四話 推薦された者
あれから数週間が経った。この前、学校からデジタル腕時計『プロスペック』が届いた。それはどうやら学校内外で使える便利もので、公海保守隊の一員であることを証明する、任務時の連絡などの役割がある。推薦されたことの恩恵もここでもあり、最初からある程度の金額がチャージされているのだ。俺にはメリットしかない。人の金を使うのはすごく気持ちいいからな。
俺は余裕をもって家を出ていく。制服に袖を通しているのだが、普段よりも動きずらい。でも慣れていくしかない。
『プロスペック』が届くとき、一緒にカリキュラム、シラバスなどをもらった。カリキュラムを読んでいたらわかったことがあった。
まず最初は制服適正があるかどうか調べるみたいだ。その後、武器適正を確認するらしい。
つまらないことだが前の学校にはあれきり行っていない。どうやら転入手続きは学校側がやってくれたみたいだ。菅助には悪いが‘また会う日まで‘そう思いながら線路を渡る。この世界では交通機関は主に電車になってしまった。電車から見える大半の景色は海だ。海の上の線路を通り、そこから見える海、なんてバカな景色なんだろう。
「危な」
俺は後ろから来ていた自転車に気付いて避ける。癖で歩いても時々後ろを確認するのだ。今回
はその癖に助けられた。というかちゃんと前を見ろよ!そんな強い殺意の思いを抱く。自負しているが俺はキレやすい。ただ口にして言っていないだけ。
そうして俺はあと少しで着く学校に向かった。
「エース隊こと柳隊隊長が推薦した者『山田成狩』、紅隊隊長が推薦した者『暁美冬紀、葱隊隊長が推薦した者『和瀬奈河、そして最後、秘密の執行隊こと黒猫隊隊長が推薦した者『ミュール』。計四人について思うことは?僕としたら柳隊と黒猫隊が珍しいと思っているけど」
個人情報が載った紙を読んでポイッと紙を空中で離す。とある学校にあるとある一室の中で二人話していた。
「そうだがな...黒猫隊隊長が自分で言うか?まったく、ただ『山田成狩』は一般人であるのに推薦されているが、本人のこれからの人間関係を心配して推薦されたことは最初は黙っておく」
「爺が」
黒猫のお面を被った人はそう言い放ち続ける。言われた側も気にしてはいない。
「そうだね、その通りだ。資料を読んでも一般人だ、他の四人は一度以上経験しているのに...さてと、今年は楽しくなるね」
「そうじゃな」
二人は笑った。一般人が推薦されたことは今回が初めて最後だが、明らかに異物な存在でしかない。二人は一般人とではブランクに差があり、『山田成狩』は他の三人よりも劣っているだろうと。そんなことがわかりつつも異物な存在に期待していた。