は賑やかな町へと繰り出した。




