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8話 優しくて残酷な異世界

説明回?

はい、そういう訳でなんやかんや長めのお話しになりました。

ちくしょう。


本来は信徒向けの説明だったり成人済みの子向けの説明らしいが、交渉の結果、同じ説明を聞く権利を得た。ただ、俺の様子に問題があれば即座に切り上げる、と宣言された。問題って何。


この世界、というか、教会では輪廻転生をうたっていて、有機物にも無機物?!にも生まれ変わる。

寿命が来ると魂は神様の元へ行き、反省会的な禊で魂を浄化しつつ次回の生に向けての決意表明を行う。

ちなみに神様は主神と大神、従属神と眷属神と色々いるらしい。その辺りは子供向けの絵本を見た方がわかりやすいとのことで説明は省かれた。

とりあえず決意表明の際には前世の行いを含めて、何を成す為に生きるかお題を決め、それらに沿ったモノに産まれ、生を全うしていく。

していくのだが、魂は大変自由奔放な上に全能感満載らしく、結構キツめなお題を決めてしまう上に、産まれて1年と経たずにその記憶は消えてしまうらしく、おまけに達成できなければ「業」として魂に蓄積されてしまう。

神様の元へ行けば魂は浄化されるが、何度も同じお題を繰り返したり、達成度合いによっては、「業」が魂に刻まれたり染み付いたり変質してしまったりと、本来の姿形とは変わってしまうらしい。その場合、生後3年までは、身体との繋がりが非常に不安定になり色々と障りが多くなる。純粋であるが故に何もかもを受け入れてしまい、悪いものに憑りつかれ魂を呑まれてしまったり離れてしまったり、酷い場合は死に至るとか。…怖っ

そのために3歳までは"自分"を認識させる事、地上(ここ)が楽しいと思えるように、不思議なことが沢山あると興味を持ってもらえるように"自我"を育てる。特に愛情はたっっぷりと。(滅茶苦茶強調された)もし辛い目に遭った時に、天に帰りたいと思ってしまわないように"神様"についてはあまり教えず、代わりにたっっっぷりと愛情を…以下省略。


――この説明というか愛情たっぷりの時点で目が死んでいた気がするが、特に話は打ち切られなかったので問題なしと判断された模様。愛情関係だったからだろうか。それについては毎度俺の様子を無視してるけど何なんだろう。

頭を撫でるくらいなら切り上げてくれ。


とりあえず無事に3歳を迎えた暁には教会へ行き、神様へ健やかに成長出来たことの感謝を洗礼によって伝えて加護を頂く。正直そういった儀式をしなくとも一定の年齢になれば加護や能力を授かるらしいが、教会所属なので教義に則って行うのだそうだ。あと洗礼をすれば、大神様からの加護を得やすいらしいという統計もあったとか。というか孤児にはその傾向が強いとか。…急にぶっちゃけられた。


肝心の水晶の色が変わるのは基本的に成人である15歳以上。

15歳以前に色が変わる場合は成人までに臨死体験をしている場合。わお。

その衝撃で前世を思い出す子もいるらしい。…なるほど。

しかも初めて思い出す記憶は死の直前の記憶らしい。……なるほど。

また、何をどの程度思い出すかは個人差があるらしい。………なるほど。


そして水晶の"色"については大まかに分けて4種類。

赤は「試練」を、青は「使命」を、黒は「因果」を、色が変わらない場合の白は「中庸」を表す。

大衆向けの経典には、基本的にはどれも『心身を鍛え、知識を身につけて魂を鍛え上げれば、終わりなき永劫の幸福を約束される』と記されているらしいが、本来の内容を正確に表すと以下の通り。


「試練」を成し遂げ魂の成長を促せ。されど探求によっては死を垣間見るだろう。

「使命」を果たして魂の格を上げよ。されど神命によっては死の淵を彷徨うだろう。

「因果」を晴らして魂の浄化を(もたら)せ。されど奉仕によっては他者の業を背負うだろう。

「中庸」を務めて魂のカタチを整えよ。されど傾きによっては罪を犯すだろう。


――えげつねぇ。


水晶は混色になったり色の濃さや光り方が変わったりなど何通りもあるらしく、色が濃いほど過酷だが、達成した際の恩恵は大きく、明滅の間隔はトラブルの起伏に比例し、長く光る程、年を重ねるまでそういった経験をしやすい。

と、言われているが、そもそも洗礼を受けなかったり、知らないうちに約束事を達成している場合も多々あるらしく、本当に、あくまでも、「目安」らしい。ただ点滅に関しては俺を見た感じ大体合っているだろう、と言われた。…平穏に生きたかった…


一応、リスクに見合ったリターンだったり、記憶持つ人が残した伝記のようなものがあるらしいのでヒントになるのでは、と教会関係者で語られているらしい。…フォローのつもりなのか?


混色じゃないだけマシなのかもしれないが、色によって確実に死亡案件では?

この世界が優しいのか残酷なのかわからない。みんなに加護をくれるとか神様大盤振る舞い。とか思ってたけど、リスクに見合ったリターンだったのか…公平ですね。

正直自分の境遇に思うところはあったが、こうして保護されて無事に育ててもらっているのだから一概に運が悪いとも言えない。はず。

前世云々の謂われがあるなら、確かに中身が大人だとしても追い出される心配はなさそうだし。

いやでもこの子ども扱いはどうにかならないのか…


慣れるためだとか言いくるめられ膝に乗せられ、しかし思った以上に長い時間説明された挙句、その内容の酷さに撃沈して顔を手で覆い項垂れている現在。


「なにもきゃもちどい…」

「それが、個人差はあるから一概には言えないのよねぇ」

「そうですね。中庸も本当に大きく偏った場合ですから。僕みたいに」

「そうぢゃ…ん?!」


倒置法やめて。

説明部分に対する感想だけを拾いあげられた上に、突然ぶっ込んできたウィルさんを振り返って2度見する。本人は「危ないですよ」と楽しそうに笑っている。

おい。


「僕は洗礼自体受けたことが無かったので、教会での奉仕活動を言い渡されてから初めて知ったんですけどね」

「?」


――奉仕活動を言い渡されて…?


「罪の大きさや人となりで罰が変わってくるのよ。奉仕活動を言い渡される場合は人格的に問題無いとされた場合ね」

「??」


――裁判制?いや盗賊の頭が人格的に問題無いとは…?


「小さな集団だったので頭というより代表者的な感じでしたし、あまり暴…頻繁に活動もしていなかったのと、自首が大きかったようですね」

「ぢしゅ…?」


まさか計算…?にっこり笑って告げられたんだが。

ぼう…何ですかね。ふわっとぼかされたのが…いやこれはつつかない方が良いやつだ。


「えぇ、ちなみに奉仕活動中は全身黒い服しか着られません」

「なんで…?」


――いつも真っ黒なのはそのせいか…


「教会所属の場合は白い服だから、役割を区別するためね。水晶で色が変わった場合はその色の腰帯を巻くけれど、基本は白が多いのよ。黒い服の子は、一定の年月が経てば白い腰帯を巻いて、また一定の年月奉仕活動を行ったら罪が清算されたとみなされて日常に帰れるの」

「ちょうえきけいみたいなものきゃ…」

「「ちょうえきけい?」」

「あ、え~と…」


――声に出てた。なんて説明しよう。


「とりあえずこちらでは、軽犯罪に分類されれば基本的にその領地で奉仕活動を行います。重犯罪は国へ報告して近場の領地で労働だったかと。どれも罪の重さで活動年月を定められますね。その年月が過ぎればその期間の働きによって待遇や、その後の活動期間も変化するんです」

「しょうなんだ…?」


割と緩い?近場の領地って、地域を移動したりもするんだろうか…?


「どうしたの?」「どうしました?」


ちょっと考えこんでいるとすかさず質問が飛ぶ。


「あ、えぇと…おなぢばしょで?」

「うふふ、大丈夫よ。私もウィルもずっとここに居るもの」

「ふふ、えぇ。カル君が大人になってもここに居ますよ」

「しょっきゃ…」


どうやら奉仕活動は同じ場所でするらしい。なぜかドナさんから補足されたが、教会所属の人も同じ場所に居るっぽい。

うん、良かった。突然二人の代わりに見ず知らずのおっさんとかが来たりはしないようだ。


いや待った。


「なんで?」

「うふふ、なんとなくよ」「ふふ、なんとなくですね」


突然よしよしと頭を撫でられるが大変微笑ましい表情をされている。

なんなの。

睨むように見ても慈愛溢れる視線が刺さりたじろぐ。


待って。俺ずっと膝の上にいたんですけど。

馴染み過ぎてすっかり忘れていた事実に戦慄して思わず暴れ出す。


「あ、カル君待って。ちょうえきけいってなぁに?」

「え」


――話が一区切りつくまでは降ろして貰えないシステム…?

懲役刑って言われても実際何がどうなってるか知らないんだが、ぼんやりとで良いかな…


とりあえずあまり詳しくは知らない、と前置きして説明。

捕まえたら裁判して罪の大きさで年月を決められてその期間牢屋で過ごす。確か規則正しい生活をして、日中は何か働いてた筈。あとは…一般人の目には触れないようにされるけど手続きすれば親族とかは面会はできた、気がする。この期間が懲役刑になるはず。

多分、こちらでいう奉仕活動や労働と似たようなものだろう、と締めくくる。


「さいばんとはなんでしょう?」

「あ~…」


司法関係が一切無いのか…


とりあえず一般人も犯罪者がどんなことをしたのかを聞いて、有罪か無罪かを判断。裁判官って弁護士のトップで良いのか?わからん。とりあえず国に認められた人でぼかしとこう。が最終的に罪の重さを言い渡す。弁護士については加害者と被害者それぞれの代理人として言い分を主張してくれる人、でぼかした。ぼかしまくりだがもういい。

途中で俺が諦めたのを察せられたのか「知識が無い人の言葉を代弁してくれる人、という認識で良いですか?」とまとめてくれたので頷いておいた。正確には違うだろうけどもういい。何か似た人が居るのかもしれない。


こっちでは基本的には現行犯逮捕らしい。だから裁判的なのは必要なく、余罪が無いかを魔法で確認するくらい。便利。ただYESかNOかの判断によるらしいので詳細が伏せられた場合は別途、衛兵によって尋問されるらしい。え、尋問…?やめよう。

とりあえず衛兵が警察替わりってことかな。


結局犯罪にはどんな種類があるのかと思えば、基本は盗みや人に危害を加えること、というシンプルなものだった。詳細は、はい、商人ギルドですね。ただ器物損壊に対する刑罰は無く、普通に弁償で良いらしい。ぽろっと伝えたら「窮屈そう」と同情された…。いや、ちゃんとお互いに守り守られて…うん…そうですね。


とりあえずこれ以上突っ込むとむなしくなりそうだったので話を終える。

区切りも良いし、いい加減降りたい。

突然よしよしと頭を撫でられる。


「なんで?」

「うふふ、なんとなくよ」「ふふ、なんとなくですね」


それさっきも聞いたぞ。

いい加減禿げそうだと、とりあえず頭を抱え込むように両手でガード。

バランスを崩した所でウィルさんに支えられる。


「こらこら、危ないですよ?」


――誰のせいだ。さっきも聞いたぞ。


「しゅわうのちゅきゃえたので…!」


元凶に窘められたので、いい加減降りたい旨を湾曲に伝える。


「そうよねぇ、さすがにカル君もずっとじっとしてたら退屈よね」

「もうすぐお昼ですから庭には行けませんが、先ほどのたいそうでもしますか?時間的にもちょうど良さそうです」

「うん…」


――だいぶ子供扱いされてはいるが、降りられるなら何でもいい。思いのほかあっさりと受け入れられたので今後も使えそうだ。


そんな感じで、やっと膝から降ろされ地上へ。

思わずほっと息を吐く。地に足着いた時のこの妙な安心感よ…


とりあえず体操というかストレッチを開始。

何故か三人並んで。

知らない人が見たらかなり怪しいんじゃないか、これ。いやここに人は来ないんだけど。


「はぁ~…身体が伸びて気持ちいいわねぇ~…」

「そうですねぇ。ただ、つい思いっきり身体を動かしたくなります…」

「…」


――ついって何。

いやまぁ準備運動みたいなもんだからな。ウィルさん的には仕事前のウォーミングアップに丁度良いんだろう。


一頻り身体を動かすと、お昼を知らせる鐘が鳴ったので昼食を摂る。

そこでの話し合いというか会話の内容がどうにも俺への当てつけっぽく聞こえた。被害妄想だろうか。


「さて、色々聞きましたが、やはりカル君の常識が僕たちとは少々ずれているようですから、他の子と同じようにしていくのが一番良いかと思いますが、どうしましょうか?」

「しょうしょう…?」


確かにずれてはいたけど、他の子と同じって何。

どの部分を指してるの。


「うふふ、そうね。どうも愛情が希薄な環境で育ったせいか色々と苦手みたいだし…」

「にぎゃて…?」


おいまさかあの部分か。

ウィルさんの言葉選びに一抹の不安を抱えているとドナさんからも主観的な感想が聞こえ、つい突っ込む。日本では一般的です。多分。


ねぇ、急に2人で目で会話しないでください。


「カル君、苦手なことって乗り越えた方が良いと思わない?」

「いや…」


確かにそうだけどもあの流れからその言い方は俺にとってアカンやつや。


「"試練"は基本的に苦手とするものを乗り越えていくものだと言われていますから。カル君も楽になりたいでしょう?」

「いや…」


そんな後付け設定いらない。確かにそうだけど言い方考えて…!

まずい、このまま流されると何か良からぬことを言い包められそう。

何か…


「なので庭に行く時間をずらして、カル君に遠目から他の子達の様子を伺って貰って、接触しても問題無いか試してみましょうか」

「え…」

「そうね、大丈夫そうならそのまま遊んでみて、難しそうならもうしばらくは今のままにするか、人数を絞ってみましょうか。カル君はどう?」

「あ、うん…やってみう…」


打開策を考えようとしたが思ったより普通だった、というか人とのコミュニケーションについてだった。

驚いたがほっとした。確かに二人以外に会ってないし会おうとも思っていなかった。幼女たちは不可抗力だし。


「あとこの世界については、子供への読み聞かせ用の本がありましたから、そっちでお勉強しましょうね」

「おべんきょう…?」


ねぇ、それ本当に、普通の、お勉強で良いんだよね?

初っ端に騙されたせいでどうも素直に信用できない。

若干疑いの眼差しを向けたが特に変化は見られない。いや元々動じてなかったわ。


「そうね、カル君も記憶があることは内緒にしたいみたいだし、他の子と足並み揃えた方が良いわよね」

「うん」


下手に目立ちたくは無い。一般的な子供の知識量がどの程度かは知らないし。


「カル君はさっきも大人しくできていたので、読み聞かせも大丈夫でしょうし」

「…」――ちょっと思い出したくない。

「そうね、本が嫌いな子って、じっとしているのが嫌みたいだから」

「しょう…」


ひたすら暴れるのが正解だったのかもしれない…

いつもは昼ご飯を食べたらすぐに庭に行っていたが、今回はちょっと間を置いてから行くらしい。その時の状況にもよるが、庭で遊んだら本の読み聞かせが開催される。

今度はドナさんのお膝だそうです。いっそ眠りたい。






お読みいただきありがとうございます。

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