3/97
断(章)/double
手のひらは朱に染まっている・・・
燃えるような朱色。目の前には同じ色の池が広がる。
その池の真ん中には嫌いなアイツがいて、少し幸せな気分。いい気味だと思う。
周りは騒然としていて・・・蔑むような、それでいてどこか恐れも含んだような口調で聞こえてくる、
『切り裂き魔』
という言葉。
伏せていた顏を上げると、辺りの人間の視線は私に向けられていて、その時ようやくその言葉は自分に向けられているのだと気づいた。
そんなはずは無い。嫌いではあるが、ここまでするなんてあり得ない。
そんな者ではないと否定しようにも、私には・・・記憶というものが欠如していた。