午後三時
K氏が連絡すると言っていた時刻、午後三時を迎える。
早速、K氏から電子メールが送られてきた。件名は「留美子さんへ」だ。それがスマホ刑事のスマホに転送されてきている。ただし、送信元のメールアドレスは、午前中にK氏が使ったアドレスと異なっている。これに関しては、通信事業者に照会することになる。
迷コンビが先にメールの本文を確認することになった。どんなことが書かれているのか分からないから、妥当な判断である。そのため留美子は少し待たされた。
読み終えたスマホ刑事が、マゴリ警部に判断を仰ぐ。
「留美子さんにも、そのまま読んで貰うっすか?」
「うー、まあこの内容ならな。本人次第だが、ありのまま読んで、なにか思い当たる節が見つかることもあるわな。そういう情報を聞かなきゃならんのだ」
「それはそうっすね」
スマホ刑事が説明することになった。
正体不明の人物から、留美子宛てに電子メールが届いており、それには不快なこともいくつか書いてあるけれど、捜査のために事情聴取も必要だから、協力して貰えるかどうかということ。
この説明を聞いて最初は少し迷った。
でも留美子はドラマが好きだ。テレビで、サスペンス、刑事もの、探偵もの、などを見ることがよくある。警察小説や推理小説を読むことも好きだ。今回の事件は、自分が関わるのだと知らされて、怖さもあるけれど興味も大いにある。まるで、劇中人物になったような気もしてくるので、意を決し読んでみることにする。
そうと決まったから、ミケネコ刑事がメール本文をプリントアウトするためにデスクへ向かった。
マゴリ警部が立ち上がり、留美子のすぐ近くに歩いてきた。
「あんたは、どんなジュースが好きなんだ」
「は、ジュース……?」
「自販機があるんだ。紙パックの冷たいやつがなあ、バナナミルク、イチゴミルク、ミカン、リンゴ、レモン紅茶、ミルク紅茶、牛乳、コーヒー飲料、それとなにがあった?」
スマホ刑事が即答する。
「ブドウ、パイナップル、ココナッツ、シークヮーサーもあるっす」
「だそうだ。どれ飲む?」
これに対し、留美子は遠慮し掛けたけれど、今日の午前中に美恵から教わったばかりのことを思い出した。すんなり好意を受け取ることは相手のためにもなるということ。だから素直に答える。
「イチゴミルクが飲みたいです」
「よし、スマホ頼む」
そう言って、マゴリ警部は自分の財布から電子マネーのカードを取り出し、スマホ刑事に向けて手裏剣のように投げた。カッコいい。いわゆる「ナイスミドル」である。
スマホ刑事がキャッチ成功。マゴリ警部がつけ加える。
「俺のバナナミルクも忘れるな。テメエのも買え」
「了解っす」
ここにタイミングよくミケネコ刑事が戻ってきた。
「おいミケネコ、ジュースなに飲む?」
「結構です。勤務中ですしダイエット中でもありますから」
「おう」
マゴリ警部は黙り、スマホ刑事が自販機へ走った。




