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美談∬Creator
昔から、綺麗な物が好きだった。
光るもの、輝くもの、美しいもの、整ったもの、華やかなもの、清らかなもの、滑らかなもの。
全てカケガエの無い、失ってはならないもの。
一方で、その綺麗なものが穢れるのは耐えられなかった。
風化、老化、悪化、劣化、鈍化。
綺麗な物ほど、穢れやすい。
綺麗な物ほど、穢されやすい。
私の親は、穢す側だった。
鑑定士。私の親の仕事だ。
綺麗な物を値踏みする仕事。
詰まる所、綺麗な物を金銭などという、下賎な物で穢す仕事だ。
私は耐えきれずに家から飛び出した。
綺麗な物を作ろうと思った。
綺麗な物を守ろうと思った。
しかし、幼い私は・・・この世と人間は、穢れた物で廻っていることを知らなかった。




